「FIRE(ファイヤー)」という言葉をご存知ですか? 「Financial Independence and Retire Early」の略で、「経済的自由かつ早期リタイア」を意味します。欧米の若者を中心にムーブメントが広がりつつあり、最近では日本のテレビで取り上げられることも。そんなFIREをなんと30歳にして達成し注目を集めているのが、元有名企業サラリーマンの穂高唯希さんです。資産をふやした方法や、セミリタイア後の生活について聞きました。(聞き手・文=まわた)
- 穂高 唯希(ほたか・ゆいき)さん
- 14歳で為替、22歳で株式投資を始め、30歳でセミリタイアFIREを達成。日米英豪中越加の高配当・連続増配株などに投資。BSテレ東、日本経済新聞、日経マネー、日経ヴェリタス、ダイヤモンドZAiなど掲載多数。
Twitter: @FREETONSHA
ブログ:三菱サラリーマンが株式投資でセミリタイア目指してみた
中学生で為替に興味、FXを経て株式投資、就職初日にアーリーリタイアを決意
まわた- 2019年の夏、30歳にして約7000万円の資産を築き、セミリタイアを達成されました。おめでとうございます!
ずばり、どうやってお金を貯めたんですか?
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穂高さん- 一言で言うと、自分を知り、自分の価値観に沿って支出を最適化し、余ったお金と給与を投資に回す、の繰り返しです。
- 投資先は、高配当な米国株式や日本株式がメインです。
まわた- コツコツ堅実な、王道スタイルですね。
「これさえ買えば資産100倍! 一発ドカン!」みたいなのをちょっと期待していましたが、やっぱり資産形成に近道はないんですね……。
穂高さん- 以前はハイリスクハイリターンな投資もしていました。中学生の時に為替市場に興味を持ち、のちにFX(外国為替証拠金取引)を始めました。短期的に大きな利益を上げようと目論んでいました。でも、ずっと続けていくうちに、FXで安定的にお金を増やすのは難しいと悟りました。
- 再現性のある方法ではないと思ったのと、何よりメンタル面が大変で。24時間、どこかしらの市場が開いていて常に値動きがあり、当時は資金管理も適切に行えずレバレッジをかけていたので、夜も気になってかなりのストレスでした。心穏やかに実践できて、長期的に続けられる方法を模索した結果が今の投資スタイルです。
まわた- 中学生から為替市場! 子供のころから、お金に対する意識が高かったんですね。
そもそも、いつ頃からアーリーリタイアを目指していたんですか?
穂高さん- 入社初日です。ルールやしきたり、そこで是とされる価値観に息苦しさや違和感があり……その日のうちに、アーリーリタイアを決意しました。
- 会社が良いか悪いかという表層的な論点ではなく、単に見据える先・景色が交わらなかったという表現になるでしょうか。サラリーマン時代に幾多の貴重な経験をさせていただいたことには、今でも感謝しています。
まわた- おっしゃっていることは凄くよくわかるのですが、それで実際にアーリーリタイアを実現させてしまうのがすごいです。
- 節約生活とか、しんどくなりませんでしたか?
穂高さん- 「節約」というと我慢しないといけないイメージですが、私は「支出の最適化」と呼んで、経済行動に関して自身の価値観に合わせて取捨選択するという前向きかつ自然なものと捉えています。
- 主に就職後、約7年半かけて資産を築いてきましたが、とくに中盤以降は、より明確にメリハリがついたと思います。給与の約8割を投資に回すイメージです。
まわた- 8割……!!!
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穂高さん- はたから見たらストイックに聞こえるかもしれませんが、自分としては全然そんなことなくて。頑張って節約したのではなく、自分の価値観に合うものにしか資源を投下しなかっただけ、という感覚です。
- というのも、学生時代などは高級旅館に泊まったり、高価なレストランに行ったりしました。服もブランドものを買ってみたり(笑)。
- でも、実際に色々な贅沢に手を出してみたら「こんな感じか」と思ったんです。高価な服を着ても、ユニクロを着ても、そんなに変わらないなあと。高級レストランも良かったけれど、自宅で鶏胸肉を調理するのも美味しかった。一通り試してみたからこそ、自分が価値や幸福を感じられる対象がわかりました。
まわた- たしかに、やりたいことを我慢するのは辛いけれど、なくても良いものを減らす分にはノーダメージですよね。逆に、どんなものにはお金を使っていましたか?
穂高さん- 経験になるものです。経験が増えると観点が増えます。観点が増えると人生は豊かになります。
- あとは健康面などです。たとえば食材です。添加物のなるべく少ないものを選んだり。健康な体があってこそのFIREだと思っているので、食品は多少高くても良いものを選んでいました。といっても、食材なら高くてもたかが知れています。外食と比べればずっと安いです。
- 交際費もメリハリをつけて使っていました。たとえば私が通っていた中高は、自由で、特定の分野にめっぽう強かったり、良い意味で変わった人ばかりで、私の金銭的価値観も含め、個々人の主義を多様性の1つとして認められる土壌があります。心の底から尊敬できる友達が沢山います。関わる人々との交友関係は、今後も大切にしていきたいですね。
- 趣味の登山にもよく行っていました。最初に道具をそろえてしまえば、あとは山までの交通費くらいです。アウトドアブランドの服もたまに購入しますが、長く使えて機能的なので、結果的にお財布にも優しくなります。
取材当日も、スペインのアウトドアブランド『テルヌア』の服を着ていた穂高さん。「人とあまりかぶらない色が気に入っています」
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