テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第52回は、『SPORTSウォッチャー』『アドベンチャー魂』などを手掛ける放送作家の木村タカヒロさん。

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茨の道が待ち受けているとも知らずに

木村タカヒロさんの写真木村タカヒロ
放送作家
日本放送作家協会会員

今から5年ほど前、奥さんと結婚が決まり、交際当初から決めていた夢のプランを実行に移す時がきた。それは「犬と一緒に暮らす」ということ。

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2人ともずっと犬と暮らしたいと思ってはいたものの、当時は放送作家の僕も広告代理店勤務の奥さんもいわゆる“業界人タイム”で生活しており、仕事が終わるのが21時過ぎなんて当たり前。TV業界も今より景気が少しはよかったので、会食や打ち上げが深夜まであることも多々あり、お留守番の時間が長くて犬が可哀想だからと一緒に住めるようになるまで我慢していたのだ。

では犬の種類など具体的な話を進めましょうというところで、奥さんから「小さい頃からの夢で、どうしても保護犬を迎い入れたい」と提案された。その時の僕は保護犬についてほとんど知識がなく、保健所に送られてしまう犬を1頭でも救えるならくらいの気持ちだった。しかし調べていくうちに(一部であると信じたい)ペットビジネスの苛烈な裏側を知るようになり、僕もペットショップで買うのではなく絶対に保護犬を迎い入れたいと思うようになった。

ペットショップ
ペットビジネスの裏側を知り、「絶対に保護犬を迎え入れたい」と思うように

ネットで保護犬の団体を調べると、可愛い犬の写真だらけ。男性にしか分からない表現で言うと「なんでこんな可愛い子が!?」という感覚だった。早速、優先順位を決めて保護団体に連絡した。

「まだ貰い手が見つかっていなければいいな」

そう思って電話をすると、「まずは一度こちらにお越しください」と、素っ気ない反応だった。今考えると本当に勘違いしていて恥ずかしいのだが、てっきり「貰っていただけるんですね! 幸せにしてあげてくださいね!」とハイテンションで言われて合格するものだと思っていた。

CMまたぎのナレーションっぽく言うなら「このあと茨の道が待ち受けているとも知らずに」。

面接に7回連続で落ちる

指定された譲渡会に行くと、すぐに面接となった。基本的なプロフィールの他に、年収や詳細な勤務時間などかなり細かく質問をされた。そして数日後、保護団体から電話があったのだが、まさかの不合格

その後も都内はもちろん、千葉や埼玉、茨城と時には何時間もかけて面接に行き、合計で7回落ちた。理由は教えてもらえなかったが、サイトを調べたり専門家に聞いたりしたところ以下のような理由が考えられた。

①これから子供が生まれる可能性が高い新婚夫婦

⇒出産した子供が犬アレルギーだったら犬はどうなる?という点。実際に面接の時に「自宅と別に犬用の家を用意できますか? まさか捨てるなんてことはないですよね?」と真顔で聞かれたことも。

②毎日夜遅くまで仕事をしている

⇒団体によるが犬の留守番は5~7時間が理想。つまり会議で外出しがちな放送作家の場合、奥さんがずっと在宅の主婦でないと難しい。でも今ならリモート会議が多く放送作家の在宅時間は長くなっているのでクリアしやすかも。

留守番のイメージ
面接に落ち続けた一因は、夜遅くまで外出しがちな放送作家という職業だったからでは

さすがに7回も面接に落ちると野良犬のような人生を送ってきた僕はともかく、受験から就職までノーミス人生を送ってきた奥さんは心が折れかけていて、口には出さなかったもののお互い喉元まで「諦めてペットショップで買う?」と出かかっていたと思う。

しかしその後も検索を続けていると、面接が厳しすぎて貰い手が見つからなすぎることも結果的に犬を不幸にしているとの考えで、比較的優しい基準で譲渡をしている団体の情報をキャッチ。(若手時代、膨大なリサーチ業務をこなしてきた僕の手柄)

こうして面接に行き、元警察犬訓練士の超強面の所長さんにありったけの熱意をぶつけオスのパピヨン『ラビ』を迎い入れることができた。

名前の由来だが、某有名ペットチェーンで売れ残ってろくにエサも貰えず栄養失調寸前だったラビは、初めて会った時にガリガリなのにパピヨンの特徴である大きな耳だけが目立ってウサギみたいだったことが理由。

保護犬を家族に迎い入れる過程で分かったのは「悪いのは犬を捨てた人、雑に扱った人・会社だけ」

面接が厳しすぎる保護犬団体は愛あってのことなので、そうさせている状況に問題がある。僕はこの経験を元に保護犬に関する番組をやりたい。ギャラはたくさん貰いますが、全額保護犬の活動に寄付しますので興味がある放送局さん、制作会社さん、ご連絡お待ちしております。

次回は出版社を経営する鈴木収春さんへ、バトンタッチ!

是非見て・フォローしてください!

ラビの日常だけを載せた「保護犬ラビ」というInstagramをやっています。
@rabi_hogoken1027

愛犬ラビの写真
ガリガリ時代の別犬のような写真も載っていますので是非!

ラビとのご縁をいただいた非営利動物保護犬団体「ととのん
寄付金を一切受け取らない高潔な運営も素晴らしいと思います。

ととのん
一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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