連続増配企業は、資金調達などの財務面でも優れている
さて、かいつまんでではありますが、配当貴族の構成銘柄をいくつか挙げてみました。業種と申しますか、業界に偏りが無いことが分かります。つまり、指数としての配当貴族は分散投資が実現できている、といえそうです。
企業が毎年、株主に配当金を支払い続けるためには、少なくとも毎年の業績が安定的に伸びていなくてはなりません。
加えて、会社が保有する現金の額も安定している必要があります。言うまでもありませんが、配当金は現金での支払いです。
そして、配当の時期も決まっています。つまり、決まった時期に潤沢な現金を準備していないと、連続増配が実現しません。今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、資金繰りに行き詰っているようでは、連続増配はおぼつかないでしょう。
また、50年以上の長きにわたり連続して増配を実現しているということは、オイルショックやベトナム戦争、ITバブル崩壊、リーマン・ショックなど、数々の難局を乗り切ってきた「歴史」があるということです。配当貴族に投資することで、あるいは、将来の「歴史」の目撃者の1人になれるかもしれません。
連続増配を長きにわたって実現している企業は、資金調達などの財務面においても優れている、と評価できそうです。
安定的な成長軌道に乗った企業の集まり
1975年の創業以来、2004年までの長きにわたり「配当しない会社」として名を馳せていたのが、かのマイクロソフトです。
そして、この新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要で、その名をますます世界に響き渡らせているアマゾン・ドット・コムですが、同社も株主に配当金を支払っていません(余談ですが、アマゾンはNYダウの構成銘柄にも採用されていません)。
これらは株主に配当金を支払わない、すなわち株主に還元しない企業です。しかし配当金を払わずに内部留保を厚くすることで、「M&Aや人材獲得、設備投資を機敏に行えるように原資を確保する」ということです。
確かに、融資・社債発行・株式発行など外部資金を調達する手間・時間・コストを踏まえると、内部留保を取り崩して資金を調達する方がスムーズですし、よりスピーディでしょう。配当金として投資家に還元するということは、企業の成長に必要な原資を流出させているとも言い換えられるのです。
配当貴族の構成銘柄は、かつてのマイクロソフトや今のアマゾンのような、大きな飛躍(に伴う株価上昇)は期待できない一方、安定的な成長軌道に乗った企業の集まりと考えられそうです。
為替変動リスクや取引時間に注意
さて、私たち日本人が配当貴族に投資する上での留意点がいくつかあります。
私たちは日本円を使って生活していますから、配当貴族に投資するとなれば、「株価変動リスク」に加えて「為替変動リスク」もとることになります。また私たちが夜、休んでいる間、彼の地は昼間であり、取引が行われている点にも留意したいところです。
なお、配当貴族への投資は公募投資信託(以下、ファンド)とETFのどちらでも可能ですが、ETFの方は1日の出来高が少ないのが気に掛かります。
まとめに代えて
配当貴族も株式指数、すなわちインデックスの1つです。
しかし本稿をご覧になられて、配当貴族がインデックスファンドの1つだということをお忘れになられていたとしても、不思議ではありませんね。そもそも配当貴族という響きがインデックスらしくなく、アクティブファンドかと見紛ってしまいます。が、そのパフォーマンスも実はNYダウよりも優れている、まさにフェイクミートみたいなインデックスなのです。
(次回は12月21日を予定しています)