日経平均株価は約3カ月半ぶりに2万3000円台を回復するなど、停滞していた経済活動が再開に向かうという期待から株式市場に資金が戻っています。とはいえ、感染が再流行する「第2波」への懸念もあり、まだまだ先行きは不透明です。そんなコロナ禍においても優れたパフォーマンスを発揮している投信を紹介する本シリーズ。今回は、ニッセイアセットマネジメントの『げんせん投信』を紹介します。

目に見えない企業価値こそ重視する

5月末に緊急事態宣言が全面解除され、6月1日に東京都が休業要請を解く「ステップ2」に移行しました。それを受け、停滞していた経済活動が再開されるという期待が高まり、日本株市場は約3カ月半ぶりに2万3000円を回復しました。

とはいえ、「コロナショックによる株価下落は底を打ち、本格的な回復局面に入った」と判断するのは時期尚早です。ワクチンや治療薬などが開発されない限り、本格的な相場回復にはもう少し時間がかかりそうです。

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さらに新型コロナの影響で先行きを見通せない企業が多いことも懸念材料です。東京商工リサーチの調査によると、2020年3月期決算の上場企業のうち、 5月27日までに2,220社が決算短信を発表し、このうち2021年3月期の業績予想を「未定」とした企業が約6割(1,300社)を占めたということです。

しかしこうした大きなショックにより先行きが不透明になっているときこそ、企業としての本質的な強さが顕在化されます。今回紹介するニッセイアセットマネジメントの日本株ファンド『げんせん投信』は、業績予想や財務データといった目に見える情報だけでなく、企業の目に見えない資産、つまりその企業の本質的な強さを特に重視して銘柄を選択するファンドです。

地面から力強く生える雑草
ショック時こそ、企業の本質的な強さが試される

ファンド名が「げんせん」と平仮名になっているのは、2つの意味が込められているからです。まずは「厳選」。収益力向上により株価上昇が期待できる銘柄を「厳選」して投資をする、という意味だそうです。

銘柄選択の際には、投下した資本に対するキャッシュフローの割合を重要視します。これは企業の競争力がもたらす結果であり、いわば目に見える資産といえるでしょう。

そしてもう一つの「げんせん」は、「源泉」です。こちらは企業の競争力の源泉となる目に見えない資産を指します。具体的には、「組織資産」「人的資産」「顧客資産」という「見えない3つの資産」および「社長」の評価。それらを点数化し、銘柄選択の重要な指針にするそうです。

同社のホームページを見ると、

組織資産…企業理念・文化・情熱などから生み出される組織全体としてのチカラ
人的資産…活き活きと働きプロフェッショナルとして成長している従業員のチカラ
顧客資産…製品・サービスに対する顧客からの支持

とあります。いずれも目には見えませんが、この3つの資産が豊富な企業は、間違いなくいい企業といえそうです。

そして、この「見えない3つの資産」の質を左右するのが「経営トップ」の力量というわけです。

コロナ禍でもジタバタせずどっしりとした運用を継続

そんな独自の運用哲学を持つ『げんせん投信』のパフォーマンスは以下の通り。

『げんせん投信』の基準価額と純資産総額の推移げんせん投信の基準価額の推移

やはり短期的な下落は避けられなかったようですが、それでも順調に回復していることがわかります。

このファンドで特に筆者が好感をもったのは、コロナショックに端を発する大きな調整局面を迎えてもジタバタせず、どっしりとこれまで通りの運用を継続している点です。同ファンドの5月発行のレポートには、運用を担当する伊藤琢チーフ・ポートフォリオ・マネジャーのこんなコメントが載っていました。

新型コロナウイルスに起因する実体経済へのマイナスインパクトがどれほど長期化するのか、いつ回復に向かうのかを見通すことは難しいと考えています。こうした状況のなか、保有銘柄の相対的な競争力と成長シナリオは変わっていないため、大きな売買は行っていません。

足もとの業績が悪化することは避けられませんが、中長期的には競争優位性を発揮して企業価値を向上させられる銘柄群に投資していると考えています。

そもそも長期的な視野で銘柄を選んでいるから、コロナショックのような外的な要因で株価が下落しても、保有銘柄の成長シナリオに変化はない、という肝が据わった姿勢が伝わってきます。

やっぱりアクティブファンドはこうでなくっちゃ。短期的な相場の上下で売ったり買ったりするのではなく、企業価値の「源泉」をしっかり見据えつつ、銘柄を「厳選」して投資してほしいものです。

そういえば以前インタビューした投信ブロガーのrennyさんも、「投資のリターンは目先の価格変動から生まれるのではなく、投資先企業が生み出す価値がもたらすもの」と言ってたっけ。でも企業の本質的な強さや価値は、個人ではなかなか見出しにくいもの。それを個人に代わって調べつくし、厳選して投資してくれるのがアクティブファンドの存在意義です。

下落局面でこそ真価を発揮するアクティブファンド

気になる組入上位10銘柄は下記の通り。長期で持ち続けたい企業ばかりです。「げんせん」と名乗るだけあって、組入銘柄の数も40~50銘柄と絞り込んでいるのもこのファンドの特徴です。

6月5日にリリースされた最新のレポートによると、「新型コロナウイルスによって社会の構造変化が起きており、それにより従来の強みや成長ストーリーに見方の変更が必要であると考える銘柄がいくつかあります。このため、相場や株価を見ながら、今よりも保有銘柄数を若干減らし、確信度の高い銘柄への集中度を小幅に上昇させていくことを検討しています」とありました。

さらに「厳選」と「源泉」を追求するのでしょうか。王道の日本株アクティブファンドのひとつとして、『げんせん投資』にはこれからも注目していきたいですね。

『げんせん投信』の組入上位10銘柄げんせん投信の組入上位10銘柄

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