テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 連載第42回は、ママ放送作家の原木綿子さん。

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38歳の妊娠でプチパニック

原木綿子さんの写真
原 木綿子
放送作家
日本放送作家協会会員

お恥ずかしい話、かつて自分は「貯金」をしたことがありませんでした。制作会社に勤務していた20代、お給料のほとんどは生活費に消え……。フリーランスになった30代、放送作家の仕事は何事も経験だ!と言わんばかりに、趣味(主にお酒、漫画、洋服、旅行)にお金を費やし、特に意識して貯金などしたことがなかったのです。

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ところが、そんな私に大転機が訪れました。38歳のとき妊娠が発覚(ちなみに、当時は結婚していませんでした)。あの時の気持ちを率直に表現すると「まさか、まさか、まさか!」の、プチパニックです。
自分の体に新しい生命が宿ったことに対して、「嬉しい」よりも先に「びっくり~!」な状態でしたし、何よりも「仕事ができなくなったらどうしよう?」という不安が生じました。当時は、夜の会議・分科会も普通にありましたし、打ち合わせは「対面」が当たり前だったので。
「もしかしたら、今までのように気軽に仕事の発注をされなくなってしまうのでは?」と、出産後の未知なる世界に、ただただ怯えていました。そして、その不安な気持ちは、娘が生まれる瞬間まで続いたのです。

2017年3月、無事に長女を出産。子どもの顔を見た瞬間、これまで抱いていた、不安や恐怖は「ポーンッ!」と吹っ飛びました。「この子のために働くぞー!」とモードが切り替わったのです。また、予想していたよりも、子育てに対して理解を示してくれる方が周囲に多かったことも救われました。

出産のイメージ画像
子どもの顔を見た瞬間、これまで抱いていた不安や恐怖は「ポーンッ!」と吹っ飛びました

知らなかったんです! 子育てにこんなにお金がかかるなんて!

それにしても独身時代は気づきませんでした。というより、知ろうともしていませんでした。子育てにかかる「お金」のことを。

肌感覚ですが、なかでも東京はかなり出費が多いと感じています(笑)。内閣府が平成21年度に行った調査によると、1年間にかかる1人当たり子育て費用の平均額は、未就学児で84万3225円、保育所・幼稚園児で121万6547円、小学生で115万3541円、だそうです。これは10年以上前の調査なので、現在はさらにかかるのではと思われます。

我が娘はもうすぐ5歳。「あれ欲しい、これ欲しい」自己主張も増えてきました。さらに、保育園のお友達もそうですが、今の子どもは大抵1~2つは習い事をしています。下手したら3~4つしている子も。これが結構かかるのです、時間とお金が。他にも学資保険やあれやこれや……。さらに将来、留学したいと言い出すかもしれないし、プロゴルファーを目指すかもしれない。

子どもがやりたいことは出来る限り、叶えてあげたいのが親心。その時のために、私は人生で初めて「貯金」を始めました。決して手をつけることのない、口座を開設。今の私の目標は、この口座に貯まったお金を使うときまで、放送作家として『現役』でいること。ママは頑張るぞー!

貯金のイメージ
子どもが生まれて、人生で初めて「貯金」を始めた。決して手をつけることのない口座を開設

次回はプロデューサーの本間修二さんへ、バトンタッチ!

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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