「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回のテーマも前回に引き続きREIT(不動産投資信託)。今回は、金利とREITの価格の関係について掘り下げていきます。
- 自己資本への依存度が高いほど、株価は金利上昇の影響を受けにくいと考えられる
- 利益の90%超を投資主に分配するREITは、自己資本比率が低いと思われている
- REITの自己資本比率は50%前後が多い。住宅REITは比率が低い傾向がある
物価上昇と円安の傾向が止まりません。日本銀行は利上げに踏み切るのでしょうか? 本稿ではREITの特集を続けています。「REITは金利上昇に弱い」と言われていますが、本当でしょうか?
(お願い:本記事をご覧いただいてREITに投資するか否かはご自身の判断でなさってください。また本稿には個別の銘柄名が載っていますが、決して推奨ではありません。あくまでも参考材料として載せてあるだけです)
金利上昇は株価のマイナス要因?
金利上昇は、株価に対して「マイナスに働く」と考えて良いのではないでしょうか? なぜなら、企業が金融機関から資金を借り入れるときに、借入利息が増えると考えられるからです。
また、すでに借り入れた資金が変動金利であった場合には、時期が来れば借入利息が増えると考えられます。たとえ、すでに借り入れた資金が固定金利であったとしても、借り換えの時には「(借り換え前に比べて)高い金利」で融資を受ける可能性があります。
金利の影響は、社債にも同じことが言えると思います。企業が社債を発行して資金を調達する場合、金利が上昇すれば、社債の金利もUPすることが考えられます。
企業の資金調達が、銀行融資や社債などの「返済が必要な資金」、つまり他人資本への依存度が高ければ高いほど、金利上昇の影響を受けやすいと思われます。逆に企業の資金調達が他人資本への依存度が低い、つまり自己資本の比率が高ければ高いほど、金利上昇の影響が少ないと考えられます。
REITが金利上昇に弱いと言われる……ナゼ?
そもそも自己資本とは何でしょうか? 他人資本が「銀行融資や社債などの返済が必要な資金」ということなら、逆に自己資本は「返済が不要な資金」ということになります。少しだけ具体的に言うと、「株主からの出資」と、「創業以来の利益の蓄積」ということになります。
REITの場合、「創業以来の利益の蓄積」が微妙なのです。ナゼでしょうか?
REITの特徴の一つに、「利益の90%超を投資主(=株主)に分配することで、分配金が非課税になる」という点が挙げられると思います。この特徴に注目して「NISAでREITを」という方も多いと思います。が、実はこの特徴こそが「REITのアキレス腱なのでは」とお考えの方も多いと思います……ナゼか?
先ほどの自己資本の話を思い出してください。自己資本を少しだけ具体的に言うと「株主から出資」と「創業以来の利益の蓄積」です。ではREITには「創業以来の利益の蓄積」はあるのでしょうか? 微妙ですね。REITの特徴を思い出してください。「利益の90%超を投資主に分配」……いかがですか?
もしかして「REITって、自己資本比率が低いのでは?」とお気付きの読者も多いと思います。
REITの自己資本比率は40~60%?
REIT銘柄 | 自己資本比率 | 決算期 |
---|---|---|
野村不動産マスターファンド投資法人 | 50.81% | 2025年2月 |
日本ビルファンド投資法人 | 51.20% | 2025年6月 |
オリックス不動産投資法人 | 51.08% | 2025年2月 |
星野リゾート・リート投資法人 | 57.69% | 2025年4月 |
産業ファンド投資法人 | 44.33% | 2025年1月 |
スターツプロシード投資法人 | 46.07% | 2025年4月 |
イオンリート投資法人 | 54.04% | 2025年1月 |
日本アコモデーションファンド投資法人 | 46.59% | 2025年2月 |
【参考】東証プライム全産業 | 34.79% | 2024年度 |
【参考】東証プライム製造業 | 47.97% | 2024年度 |
【参考】東証プライム非製造業 | 25.13% | 2024年度 |
表は筆者が無作為に集めたREITの自己資本比率です(順不同)。なお、インターネットで「自己資本比率の高いREIT」と検索したところ、3社の名前が出てきました。しかし、その3社よりも高い自己資本比率を誇るREITを、筆者が見つけました(笑)。筆者もREITの全てを見たわけではありませんが、REITの自己資本比率はおおむね40~60%、50%前後が多いと考えてよさそうです。
「REITって、自己資本比率が低いのでは?」とお気付きの方、いかがでしょうか? REITの自己資本比率が50%前後が多いということは、自己資本比率が「高い」とも言い切れませんが、「銀行借入に依存している」という表現も微妙だと思います。
まとめに代えて……もし金利が上がったら?
さて、実際に金利が上がったら、REITを含めた株価はどうなるのでしょうか? ご多分に漏れず、REITの投資口価格(=株価)も下がると思います。何と言っても先述の「REITの特徴」がありますし、それが通説ですからね。
問題はその後ですよね……。下がり続けるのか、下がって横ばい状態になるのか、一度は下がったものの、その後、反転するのか。こればかりは「蓋を開けてみないと=金利が上がってみないと」わかりません。
ちなみに「住宅REIT」は自己資本比率が低めの傾向があるようです。住宅は景気の影響を受けにくいと思われます。何と言っても衣食住の住ですから。そうした背景から住宅REITを投資先に検討されていらっしゃる方もいると思いますが、自己資本比率についても気に留めておいた方が良いかもしれません。もし気になるのでしたら、分散投資も視野に入れると良いと思います。
本日も最後までお読みくださり、ありがとうございました。