金融リテラシーの向上に役立ちそうな本や映画を紹介する短期集中連載。今回はMonJa編集部員の珍念、まわたと、新人編集者「黒部の現場監督」の3人のおすすめを紹介します。これを読めば2021年の金運・投資運アップは間違いなし!?
おすすめ本①『ゴルフトーナメントスポンサー興亡史』
MonJa編集部・珍念のおすすめ本
日本のゴルフ興隆の地である霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市)で1957年に行われた試合が火付け役となり、日本に一大ゴルフブームが到来した。70年代にはビッグトーナメント全盛期を迎え、スポンサーにはタイヤメーカー(住友ゴム)、自動車(三菱自動車)、カード会社(三井住友)などが参入。バブル崩壊後はパチンコ・不動産など新興が勢いを増した。
『黒い看護婦』『同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録』『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』など、経済や政治の暗部に深く食い込む作品で人気のノンフィクション作家の森功が、プロゴルフのスポンサー企業の移り変わりを辿り、戦後経済の盛衰を浮き彫りにする。
長期目線での銘柄選びの参考になるかも
「ゴルフトーナメントの冠スポンサーは時代とともに顔ぶれが変わります。タイヤメーカー、自動車、スポーツメーカー、カード会社、ハイテク電子、パチンコ・ゲーム業者、不動産、健康食品、就職・転職情報、アパレル……etc。特に新規参入組の企業には、①今は会社の認知度は低いが、商品・サービスの競争力は高い②これから伸びる業界のリーディングカンパニー、といった傾向があります。例えば、長期目線の株式投資の銘柄選びでの参考にすると面白いかもしれません」(編集部・珍念)
最近、ゴルフ場に若いお客さんが増えているというニュースを目にしました。プロゴルファーも、特に女子プロは20代前半の若い選手が台頭しています。ゴルフのプレイヤーやファンが若くなれば、スポンサー企業の顔ぶれも変わってきそうですね。
おすすめ本②『ファスト&スロー』
MonJa編集部・黒部の現場監督のおすすめ本
ノーベル経済学賞を受賞した心理学者による行動経済学の世界的ベストセラー。
整理整頓好きの青年が図書館司書である確率は高い? 30ドルを確実にもらうか、80%の確率で45ドルの方がよいか? はたしてあなたは合理的に正しい判断を行っているか、本書の設問はそれを意識するきっかけとなる。人が判断エラーに陥るパターンや理由を、行動経済学・認知心理学的実験で徹底解明。心理学者にしてノーベル経済学賞受賞の著者が、幸福の感じ方から投資家・起業家の心理までわかりやすく伝える。
〈黒部の現場監督プロフィール〉
毎週金曜日、スーパー銭湯で一週間の疲れを癒す20代男性。東京育ち。用もないのに羽田空港までドライブするのが趣味。オーロラを見るために2回も北欧に長期滞在したものの、星空すら見られなかった強運の持ち主。取材中、「リスクヘッジなし」の言葉を見るとわくわくする。
合理的な投資判断を妨げるトラップ
「この本が扱うテーマは、“我々の意思決定はどのようになされているのか”だ。投資はさまざまな要素を勘案して、合理的な判断を下さないとただのギャンブルに成り下がってしまう。だから皆“賢い”判断をしようとするが、人間の合理的判断にはさまざまな罠(トラップ)がしかけてあり、そこにはまると気が付かぬうちに非合理的な判断を下してしまうことがある」
「本書では、そうしたトラップがどこで、なぜ発動するのかを解説する。投資をギャンブルにしないためにも、本書でトラップの在りかを把握しておくのが賢明だろう。『この本絶対買う!』と心に誓ったそこのあなた、その判断は本当に合理的?」(編集部・黒部の現場監督)
私(MonJa編集長)も、過去に銀や原油の先物取引で「合理的判断の罠」のために損切りせず深入りして、痛い目にあったことがあります。もっと早くこの本に出会うことができたら、あんな悲惨なことにはならなかったかもしれません……。
おすすめ本③『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』
MonJa編集部・まわたのおすすめ本
10億分の1秒の時間差を利用して巨額の利ザヤをかせぐ超高速取引業者「フラッシュ・ボーイズ」。彼らの姿を、ウォール・ストリートの二軍投資銀行に務めるブラッド・カツヤマらが調査に乗り出し、その巨大な詐欺を無効にする自らの取引所を立ち上げる。金融ノンフィクションの金字塔『ライヤーズ・ポーカー』をはじめ、『マネーボール』『世紀の空売り』などで人気のマイケル・ルイスによる、巨大システムの詐欺と実態を暴いた傑作ノンフィクション!
生身の人間には関与できないディープな株式投資の世界
「この本を読んで初めて知ったのですが、世の中には超高性能のコンピューターを使い、1秒間に数千回もの高頻度で取引をする投資スタイル(HFT; High Frequency Trading)があるそうです。もちろん人間が操作しているわけではなく、アルゴリズムが相場を見て勝手に判断し、自動でものすごい量の注文を出し続けるという……まるでSFみたいな話ですが、おそらく今この瞬間もどこかの取引所で行われている、現実の話です」
「こうしたHFTを行う業者は沢山あり、Wikipediaには“米国市場においては2008年~2012年において取引高の50%以上が高頻度取引によるもの”なんて記述も。こうなってくると、HFT業者はライバルに負けないよう1ミリ秒(=0.001秒)でも早く注文を通す必要があります」
「そのためHFT業者は、証券取引所までつながる長大な通信ケーブルを大枚はたいて作ったり、取引所のサーバーに少しでも近い場所に自社のサーバーを設置しようとしたり……高度な取引スタイルに反して、拍子抜けするほどアナログな対応策には思わず笑ってしまいました」
「この本を読むと、短期投資に人間の入る余地はないということがよくわかります。『世の中にはこんな高度な技術があるのか~』と好奇心が満たされると同時に、『投資するなら中長期で、じっくりホールドする王道のスタイルが良さそう』とあらためて納得させられる1冊でした」(編集部・まわた)
新型コロナウイルスの流行が始まったときに、一時的に株価が大きく下がったのもHFTが一因だと指摘されています。株式市場の裏側でどんなことが行われているかを知っておくと、いつか役に立つかもしれませんね。