宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。テーマは前回に引き続いて「一棟アパート投資」。オーナーの頭を悩ませる諸経費について、意外な方法で経費の削減に成功した事例を、今回も小田さんの実体験に基づいてお伝えします。
- アパート経営では減価償却費の扱いが非常に重要。事業収支計画の確認も大切
- ガス自由化による競争激化のため、オーナーにとって有利な条件で契約に成功
- 既存の設備の見直しが、思わぬ経費節減につながることも
減価償却費で納税額を減らす
【質問】
夢だった福岡のアパートオーナー! 土地から購入するつもりで、複数の建物を観に行ったらデザイナーズアパート。すぐに欲しくなって、勢いで契約してしまった。こんなに思い切って大丈夫ですかねぇ?
新築のアパートを購入して、経営者として14年を超えてくると、さまざまなトラブルなどに見舞われることが増えてきます。しかしながら、その中でも経営にとってプラスになることも多少ですがあるものです。
今回は一つの案件を例題にしていきます。これからアパート経営を始める方、すでにアパート経営をしている方にとって、以下の例がご自身のメリットになるかどうかの判断材料にしていただきたいと思います。
ズバリ、キーワードは「自由化」です。
新築物件を購入した私は、「減価償却費」という大きな経費を手にすることができました。減価償却とは、「新品で購入したものの費用を一括で計上するのではなく、年々劣化などしていく固定資産として、毎年一定の割合で分割していきましょう」というものですが、償却資産があることは、事業を行う上で非常に重要です。
皆さんはすでにご承知かもしれませんが、1年間の家賃収入は、毎年税務署に申告をしなければいけません。税金の金額は収入によって確定するのですが、減価償却費は、収入から差し引くことができる一番大きな経費といえます。減価償却費によって収入額が減れば、支払う税金も少なくなります(ちなみに2番目に大きな経費は、借入金返済の利息になります)。
ところで、固定資産の耐用年数は固定資産ごとにあらかじめ決められています。自身のアパート物件は新築ですから、通常なら木造建物は22年間、室内などの付属設備類は15年間、毎年一定金額を経費として処理できます。アパート経営を始めて来年で15年になるので、付属設備については、来年までで償却資産としてある程度の役目を終えることになります。
ところが、下の図の事業収支計画をよく見てみると、建物本体は25年目のところに、附属設備は20年目のところに数字が書いてあります。実は、建物本体も付属設備も、もともとこちらの想定より3~5年間長く償却できるようになっていたのです。当時、ちゃんと目を通してみていればと思うと、腹立ちますが、勉強させてもらったと考えることにしています。
ガス自由化を発端とした、意外な経費削減効果
一方で、アパート経営は年月を重ねるごとに、修繕など支出が増える事項が発生してきます。減価償却がなくなった分、どこかで補填ができればいいのですが、なかなか簡単にはいきません。
そんな中、不動産管理会社の提案により、経費の削減に成功できました。そのカギとなったのが、冒頭に挙げた「自由化」です。
アパートの立地などにもよりますが、各部屋のガス設備は、特定の事業所と提携したプロパンガスが設置されているケースが多いかと思われます。プロパンガスの設置料金と引き替えに、事業者は各部屋の賃貸人が支払うガス代を利益にできるというシステムです。このプロパンガスに目をつけた方法でした。
2016年4月の電力自由化に次いで、2017年4月にはガスの自由化が始まりました。自由化により、さまざまな企業が参入して、ガスを販売しています。ガス会社のプランによっては、今のガス料金よりも割安のシステムを導入できるため、各部屋の賃貸人のガス料金の節約にもなり得ます。実は、ここにアパート経営にとって大きなメリットが存在していたのです。
そのメリットは、ガス会社との委託契約にあります。私の場合は委託契約の際に、各部屋のエアコンなどに不具合などがあった時は無償で新品に交換し、設置までガス会社でしてくれるようにしたのです。エアコンの故障なんてまったくガスと関係ないのですが、自由化によって各社の競争が激化しているからこそ、このような契約が可能になるのです。これから掛かってくる修繕費、備品類の費用が少しでも浮いてくると助かりますね。
この委託契約によって、これからの償却資産の故障で経費として出ていくお金も節約できます。どうです、一石二鳥だとは思いませんか。
これまで更新など考えたこともなかった設備などを見直すことで、思わぬ経費削減効果が出るかもしれません。もちろん、不動産管理会社に協力をいただくことと、各部屋の賃貸人に対して契約変更などの交渉も必要となりますが、やってみる価値は充分でしょう。ぜひ、チャレンジしてみてください。
次回も、経験談を中心に話をしていきます。
(次回は8月7日を予定しています)