宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、企業型確定拠出年金について寄せられた質問をもとに、iDeCoなどの個人年金を運用する際の重要なポイントやリスクについて、小田さん自身の経験を交えながら解説します。

  • 年末や年度末には、お金がどうなっているかを確認して今後どうするかを考えたい
  • iDeCoや企業型確定拠出年金は、元本確保型の運用ではお金の価値は減っていく
  • インフレに備えて、株式型商品を含めたアセットアロケーションで年金を増やす

年に一度は自分のお金がどうなっているか確認しよう

【質問】
11年前に会社で始めた積立(企業型確定拠出年金)が、私の退職金になります。年度末ということで、退職金がどうなっているか家内と見てみたら、どうも増えていないようなんです。このまま積立を続けて、6年後に退職するとき、退職金は増えているのでしょうか?

自分のお金は、今どうなっているのか? まったく関心がないのは問題ですが、そんな人でも年末や年度末になると、お金がどうなっているか確認することも多いでしょう。それは正解です。私も必ず、自身の総資産とキャッシュフロー表を年度末に確認して、今後どうなの?どうする?と自問自答の時間を作りながら、対策を講じて新年を迎えるようにしています。

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ザックリですが報告いたしますと、昨年末とのリターンを比較して、

①NISA関連の金融商品(株式など)については、約10%のマイナス(総額約26%マイナス)
②一般口座の商品(投資信託)については、約8%のマイナス(総額約53%プラス)
③iDeCoは、約1%マイナス(総額約9%プラス)
④賃貸不動産は変化なし

2022年末の日経平均株価は、2021年末と比較すると、9%下落して終えていますので、①株式投資中心で運用しているNISAは、下落幅が大きい米国株式にも投資しているのを考えるとまずまずだと思っています。昨年は株の売買も少なく、少しですが米ドル建ての投資信託を購入しています。

②投資信託などのパフォーマンスに関しては定額積立をコツコツ21年続けている商品を含めた結果なので、これからも楽しみです。日経平均の下落幅と比較して、少しですが上回る結果となりました。④不動産投資は銀行借入の分を家賃収入から差し引いても、年利5%前後で回っています。全体としては、うまく運用できているとみています。

アセットアロケーションがiDeCoの醍醐味

さて、暮れも何かと忙しいさなか、確定拠出年金に関して2件の相談が突然舞い込みました。1件目は先ほど挙げた、会社で企業型確定拠出年金をやっていて、それが退職金を兼ねているという話です。2件目は、ある金融機関で個人型確定拠出年金(iDeCo)を運用しているとのことでした。

どちらとも、送られてきた報告書を持参しての相談でしたが、企業型の運用期間は11年、個人型は1年で、案の定、両者ともアセットアロケーション(運用するお金の配分)の100%が元本確保型(定期預金)となっていました。これではお金が増えるどころか、物価上昇を考えたら実質的に減っていくしかありません。これまでもアセットアロケーションの重要性を言ってきましたが、これが地方の現実なんだと痛感させられました。

ローリスクローリターン
せっかくの年金運用を元本確保型商品100%にすれば、リターンはゼロどころか、物価が上がってお金の価値は減っていく

これからは私自身も運用しているiDeCoを例にして、最低限の資産を増やす考え方をみていきます。

今回も、今まで何度か話してきた確定拠出年金のアセットアロケーションについて深掘りしていくことにします。まずは私の年度末の③iDeCoのパフォーマンス、先ほど書いた通り、年間では1%のマイナスですが、5年間では9%のリターンを得ています。そして現在のアセットアロケーションは、元本確保型15%、投資信託が85%で、その内訳はバランス型30%、国内株式型30%、海外株式型25%となります。

「株式が半分以上と、結構リスクがあるのに1%だけのマイナス?」と思いませんでしたか? 実はこれにはからくりがあります。私は2年前に60歳に到達して、昨年は2月から7月まで積立ができませんでした。そこで今後のことを考えて、スイッチング(預け替え)と、配分の変更を実行しました。保有していた国内株式型商品(インデックス型)を売却し現金化して、それを元本確保型商品に追加して、さらに他の国内株式型商品(アクティブ型)と海外株式型商品(インデックス型)をバランス型商品に変更したアセットアロケーションにしました。

60歳直前のiDeCoで考えたい「スイッチング」

60歳以降、iDeCoに再加入する場合の注意点

国内株式型商品の一部を解約し、元本確保型商品に移行することで、それがリスクヘッジとなり、パフォーマンスをある程度維持することができました。これが資産配分の醍醐味です。今までのトータルでの資金の配分は、元本確保型34%、バランス型26%、国内株式型36%、海外株式型4%です。

株式型を含めた配分にしないと年金は増えない

話を戻しますが、お二人とも共通しているのは、確定拠出年金でまったくリスクを取らずにお金を増やそうとしているところです。「何も考えずやらされた」が現実でしょうが、これからインフレに向かう中で、元本確保型(定期預金など)のリスクも考えておかないと大変なことになります。これでは銀行の普通預金と同じく、インフレ時の物価上昇で生活費が増えるのでお金が足りなくなります。老後のために準備したお金が、ご自身が老後を迎えるときに、今と同じ価値を持たないかもしれません。特に解約ができないiDeCoにあって、年金受給開始時の景気はわかるわけがありません。これこそ最大のリスクですね。

また、定期預金などの預金は預金保険制度により、一金融機関につき預金者1人当たり元本1000万円までとその利息しか保護されません。これには確定拠出年金制度も含まれますので注意下さい。(金融機関に確定拠出年金制度以外の預金がある場合は、預金が優先的に保護されます)

企業型確定拠出年金で11年間も定期預金をしていれば、元本とわずかな利息だけでは口座管理などの手数料で相殺され、増えるわけがありません。11年前は株安でしたから、国内株式型も含めて運用していれば、もしかしたら100%のプラスもあったかもしれません。一方、個人型のiDeCoは掛金の所得控除で年末調整での恩恵があったかもしれませんが、そのお金を何に使ったか覚えていますか? これからのインフレに伴い、少しでも株式型を含めたアセットアロケーションにしておかないといっこうにお金は増えませんよ、と言っておきます。

どちらにしても、確定拠出年金のアセットアロケーションは株式型などでリスクを取って、たまには配分変更も考えましょう。解約ができない企業型確定拠出年金やiDeCoだからこそ、「ほったらかしながらもたまにメンテナンスもする」のが絶対必要なことなのです。

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