投資信託の分配金の2つの選択肢、一般口と累投口
毎月分配型ファンドに限らず、ファンド(=投資信託)に投資する時に、分配金について2つの選択肢が設けられている場合があります。
選択肢のうち、一つが分配金を現金で「受け取る」前提の「一般口」。
もう一つが分配金を「受け取らず」に、分配金を同じファンドの買い増しに充てる「累投口(=自動継続再投資)」です。
なお、NISA口座の場合は、証券会社や金融機関などの販売会社によっては「累投口は選択できない」旨の規約を設けている場合があるようです。
というのも、仮にNISA口座にて累投口でファンドに投資をすると、「分配金による同じファンドの買い増し」によって、NISA口座の非課税枠を超えてしまうことがありうるからです。
また、同じく販売会社によっては、一般口で投資したファンドの運用を続けたまま、つまり売却などをせずに、累投口に変更することができる場合もあれば、できない場合もあります。
毎月分配型ファンドでも積立投資と同じ妙味を得る
さて、先述の累投口で、毎月分配型ファンドに一括投資すると。
(繰り返しになりますが、分配金は頻度および額ともに保証はありません)
分配金によって、積立投資と同じ妙味を得ることができる場合があります。
積立投資と同じ妙味とは、投資における「損益分岐点の引き下げ」です。
拙稿の第17回を、あわせてご笑覧ください。
投資時 | 売却時 | 差し引き | |
---|---|---|---|
基準価額 | 3,992円 | 1,783円 | ▲2,209円 |
キャッシュ | 300,000円 | 308,140円 | +8,140円 |
数量(口数) | 787,497口 | 1,728,212口 | +940,715口 |
さて、上の表は筆者が保有していたファンドの実績です。
実績ですから、購入時手数料や信託報酬といったコストや税金などは織り込み済みです。
投資時と売却時を比べてみると。
基準価額は半額以下に、大きく落ち込んでいます。
その一方で、数量の方は倍以上になっています。
つまり、基準価額の下落は、数量を増やすことでカバーしたということができそうです。
では、この数量が増えた理由は?と問われると、先述の「分配金による同じファンドの買い増し」です。
なので、キャッシュ(=現金)ベースで見ると、何とプラスのパフォーマンスです。
基準価額が大きく落ち込んでいるのに、プラスのパフォーマンスでキャッシュを得ることができた。
これこそが、まさに「損益分岐点を下げる妙味」です。
ちなみに。
筆者はこのファンドが毎月分配型ファンドだから投資したのではなく、投資対象や投資方針を吟味して選んだのですが、決算の頻度が「毎月」しかなかったのです。
なお、売却のタイミングは今年の2月の半ばです。今、振り返ると、何とも絶妙なタイミングでした。
ファンド(=投資信託)の分配金について、少しおさらい
ところで、ファンドの分配金を「インカムゲイン」というのは、少し微妙かも知れません。
そもそも、インカムゲインというのは「保有期間中に得ることができる収益」のことです。
分配金はファンドを保有していなければ得ることができませんし、分配金が「収益」であるならば、インカムゲインには違いないのですが。
ファンドの分配金とは「利益の分配」というよりも、「ファンドの一部解約」という方が正確な表現だと、筆者は思っています。分配金が出ると、少なくとも分配金の分だけ基準価額が下がりますから(実際には、分配金支払い後の基準価額に、その日の運用損益が加わります)。
ということは。
「分配金による同じファンドの買い増し」によってファンドの口数が増えていくのは先述の通りです。「ファンドの買い増し」は自身の資金ではなく、分配金ですから、ファンドの口数が増えていく分、損益分岐点を下げる効果を得ることができそうです。
さらに、分配金が出るたびに、少なくとも分配金の分だけ基準価額が下がります。分配金によって下がった基準価額で「分配金による買い増し」がなされるのです。
毎月分配型ファンドの分配金について、一般口を選んだ方
毎月分配型ファンドの分配金について一般口を選んでいる方は、「毎月、分配金を受け取る楽しみと安心」を得られる代わりに、「分配金による同じファンドの買い増し」がありません。よって、ファンドの数量は増えていないと思われますし、分配金による損益分岐点を下げる効果もありません。運用益に期待するしかなさそうです。
しかし、その運用益に期待することが難しいとなると。
販売会社によっては、一般口で投資したファンドを、累投口に変更することができる場合もあるようです。一般口から累投口に変更して、損益分岐点を下げる妙味を待つという方法も有りかも知れません。
しかし、その妙味を得ることができるまでは、かなり時間を要する旨の覚悟が必要だと思います。
まとめに代えて
積立投資なり、ドルコスト平均法なりの、「損益分岐点を下げる」考え方は、毎月分配型ファンドにも応用できることをお伝えしたくて、本稿を書きました。
ここまで書いてしまうと、毎月分配型ファンドを推奨しているようにも感じてしまうかもしれませんが。先述の通り、筆者は毎月分配型ファンドを必ずしもベストな選択だとは思っていません。投資対象が魅力的で、投資方針が素晴らしくとも、やはり、パフォーマンスを挙げるには難しさを感じるのも、また事実です。
当局の意向を代弁するつもりは毛頭ありませんが、決算頻度は少ないファンドの方が、筆者は良いと思います。
しかしながら毎月分配型ファンドを「タコ足ファンド」と、一律に揶揄するのもいかがかと思います。と申しますのも、筆者は先ほどの表の他にも、毎月分配型ファンドでパフォーマンスを挙げていますし、筆者がアドバイスさせていただいた方も、複数の方が、やはり毎月分配型ファンドでパフォーマンスを挙げていらっしゃいましたから。
ただし、累投口では、毎月のお楽しみの分配金を受け取ることはできませんが。