宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、つみたてNISAでは「少数派」の、アクティブ型の投資信託の活用について考えてみます。

  • つみたてNISAの対象商品のほとんどがインデックス型。アクティブ型は少ない
  • アクティブ型は運用コストが高い。ファンドマネージャーの手腕が成績につながる
  • 良い商品を選択すれば、つみたてNISAでアクティブ型の投資信託を買うのもあり

つみたてNISAの株式型・アクティブ型の投資信託は10本

【質問】
待ちに待った「つみたてNISA」デビューです。銀行の方や専門誌は、手数料などを考えて「インデックス型の投資信託」を推奨しています。確かに、金融庁が決めているつみたてNISAの商品一覧を見てもインデックス型の商品が多いようですが、それだけ、インデックス型以外の商品は初心者にはハードルが高いということなのでしょうか?

今回は、つみたてNISAの商品で圧倒的に少ない、「アクティブ型」の投資信託にスポットを当てて考えていきます。

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まずは、つみたてNISAの対象投資信託のうち、「指定インデックス投資信託」以外の投資信託(アクティブ運用投資信託等)の一覧を見ていくことにしましょう(図表1)。
2021年7月15日時点では、インデックス型が173本、アクティブ型が19本、ETFが7本となっています。

「アクティブ運用投資信託等」の対象商品は、大きく2種類に分けられています。国内資産中心で運用されるもの(国内型)と、海外資産を含む運用をしていくもの(海外型)です。さらに、国内型では株式で運用する商品が6本、株式および公社債(バランス型)が1本。海外型は株式が4本、「株式および公社債」が5本、「株式およびREIT」が1本、「株式、公社債およびREIT」が2本となります。

リスクが大きいと思われがちな株式型の投資信託ですが、つみたてNISAで、株式のみで運用するアクティブ型の対象商品は10本しかありませんので、この中から選ぶとすれば、比較的選びやすいのではないでしょうか。

【図表1】つみたてNISAの「指定インデックス投資信託」以外の投資信託
区分 投資対象 商品名 運用会社
国内型 株式 コモンズ30ファンド コモンズ投信
大和住銀DC国内株式ファンド 三井住友DSアセットマネジメント
年金積立 Jグロース 日興アセットマネジメント
ニッセイ日本株ファンド ニッセイアセットマネジメント
ひふみ投信 レオス・キャピタルワークス
ひふみプラス レオス・キャピタルワークス
株式および
公社債
結い 2101 鎌倉投信
海外型 株式 EXE-i グローバル
中小型株式ファンド
SBIアセットマネジメント
セゾン資産形成の達人ファンド セゾン投信
フィデリティ・欧州株・ファンド フィデリティ投信
eMAXIS NYダウインデックス 三菱UFJ国際投信
株式および
公社債
セゾン・バンガード・
グローバルバランスファンド
セゾン投信
ハッピーエイジング20 SOMPOアセットマネジメント
ハッピーエイジング30 SOMPOアセットマネジメント
ハッピーエイジング40 SOMPOアセットマネジメント
世界経済インデックスファンド 三井住友トラスト・アセットマネジメント
株式および
REIT
フィデリティ・米国優良株・ファンド フィデリティ投信
株式、公社債
およびREIT
のむラップ・ファンド(積極型) 野村アセットマネジメント
ブラックロック・インデックス
投資戦略ファンド
ブラックロック・ジャパン

出所:金融庁(2021年7月15日時点)

トラリピインタビュー

インデックス運用を上回ることを目指すアクティブ運用

ところで、「アクティブ運用」と「パッシブ運用(インデックス運用とも言います)」の違いとは何でしょうか?

簡単に解説すると、パッシブ運用は日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの市場平均と同じ動きを目指す運用で、アクティブ運用は日経平均株価などを運用目標(ベンチマーク)として、それを上回ることを目指す運用です。「パッシブ運用(インデックス運用)を上回る投資成果を目指すのがアクティブ運用」とも言えます。

ということは、「アクティブ運用の方が断然いいじゃん!」と、皆さんも思ったはずです。

私も、最初の投資信託はアクティブ運用でしたので、そう思っていました。ただ、現実はそんなに簡単ではありません。
後ほどそれがなぜかを説明しますが、投資の世界では、うまい話にはリスクが潜んでいるものです。

