新年度に入り、これまで企業に所属をして積み上げてきたスキルや経験を生かして、フリーランスとして活動したいと考え始めた人もいるかもしれません。独立をした場合、会社員時代とは受けられる保障が変わる可能性も。今回はフリーランス・個人事業主の保険選びについて見ていきましょう。
- 健保から国保に切り変えると、一部の保障が国から受けられなくなることも
- 民間保険を活用して自助努力で備える。まずは医療保険と就業不能保険を検討
- 仕事上のトラブルに備えて弁護士保険も検討しておくと安心
会社員時代とは受けられる公的保障が異なる場合も
これまで会社員として働いてきた方がフリーランスや個人事業主になると、協会けんぽなどの健康保険(以下、健保)から国民健康保険(以下、国保)へ切り替えることになるでしょう。
健保から国保へ切り替えをしても、医療費の自己負担が1~3割である点や、1カ月の医療費が自己負担限度額以上となった場合に、高額療養費制度で払い戻しを受けられる点に変わりはありません。しかし、一部の保障が国保では受けられなくなることをご存知でしょうか。
代表的なものとして挙げられるのが、傷病手当金と出産手当金です。簡単に説明をしますと、傷病手当金は病気やケガで働けない日が一定日数続いた場合に、出産手当金は出産日・出産予定日いずれかを基準とした一定日数の範囲で、それぞれ休んだ期間分の給付金を受け取れる制度です。
どちらも標準報酬月額の3分の2程度を受け取れますが、国保加入者は原則として対象外となっています。
また、失業時や育児休業時などに給付金を受け取れる雇用保険や、勤務や通勤時にケガをした場合に保障を受けられる労災保険へも、個人事業主本人は基本的に加入できません。
会社員時代には公的に保障されていたことを、フリーランスや個人事業主は自分で備えておかなくてはいけません。
公的保障で補えない部分は民間保険で自助を
備えの方法の一つが、民間保険の活用です。フリーランスや個人事業主として働き始めてすぐの場合、まとまったお金の準備が難しいことも少なくありません。「貯金は三角、保険は四角」という言葉があるように、貯金が溜まるまでは一定の期間が必要です。最初からまとまった保障を得られる民間保険での自助を考えてみましょう。
まずは検討しておきたいのが、医療保険と就業不能保険です。
医療保険は、病気やケガでの入院・手術に備えられる保険です。医療保険では、感染症や骨折など所定の病気やケガで入院や手術を受けた場合に、申し込み時に設定した入院日額をベースに給付金を受け取れるものが一般的です。
国保の3割負担や高額療養費制度の活用で医療費を抑えることは可能です。しかし、差額ベッド代や食事代、先進医療に係る費用など、全額自己負担しなくてはいけない費用もあります。医療保険で大きな費用負担を補えれば、安心して療養に専念できそうです。
また、多くの場合正常分娩での入院は保障対象外ですが、緊急帝王切開など異常分娩に該当するケースであれば保障対象となる可能性があります。出産を希望する女性の場合、出産時の思いがけないトラブルで入院が長引くことも考えて、費用の準備をしておけると安心ですね。
次に、所定の就業不能状態となった際の収入減少に備えられるのが、就業不能保険です。フリーランスや個人事業主の場合、病気やケガで療養が長期間に渡った場合、その影響がダイレクトに収入減少へつながることもあります。突然の病気やケガに見舞われるリスクも考えておくと良いでしょう。
ただし、「受けられるはずの仕事が受けられなくて収入が減った」などのケースを保障する保険ではありませんので、その点はご留意ください。
保険商品名 | 保険会社 | 保険種類 | ここがポイント! |
---|---|---|---|
医療保険 EVER Prime |
アフラック | 医療保険 (終身) |
日帰り入院を含む5日以内の入院でもまとめて 10日分の給付金を、3年ごとに健康祝金として 入院給付金日額の5倍を受け取れる |
じぶんへの保険3 | ライフネット 生命 |
医療保険 (終身) |
日帰り入院を含む5日以内の入院でも、まとめて 5日分の給付金を受け取れる、また入院と手術 のみのシンプルなコースも選べる |
病気やケガで働けな くなったときの 給与 サポート保険 |
アフラック | 就業不能保険 | 給付金の受け取りが発生しないで満期を迎える と、長期給付無事故支払金を受け取れる |
働く人のたより | SBI生命 | 就業不能保険 | リスクに合わせて、全疾病型・3疾病型・がん 保障型の3つから選択できる |
※ここでは保険商品の概要をご紹介しています。詳細は、保険会社のサイトやパンフレットなどを必ずご確認ください。
仕事上のトラブルに自分で備えるための保険はある?
個人で仕事をするとなると、仕事上のトラブルも心配の種です。2020年に公表された内閣府の「フリーランス実態調査結果」によると、回答者の37.7%が取引先とのトラブルを経験したといいます。自分で対応をして穏便に解決できれば良いですが、トラブル対応が長引けば、仕事だけでなく日常生活に支障が出ることもあるでしょう。
法的なトラブルの場合、専門家である弁護士に頼ることができれば心強いですが、大きな費用負担が必要になる可能性もあります。そんな時には、事業主向けの弁護士保険に加入しておけば、負担の軽減を図れそうです。
月々の保険料負担はありますが、それを上回るメリットがあると感じられた場合には、検討してみるのも手です。
保険商品名 | 保険会社 | 保険種類 | ここがポイント! |
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弁護士保険 コモンBiz+ |
エール 少額短期保険 |
弁護士保険 | 契約書や内容証明郵便の内容を弁護士に相談できる付帯 サービスが1事案1時間利用できる |
事業者のミカタ | ミカタ 少額短期保険 |
弁護士保険 | 顧問弁護士のいる人向けに、法律相談を不担保にした プランも用意している |
※ここでは保険商品の概要をご紹介しています。詳細は、保険会社のサイトやパンフレットなどを必ずご確認ください。
フリーランス・個人事業主をサポートする制度や団体も要チェック
この他にも、フリーランスや個人事業主をサポートしようという動きがあります。
例えば厚生労働省の「フリーランス・トラブル110番」では、フリーランスや個人事業主がトラブルに見舞われた時に無料で弁護士に相談をできる仕組みを提供しています。また、「フリーランス協会」のように、賠償責任保険など、フリーランス・個人事業主向けサービスをまとめて用意している団体もあります。
ここで挙げた他にも、いろいろな保険や制度がありますので、フリーランスや個人事業主として活動を始めたいと思う場合は、ぜひ調べてみてくださいね。