レポート提供:イーストスプリング・インベストメンツ(2019年9月2日)
インド政府が発表した2019年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比で+5.0%となりました。5四半期連続の鈍化となり、前四半期から急減速しました。
- インドのGDP成長率が急減速。市場予想下回る+5.0%。
- 個人消費や輸出の落ち込み響く。政府やRBIは景気支援に注力。
4-6月期のGDP成長率は急減速の+5.0%
8月30日に発表された2019年4-6月期実質GDP成長率は+5.0%(前年同期比、以下同)と市場予想の+5.7%を下回りました。前四半期の+5.8%からも大きく減速し、5四半期連続の鈍化となりました。4-6月期は、5年毎に行われる下院総選挙のタイミングと重なり、投資や消費が手控えられたと見られ景気が減速することが予想されてはいましたが、予想を大きく下回る低成長となりました。
需要項目別では、総固定資本形成(投資)の伸びが若干加速したものの、GDPの5割以上を占める個人消費が減速しました。その他、政府消費や輸出の落ち込みも目立ちました(下表参照)。産業別では、前四半期にマイナスとなっていた農業の伸びがプラスに回復しましたが、金融・不動産・専門サービスや製造業の伸びの減速が目立ちました。昨年9月以降のノンバンク流動性問題が影響したものと見られます。
【図表1】インドの実質GDP成長率(四半期、前年同期比)の推移
(2013年1-3月期~2019年4-6月期)
出所:Bloomberg L.P. のデータに基づきイーストスプリング・インベストメンツ作成
【図表2】インドの実質GDP成長率(前年同期比)
出所:インド中央統計局のデータに基づきイーストスプリング・インベストメンツ作成
インド準備銀行と政府は景気支援を進める
インド準備銀行(中央銀行、RBI)は、2019年に入って4回連続で計1.1%となる利下げを行っています。直近8月7日の利下げ幅は市場予想の0.25%を上回る0.35%でした。インフレ率が落ち着いていることから、RBIは成長支援に軸足を置いた政策を取っています。
政府も、8月下旬に立て続けに景気支援策を発表しています。8月23日には、昨年9月以降くすぶるノンバンクの流動性問題への追加対応や、販売が低迷する自動車業界の支援策など幅広い項目を盛り込んだ政策を発表しました。また、8月30日には、短期的な景気支援策にとどまらず、2024年までにインドの経済規模を5兆米ドル(現状の約2倍)にするという目標を達成するためには強い銀行が不可欠として、大規模な国営銀行の再編策を発表しました。国営銀行のうち10行が4行に統合されます。
8月下旬に発表された主な景気支援策
- ・外国人投資家(FPI)および国内投資家の一部にかかる株式の長期・短期のキャピタルゲインの付加税の増税撤回
- ・国営銀行への7,000億ルピーの資本注入を前倒しで行う
- ・中小企業への物品・サービス税(GST)還付金の未処理分を30日以内に支払
- ・住宅金融に追加で2,000億ルピーの流動性支援を行う
- ・長期の資金調達をしやすくするためにインフラや住宅プロジェクトへの信用補完を行う組織を設立
- ・自動車登録料の引き上げを2020年6月まで延期
- ・2020年3月末までに購入された自動車の減価償却率を現行の15%から30%に引き上げ(税制優遇につながる)
- ・国営銀行の再編やガバナンスの改善
出所:インド財務省、各種報道の情報に基づきイーストスプリング・インベストメンツ作成
今後の見通し
4-6月期のGDP成長率は大幅減速となりましたが、下院総選挙ではモディ首相のインド人民党(BJP)が圧勝を収め、政治的な不透明感は既に払しょくされています。世界的な景気減速感が強まる中で外需が今後も伸び悩む可能性がありますが、インドは内需が経済成長のエンジンであり、内需の回復が今後の景気回復の鍵を握ります。政府とRBIは景気支援に注力しており、今後の景気回復が期待されます。
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