金融政策の違いにより、日米の金利差が拡大しています。米国では大幅な金利上昇が見られていますが、日本では超低金利時代が続いています。金利差と外貨高の恩恵を受けるために、外貨を活用した投資を検討する人は多いでしょう。外貨を持つ方法のひとつに外貨建てMMFがあります。外貨建てMMFとは何か。メリットやリスクを解説します。
- 外貨建てMMFは外貨の高利回りが生かせる。少額から購入でき、積立投資も可能
- ローリスクローリターンとされるが、価格変動・為替変動・信用の各リスクに注意
- 日米の金利差が拡大する今、リターンの魅力が高まりつつある
日米の金利差が拡大、円安で外貨に注目集まる
アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備理事会(FRB)では、アメリカ国内で急激に進むインフレに対応するために、政策金利の引き上げを続けています。金融政策の動向を如実に反映するといわれる米国債の2年債の利回りを見ると、2022年の1月は1%前後でしたが、3月には2%を超え、6月には3%、10月には4.5%程度まで上昇しました。日本の2年債利回りは年間を通じてほとんど変動していないため、2022年は日米の金利差が拡大した1年といえるでしょう。
金利が高い通貨で預金をすれば多くの利息を受け取れるため、お金は金利が低いほうから高いほうに流れます。日米の金利差が拡大するにつれ、世界のお金は米国に流れ、円安・ドル高が加速していきました。
米国の金利の高さとドル高を投資に活かすための選択肢のひとつが、外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)です。
外貨建てMMFとは、外貨で運用される投資信託の一種です。投資信託には大きく分けて「株式投資信託」と「公社債投資信託」の2種類があり、MMFは公社債投資信託に当たります。
MMFは現在、主に米ドル建ての商品が販売されています。外貨建てMMFは、国債や地方債などの安全性が高いとされる投資対象で運用されているため、ローリスクな投資を目指す方に適しています。米ドル以外では、豪ドルや英ポンドなど先進国通貨建ての商品や、南アフリカランドなど新興国通貨建ての商品が販売されていますが、現時点では利回りの水準などを考慮すると、米ドル建てのMMFが魅力的といえるでしょう。
米ドル | 豪ドル | 英ポンド | カナダドル | NZドル |
---|---|---|---|---|
3.844% | 2.289% | 2.783% | 3.363% | 3.329% |
ちなみに、MMFには外貨建てではない、日本のMMFもあるのですが、マイナス金利政策の影響で2016年頃に繰り上げ償還が相次ぎ、現在にいたるまで新しい商品は設定されていません。現時点でMMFといえば、外貨建てのMMFしか選択肢がない状況です(円建てでは、MMFに似た仕組みの公社債投資信託として「MRF」(マネー・リザーブ・ファンド)があります)。
外貨建てMMFのメリット・デメリット・リスク
外貨建てMMFは、日本の証券会社や銀行などで購入できる投資信託です。日本と外国の金利差を活かした投資を行いたいときに適していますが、リスクもあるので注意が必要です。主なメリットとデメリット、リスクを紹介します。
外貨建てMMFのメリット
債券投資といえば、日本国債に代表されるように「ローリスクではあるものの、利益が少ない」というイメージを持つ方も多いでしょう。外貨建てMMFは債券を投資対象としているため、債券価格自体の変動は株価ほど大きくないのでローリスクである一方、外貨の高利回りが活かされるため、日本の国債と比べて相対的に高い利益が期待できます。
また、購入する金融機関によって異なりますが、1000円、10000円程度から投資することも可能です。積み立て投資にも対応しているので、少額ずつ長期的に運用したい方にも適しています。
外貨建てMMFのデメリット
外貨建てMMFは「公社債投資信託」の一種です。公社債投資信託のデメリットは、株式投資信託と違ってNISAを使えないことです。
一般的な投資信託は「株式投資信託」と呼ばれますが、すべての株式投資信託が株式に投資しているわけではありません。中には、先進国の国債や政府機関の債券のみを投資対象とする投資信託もありますが、こちらはNISAやつみたてNISAで投資でき、利益は非課税となります。
外貨建てMMFは、外貨預金と同じようにNISAの対象外です。外貨建てMMFの利息には20.315%の税金が課せられるので、運用する際はその点を頭に入れておきましょう。
外貨建てMMFのリスク
外貨建てMMFの主なリスクとして、次のものが挙げられます。
●価格変動リスク
外貨建てMMFは価格が変動する商品です。価格が下落し、元本割れすることもあるので注意しましょう。
●為替変動リスク
外貨建ての商品のため、為替変動の影響を強く受けます。購入時よりも受取時のほうが円高の場合は、利益が出ていても元本割れすることもあります。また、売買手数料はかかりませんが、日本円で外貨建てMMFを売買するときは為替取引が発生するので、為替手数料がかかります。
●信用リスク
外貨建てMMFは格付けが高く、信頼性の高い債券でファンドを形成していますが、債券の発行体が破産するリスクがないわけではありません。万が一、破産した場合は、MMFの価格が大きく下がることもあります。
外貨建てMMFは外貨投資の第一歩に向いている
外貨建てMMFは少額で売買できます。また、積立投資もできるので、コツコツと資産を形成していきたい方にも適しています。一般的な株式や投資信託と比べて値動きが小さい傾向があるため、外貨投資の一歩として初心者も始めやすい商品です。
外貨建てMMFは元々ローリスクローリターンな商品ですが、日米の金利差が拡大する今、リターンの魅力が高まりつつあります。米ドル建てのMMFは、米国の高い金利を活かした投資を実現する手段のひとつとして注目です。