宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは、前回に引き続いて「変額保険」。いろいろな保険会社が変額保険を販売している中で、どんな基準で商品を選べばいいのかを解説します。

  • 変額保険は特別勘定(投資信託)で運用するため、特別勘定の価格推移に注目
  • 保険の機能は会社ごとに特徴がある。メインの保障内容と保険料払込免除特約で比較
  • 変額保険は「生命保険の機能を補填する目的」で利用するのがよい

変額保険を販売している保険会社は5社

【質問】
保険ショップに生命保険の相談に行ってきました。iDeCoと変額保険に興味があったため、とりあえず話を聞いたのですが、変額保険だけでも保険会社が数社あって、どれがいいのか迷ってしまいます。変額保険とiDeCoとの違いと、もし保険会社を選ぶ基準があれば教えてください。

今回も前回に引き続き「変額保険」について考えていきます。

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死亡保障があり、資産を増やせる「変額保険」とは?

日本国内で販売されている変額保険の保険会社は約5社ありますが、変額保険の評価は「特別勘定(投資信託)の運用」で決まるのと、「保険としての機能」で決まるのとで分かれます。変額保険の相談に行った大半の方が、「お金が増える」という魅力にひかれた方と思われます。

まずは、保険の特徴などは考慮せず、「運用」重視で見ていきたいと思います。今販売されている変額保険は販売が早い順に、

ソニー生命 バリアブルライフ(終身型、有期型)
プルデンシャル生命 変額保険(終身型、有期型)
アクサ生命 ユニットリンク(有期型)
東京海上日動あんしん生命 マーケットリンク(有期型)
メットライフ生命 ライフインベストライフインベスト プラス(有期型)

となります。終身型と有期型の違いは、満期があるかないかです。

運用=特別勘定のユニットプライスを比較

変額保険の大きな特徴として、保険料の運用は「特別勘定」と言われる専用の投資信託をリスク別に運用していくことが挙げられます。特別勘定の1単位(ユニット)当たりの価格を「ユニットプライス」といって、特別勘定ごとの価格変動リスクの組み合わせによって運用をしていきます。ユニットプライスは、投資信託の1口当たりの価格と同じようなことです。

変額保険の特別勘定として、商品ごとに8~10種類のユニットが用意されています。その中には、iDeCoでの元本確保型商品に当たるユニットもありますが、それは資金を一時的に退避させる目的でしか利用できないことから、通常は価格変動があるユニットで、ある程度リスクをとりながらの運用になると思われます。

運用を基準にして保険会社を選ぶ場合は、各社のユニットプライスの推移と騰落率を参考にしながら違いを見ていけばいいのですが、「運用」重視となると、ある程度の運用期間が必要です。各社で使用される特別勘定(投資信託)は長期で運用されているものが大半で、長期の実績を比べると、単一の商品ではあまり差がないような気がします。変額保険は長期運用しないとお金は増えませんよということで、運用期間は最低でも10年以上は必要と考えて、各社とも短期運用(5~10年)の解約ペナルティを設けています。現在の世界情勢を考えると、運用には大きなリスクも潜んでいるので、なおさら長期運用が重要になります。

アクサ生命のユニットプライス
変額保険のユニットプライスの推移は、保険会社のホームページで確認できる(上記はアクサ生命の例)

一方で、満期がある有期型などは、加入年齢が満期に近いと、長期運用ができないため、運用には注意が必要となります。iDeCoの経験者であれば分かると思いますが、運用成果はiDeCoと同じく、運用商品の組み合わせによるパフォーマンスで決まり、加入者が独自で行うメンテナンスで決まります。

結果、運用を基準に変額年金を比べたときに、各社の差を導き出すのは難しいとの結論になりました。

保険の機能で比較。保障内容と免除特約を確認

次に「保険としての機能」をみていきます。

主なポイントは2つあります。1つ目は、保障のメインを何にしているのか。販売されている変額保険の保障内容は現在、「死亡・高度障害」「介護」「三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)」があります。

2つ目は保険料の免除特約の範囲です。払込免除とは、保険料払込期間中に指定された疾病になったら、以後の保険料の払い込みが免除されるというものです。要はお金を払わなくても保障が付いてくるという特約になりますが、特約が適用される疾病と保障の範囲について、各社で次のような違いがあります。

  1. 三大疾病
  2. 三大疾病プラス(三大疾病と特定障害状態、要介護状態、精神障害)
  3. 七大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、高血圧疾患、肝硬変、慢性腎臓病)

以上のように3通りあるようです。保険料の免除特約があると保険料は割高になりますが、これらの病気に該当すると、保険会社は保険料を払い込み続けたものとして保障、運用が継続されるので、ありがたい特約でもあります。

それでは各社の違いをみていきます。販売が早い順に、

死亡・
高度障害
 介護  三大疾病 保険料
払込免除特約
ソニー生命 三大疾病プラス
(終身型)
プルデンシャル
生命
なし
アクサ生命 七大疾病
東京海上日動
あんしん生命
三大疾病
メットライフ
生命
三大疾病

となっています。新しいタイプの変額保険ほど、保障範囲が広がっている傾向のようです。保障についてはその他細かい要件がありますので、詳細は各社のホームページなどを確認ください。

変額保険は生命保険でありiDeCoとは別物

さて、相談者の質問には「変額保険とiDeCoとの違いは何か」とありましたが、変額保険はiDeCoと全くの別物と理解してください。似ているのは、加入者が運用商品を決めることと、運用のメンテナンスが必要なことですが、あくまでも変額保険は、保険料に保障部分が加算されている生命保険であることを知っておいてください。

また、変額保険は保険料払込期間の保障は維持できても、払込期間が終わった後の保障は、運用次第で保障額も下落する場合があります。このように変額保険は「お金を増やすための商品ではなく、保障を補いながらお金の運用と両立させる商品」と位置付けて、ご自身の生命保険に補填する目的で利用するといいでしょう。

変額保険の商品を選ぶ際は、まず「補填すべき保障は何か」を決めて、次に運用の機能に着目していくのがベストな選択です。ただし不測の事態に備えて、特別勘定の割合の変更は人任せにならないようにしてください。運用のメンテナンスのやり方には、保険募集人のアドバイスが必要です。保険募集人も観察しながらの検討も大事になってきます。

変額保険は今後、さまざまな特約などが追加された商品が登場することでしょう。変額保険はあくまで「保険」です。単にお金を増やす目的であれば、投資信託で運用するNISA、つみたてNISAの活用で十分です。

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