最近よく目にするFIRE(経済的独立と早期リタイア)という言葉。会社に縛られない自由な生活に憧れる人は多いですが、その道のりは決して平坦ではありません。FIREを実現するには、何から始めればいいのでしょうか? 会社員生活から独立して、自由な生活を手にした投資家の遠藤洋さんに教えていただきます。
第2回テーマ
未来のFIREを目指すには、日々の仕事に対して意識や取り組み方を変える必要はわかったけれど、今はとても忙しくて、なかなか実行に移せない。どうすれば意識と行動を変えていけるのか?
「会社の都合」を優先してしまう心理
「会社の仕事が忙しいから、投資の勉強をしたくてもできない」という話はよく聞きます。でもこれは、厳しい言い方をすると「自分が忙しくしたいからそうしている」という結果だと思います。なぜ「忙しくしたい」のかといえば、仕事の優先順位を、自分の判断で高く置いているからです。
忙しい人が意識や行動を変えるためには、人生における仕事の優先順位を変える必要があります。僕の印象では根がまじめな人に多いと思うのですが、ものごとの優先順位を「自分軸」ではなく「他人軸」で決めてしまうと、忙しさに追われることになってしまいます。
「他人軸」というのは、たとえば会社員であれば、締め切りや納期など、会社の都合に自分の生活を合わせてしまうことです。本当は休みを取りたいと思っていて、申請すれば有給休暇を取って仕事を同僚に任せることもできるのに、
「今1週間休んで海外旅行をしたら、仕事が滞って会社に迷惑がかかるのでは」
「自分勝手な都合で、同僚に迷惑をかけるわけにはいかない」
などと考えてしまって、結局休みを取ることなく忙しいだけの毎日が延々と続く、ということになりがちです。
僕は、行動の優先順位を「自分軸」にすべきだと考えています。自分自身の優先順位を上に置く、という誤解を招いてしまいますが、これは決して「自己中になれ」ということではなくて、あくまで「将来を見据えた自分の成長のために、今何を選ぶのがベストか」という観点で優先順位をつけるということです。
たとえば投資にしても副業にしても、あるいは独立に向けた準備にしても、それらはすべて自由な時間を手に入れるための「時間の投資」であり、リターンは自分自身に返ってきます。その時間をすべて会社のために費やせば、確かに給料や残業代、会社や同僚からの信頼は得られるかもしれませんが、本当にそれが「自分のため」だと言えるのでしょうか?
自分の人生を優先したいのであれば、忙しさをいったん横に置いて、今の生活の優先順位を振り分け直すことを考えた方がいいかもしれませんね。
「今の生活を変えるのが怖い」と思ったら……
とはいえ、今まで仕事中心だった生活を、いきなり「自分の人生を優先しよう」ということで変えていこうとなると、不安に思うのは仕方ないことです。周りの人と同じことをしようと思うのは人間の生存本能でもあるので、本能に逆らうのは難しいかもしれません。
でも、もし仕事中心の優先順位が変わらなければ、同じように仕事中心で生活している会社の先輩と同じ人生を歩むことになります。3年上の先輩の姿は、自分の3年後の姿です。
もちろん、「僕も憧れの先輩のようになりたい」と望んでいるのであれば何も問題はありません。その会社での働き方が自分に合っているのであれば、無理に何かを変える必要はありません。でも、今の仕事に違和感を抱いているのであれば、自分がいるべき場所は今の会社ではなく、もっとふさわしい居場所があるはずです。
その違和感を是正する手段が転職なのか、あるいは自分でビジネスを始めることなのか、はたまた投資を始めることなのか、それは人によって違うと思います。とにかく、今の自分を変えたい、会社に縛られず自由な時間がほしいと考えるのなら、生活の優先順位を変えて、思考や行動を変えていかないと、思い描く未来に近づくのは難しいと思います。
失敗することより、行動しないことを怖がる
人生の優先順位を変えて、自分のために行動を起こすことには、当然リスクがあります。失敗したいと思う人はいないし、失敗を怖がる気持ちはわかります。でもひとつ確実に言えることは、今うまくいっている人は、死ぬほど失敗を重ねてきた人です。
「失敗するリスクが怖い」と言いますが、失敗から得られる体験は貴重です。もちろん事前にリスクを想定して失敗を避けることも必要ですが、何か新しいことを始めたら、必ず想定できない失敗が発生します。すべてを事前に想定するのは不可能です。失敗の想定に時間をかけて行動が遅れるくらいなら、先に行動を起こしてしまって、失敗したらその都度対応した方が、はるかに早く結果が出ます。
「失敗するからやらない方がいい」というのは、僕に言わせれば「外を歩くと交通事故にあうかもしれないから、家の中にいよう」というのと同じです。このような考え方の人は、「行動しないリスク」が見えていません。
安全な道を選び続けて失敗の経験が少ない人と、たくさん挑戦してたくさんの失敗を経験してきた人。どちらが人として成長できるか。もし自分が経営者だったら、どちらの人を雇いたいでしょうか? 失敗を怖がって行動を控えるのは、自分の身を守っているようで、実は長い目で見れば自分の価値を落としてしまうことになります。
「チャレンジしないリスク」は、その瞬間は気づきませんが、実は非常に怖いものです。失敗は避けるべきことではなく、「未来の自由を得るために今必要なこと」として前向きにとらえると、怖さも消えるのではないでしょうか。
- 仕事で忙しいのは「他人の都合」。自分の成長につながる行動の優先順位を高める
- 3年上の先輩の姿は、自分の3年後の姿。違和感を抱いたら思考や行動を変える
- 本当に怖いのは失敗するリスクではなく、チャレンジしないリスク