現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第15回は、国内最大手の通信会社グループである日本電信電話(NTT)(9432)を取り上げます。
- NTTは国内最大手の通信会社グループの持株会社
- 過去11期にわたり連続増配。2000年3月期から約4.5兆円の自社株買いも
- 株式市場に逆風が吹く中でも、株価は着実な上昇トレンドが続いている
NTTはどんな会社?
NTTは国内最大手の通信会社グループの持株会社です。グループは携帯通信国内最大手のNTTドコモ(2020年に非上場化)、固定電話やインターネット光回線など地域通信のNTT東(西)、ITシステムのNTTデータ、海外・長距離通信部門などに分かれています。
NTTの正式社名は日本電信電話なので音声電話のイメージも強いかと思いますが、2000年代にグループ全体の営業収益の約7割を占めていた音声電話の収益は、2021年3月期時点では2割を切っています。代わりにスマートフォンや光回線の収益が約3割、海外などITシステムの収益が約3割と合計で6割を超え、事業構造を大きく転換しています。
またNTTドコモ自体も企業のデジタル変革(DX)支援による法人事業の強化や金融・コンテンツ配信などのスマートライフ事業の拡大を進め、事業構造のさらなる変革に取り組んでいます。
グループ全体でもテレワークや業務の自動化、紙使用の原則廃止を打ち出し、コロナ禍で生まれた新しい経営スタイルへの変革を進めると同時に、顧客への提案にも活用しています。
NTTの強みは?
NTTの強みは、国内最大の携帯電話や光回線などの通信インフラ事業で強固な収益基盤を築いていること。これらの収益を配当や自社株買いに回しており、株主への還元力が評価されています。
配当では過去11期にわたり連続増配を続けており、安定した配当の見込める大型株として機関投資家からも支持されています。
また、株主の利益のため継続的に自社株買いも続けています。企業が自社の株を市場や大株主から買い付けて株式を消却すると、発行済み株式が減り、既存の株主の1株あたりの価値が高まります。NTTは2000年3月期から累計で約4.5兆円もの巨額の自社株買いを実施しており、株主価値の向上に努めています。
また株主還元だけでなく、ネットワークや社会・産業の発展に寄与する先端技術の研究にも注力しています。NTTグループでは約2300人の研究者が次世代の高速通信である5Gや6G、量子コンピューター、AI(人工知能)、VR(仮想現実)など幅広い技術の研究開発に取り組んでいます。
NTTの業績や株価は?
NTTの2022年3月期は営業収益が前期比2%増の12兆1800億円、営業利益が4%増の1兆7450億円と増収増益かつ過去最高を見込んでいます。携帯料金の引き下げなどにより、NTTドコモは減益基調となっていますが、NTTデータなどのデータ通信・ITシステム事業ではこれまでの改革が実ってきており、好調に推移しています。
3月4日の終値は3426円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約35万円です。
ウクライナ情勢や米国の金融政策の転換の逆風の中でも安定配当や自社株買などの株主還元への期待、業績への安心感が評価されて株価は下値を切り上げながら着実な上昇トレンドが続いています。今季の予想配当利回りは3.4%と、東証1部の平均の予想配当利回りの2%弱を大きく上回っています。
またPBRと呼ばれる企業の純資産からみた投資指標は約1.5倍(倍率が高いほど株価が割高となる)とさほど高くないこともあり、景気変動に強いディフェンシブ株の筆頭格として買いが継続しそうです。