アクティブ型投資信託の特徴とコスト

アクティブ型の投資信託は、一般的にインデックス型と比べて多額のコストがかかります。
実際につみたてNISAのアクティブ型商品を見ていきながら、考察していきます。

まずは国内型・株式の『ひふみプラス』。この投資信託は、過去に「R&Iファンド大賞」の最優秀ファンド賞を受賞したこともあります。
そして、海外型・株式および公社債の『ハッピーエイジング20/30/40』。こちらも過去に「R&Iファンド大賞」の受賞歴があります。

2種類(4本)のアクティブ型投資信託の共通の特徴として挙げられるのは、信託報酬が割高なことです(図表2)。インデックス型と比べてコストで劣るところがもったいない、投資初心者には向かないとよく指摘されます。

【図表2】アクティブ型とインデックス型の信託報酬の比較
種別 商品名 信託報酬
(税込み)
アクティブ ひふみプラス 1.078%
ハッピーエイジング20 1.617%
ハッピーエイジング30 1.485%
ハッピーエイジング40 1.320%
インデックス つみたて日本株式(TOPIX) 0.198%

※2021年7月15日時点

アクティブ型の信託報酬が割高なのは当たり前のことです。市場平均への連動を目指すインデックス型(パッシブ運用)と異なり、アクティブ運用では資産運用会社の専門家(ファンドマネージャー)が情報収集、調査、分析を行い、組み入れ銘柄の売買や入れ替えを頻繁に行います。そのため、かかるコストが割高になります。運用コストをかけることで、パッシブ運用より常に高いリターンを目指しているのです。
また、アクティブ型はベンチマークとなる日経平均株価などの下落時に、投資信託の下落幅をインデックス型より抑えられる可能性もあります。

もちろん、アクティブ型の投資信託がすべてインデックス型を上回る成績をあげているわけではありません。インデックス型に運用成績が劣るアクティブ型もあります。
アクティブ型の投資信託は、ファンドマネージャーの手腕が成績につながりますので、先に述べた「賞」は、選ぶ際の指標となりますね。

運用レポートにも特徴が表れています。『ひふみプラス』でも、投資信託の組み入れ銘柄の状況や、運用責任者からのメッセージが運用レポートで分かりやすく報告されています。投資初心者にとっては、下落時でも勇気をもらえるようなメッセージもあり、商品や運用責任者のファンになる要因でもあります。

成果をあげているアクティブ型の商品は、グロース(成長)とバリュー(価値が割安)の株式にバランスよく投資している傾向が見られます。
グロース銘柄を増やれば、大きな値上がりが期待できますが、値下がりのリスクも増大します。一方、バリュー銘柄を増やせばリスクを抑えられます。これはパッシブ運用にはできない投資法です。
ちなみに最近では、連載第10回で述べました「テーマ型」の投資信託のうち、ESG(環境、社会、企業統治)で構成されたパッシブ運用の商品の上昇が目立っていますが、投資先は大企業が中心なので、今後は注意が必要だと思います。

テーマ型の投資信託ってどんげね?

良い選択をすれば、アクティブ型も有効

一般的に、アクティブ型の投資信託はコストが割高で、運用効率が悪いと言われがちです。
しかし、多くの投資信託の中から良い選択をすれば、アクティブ型はインデックス型よりも運用成果が大きくなります。
インデックス型の投資信託の方が、投資家はアクティブ型より高値で購入しやすい傾向がありそうです。アクティブ型の場合、これから株式市場が下落する恐れがあるときなど、ファンドマネージャーが損失を最小限に抑えるために高値のうちに株式を売るなど、ポートフォリオの調整をすることもできます。

実際、2019年以前からコロナ禍の下落を経た基準価額の推移を見ると、つみたてNISAの対象商品の中でアクティブ型の『ひふみプラス』と、インデックス型の『つみたて日本株式』を比較しても、パフォーマンスは明確に違ってきています(図表3)。

【図表3】アクティブ型とインデックス型の運用益
(2021年6月末時点)
商品名 3カ月 6カ月 1年 3年
ひふみプラス 0.2% 4.4% 24.2% 21.8%
つみたて日本株式(TOPIX) -0.4% 8.8% 27.1% 19.9%

出所:レオス・キャピタルワークス、三菱UFJ国際投信

私は、金融庁が認可したアクティブ型の19本の投資信託に関しては、多くの商品から厳選された、相対的に優れた商品であることは間違いないのではないかと考えています。

あとは割高な運用コストをどう考えるかですが、つみたてNISAで長期運用を基準として商品を選ぶのであれば、コストを打ち消すほどの運用成果を期待できるアクティブ型の商品も「あり」だと思います。

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