医療保険には、さまざまな保障があります。その中のひとつが、先進医療保障です。先進医療保障は、医療保険のパンフレットなどを見ると「高額な治療に備えられる」と紹介されていることが多いものです。今回はその内容について詳しく見てみましょう。

がんの先進医療だと300万円超えも!

先進医療とは、厚生労働大臣が定める医療技術のことを言います。高度な医療技術であるため、どこの病院でも受けられるというものではなく、先進医療を適切に実施できると認められた病院でしか受けることができません。また、その医療技術を使用できる病気も決められています。

この先進医療に係る費用はすべて自己負担となり、健康保険や高額療養費制度の適用対象外となります。

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例えば、ある病気の治療を受けた際、医療費の総額が100万円、そのうち20万円が先進医療に係る費用だったとします。そうすると80万円は健康保険が適用されて3割負担、その3割負担分にも高額療養費制度が適用されてさらに費用は抑えられますが、先進医療に係る費用の20万円は全額負担しなくてはいけないのです。

【図表1】例:総医療費が100万円、先進医療に係る費用が20万円だった場合
【図表1】例:総医療費が100万円、先進医療に係る費用が20万円だった場合
出所:厚生労働省「先進医療の概要について」を基に作成

さらに、上記例では20万円としましたが、先進医療は種類によって医療費が高額となる可能性もあります。

厚労省のデータを基に先進医療1件あたりの先進医療費を見てみると、がんの治療で用いられる重粒子線治療は約308万円、同じくがんの治療で用いられる陽子線治療は約269万円、白内障の治療で用いられる多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は約67万円となります。

【図表2】先進医療でかかる費用の例

技術名 1件当たり
費用
先進医療
総額(円)
年間実施
件数(件)
重粒子線治療 約308万円 2,224,327,000 720
陽子線治療 約269万円 3,493,466,780 1,295
多焦点眼内レンズを
用いた水晶体再建術
約67万円 22,979,323,917 33,868

出所:厚生労働省「第81回先進医療会議 令和元年度先進医療技術の実績報告等について」令和元年6月30日時点における先進医療Aに係る費用より算出および抜粋

このように、1件あたりの費用が高額になる場合もあります。そうすると医療保険の入院や手術についての保障だけでは、先進医療を受けた際の費用をまかなうことは難しい可能性もあるのです。そこで活躍するのが、先進医療保障です。

数百円で大きな保障を準備できる先進医療保障とは?

先進医療保障とは文字どおり、上記のような先進医療を受けた場合に備える保障です。

先進医療を受けた際にかかった技術料と同額あるいは上限額までを、保険期間中、通算で2,000万円まで保障するというものが一般的なようです。保険料で見ると、月々数十円~数百円というものが多く、ジュース1本分程度の負担で大きな保障を準備できるというのはメリットかもしれませんね。

また、これまでの先進医療保障では、技術料の保障のみが用意されていたためどの保険会社で先進医療保障をつけても大きな違いはありませんでしたが、最近ではプラスの保障があるものも増えてきました。先進医療を受けた場合に見舞金として10万円などまとまった一時金を受け取れるものや、先進医療を受ける際にかかった交通費・宿泊費が受け取れるものなどが現在販売されています。

医療保険の加入や見直しを検討されている場合、この先進医療保障の内容についても確認すると良いかもしれませんね。

知っておきたい先進医療保障の注意点

頼りになりそうな先進医療保障ですが、注意点もいくつかあります。責任開始日から一定期間は特定の技術について保障の対象とならないものもあるため、保険に入ってすぐ先進医療を受けた場合、給付金が受け取れない可能性もあるでしょう。

また、医療保険だけでなく、がん保険にも先進医療保障が付いたものもあります。しかし、がんの治療で先進医療を受けたときのみ保障されるなど、医療保険に付いている先進医療保障より範囲が狭くなる場合があります。先進医療保障は、同じ保険会社で重複して加入はできません。もし同じ保険会社の医療保険とがん保険に加入する場合は、どちらに先進医療保障を付けるか、保障範囲を確認して決めるようにすると安心です。

さらに、先進医療と定められている技術は定期的に見直しをされているため、これまで先進医療ではなかった技術が追加されることも、反対に外されることもあります。先進医療でかかる費用の例で紹介した多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術もそのひとつで、2020年度より先進医療から外れることが決まったそうです。昨日と今日でその治療が保障範囲に入るかどうかが変わる、ということもあり得ます。先進医療を受ける予定がある場合は、こうした変更を確認しておくと、保障を活用し損ねることも避けられるかもしれませんね。

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