豊かな人生とは何をもって言うか、その指標はお金だけでしょうか? ビジネスを成功させた人に聞くと「人に恵まれた」エピソードが必ず語られます。コロナ禍を体験し、先が見えない世の中だからこそ「人と繋がる」ことの大切さが身に沁みます。“人”という字が支え合っているように、人と出会って何を学んでいくかは、人生において大切な自己投資になります。この連載では、専門知識や経験に秀でたスペシャリストの視点で、豊かな生き方の極意を語ってもらいます。第5回のテーマは、ズバリ! 婚活。21世紀のハイパー仲人として活躍する村田弘子さんに、「婚活によって人生を切り拓く極意」をお聞きしました。(聞き手=さらだたまこ)
村田 弘子(むらた ひろこ)さん
株式会社しあわせ相談倶楽部 代表取締役
(一社)良家の結婚相談士協会 代表理事
創業70年の会計事務所の2代目に嫁ぎ、自身で結婚による事業承継、家督承継を経験。ある会計事務所の顧問先から、「私たちはあなたのお父さんの紹介で結婚したのよ。うちは女の子だけでしょ。会社を継いでくれるお婿さんはいないかしら?」と頼まれたことをきっかけに、事業承継、家督承継婚活の支援を始める。
自身が嫁いだ経験に基づいたサポートが評判に。問い合わせが相次ぎ、2012年、事業を本格的にスタート。主に、医師・士業・オーナー企業の経営者の縁談を中心に、企業と家族の歴史をしっかりと次世代の世の中につなげることをライフワークとしている。
コロナ禍で結婚願望がヒートアップ
今回の自己投資のテーマは婚活。婚活とは「結婚活動」を略した造語で、社会学者の山田昌弘(現・中央大学)教授が2007年に提唱した言葉です。
生涯の伴侶を得る婚活。
しかしながら、その実りは長きに渡って停滞、マイナス傾向にありました。
それは国立社会保障・人口問題研究所のHPに数字で示されています。18歳以上50歳未満の全ての独身者を対象に「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」を15年に実施した結果報告によると、「交際相手をもたない未婚者は男性69.8%、女性59.1%」で、数字は調査の度に増加傾向にあるとのこと。
つまり、独身者の半数以上に彼氏、彼女がいないのです。
一方、同研究所の同年に行った50歳未満の既婚女性を対象にした調査では「子ども数の平均値は1.94人」で、こちらは年々減少しているのです。
これが、世に言う「日本の未婚化・少子化」の根拠となる具体的な数字です(※次回調査は今年度中に行われるとのこと)。
数字だけ見ると、結婚生活に関心が薄れているかのようです。ところが、同じ調査で「いずれは結婚しようと考える未婚者の割合は、男性85.7%、女性89.3%」で、独身者の結婚願望はむしろ高いんですね。
さらに、同調査では「子育てや教育にお金をかけることができたら、子どもを2人以上持ちたい」「いわゆる高齢出産といわれる前に子どもを産みたい」という女性の本音も引き出しています。
いいかえれば、若いうちから経済的な条件が整った相手と巡り会えたら結婚したいというのが、女性の本音なのです。しかし、その理想を叶える相手がなかなかみつからないうちに、女性は婚期を逃してしまうというわけです。
ただし、コロナ禍で婚活傾向に変化が! リアルな出逢いが難しくなった状況では、むしろ婚活は活発化しているといいます。
それは筆者も実感しています。長く独身生活を貫いていた仕事仲間が、このコロナ禍に次々と結婚しています。ひとことでいえば、コロナ禍での長引く“新しい生活様式”が結婚観を変えたようです。
では、具体的にどう変わったのか? 現代の婚活について詳しい婚活カウンセラー、しあわせ相談倶楽部の村田弘子さんにお話を伺いました。
村田さんは、世の中IT化が進み、AIの精度が上がってDX推進の時代になっても、昔ながらの顔が見える仲人の良さを発揮して、今の時代を生きる男女のニーズに適った婚活をとことんサポートするというハイパー仲人さん。
生涯の伴侶を得る婚活は、人生において大切な自己投資といえます。その極意はいかに!?
「家庭的な理想の花嫁」がモテなくなったワケ
「コロナ禍で結婚願望が高まり、積極的にお見合いをしようとする人が増えている」と、村田さんも実感しているといいます。
その理由を「コロナ禍で人と出逢う機会が激減したのと、先が見えない未来に備えて地に足がついた人生設計をしたい」と考えるようになったこと。それも、若い20代の女性、30代の男性に顕著に見られる傾向だそうです。
「婚活において30代前半の男性は人気があり、これまでは焦らなくても引く手あまたでしたが、30代前半の男性が結婚を真剣に考えることによって、理想の結婚相手像にも変化が見られる」と村田さん。
かつて男性が「お嫁さんにしたい女性」というのは、家事全般に長けて家庭をしっかり守ってくれて、常に一歩か三歩下がって「僕について来てくれる女性」だったはず。
「今も理想の花嫁像をそのように描いて、花嫁修業されている女性はいますけど、残念ながら、今どきの婚活では人気があるとはいえないのです」と村田さん。
実際、30代の独身男性の多くは「料理や家事は僕にもできますから」と、それよりも、生活力のある結婚相手を求めるのだとか。「コロナ禍を体験して、順調だった仕事もいつ失うかわからない。そんな状況でも、一緒に乗り越えていけるたくましさを結婚相手に求めているんです」と村田さん。
要は、結婚後も仕事を辞めない伴侶とのダブルインカムを男性は望んでいるのです。
仕事を続けるか、あるいは家庭に入っても趣味を活かした副業ビジネスに積極的に取り組めるなど、攻めの女性は婚活に有利だといえるでしょう。
いやはや、時代は変わりましたね。筆者が20代の頃(昭和でしたが)、「女が仕事して稼ぐと婚期を逃す」と当たり前のようにいわれましたけど……。
今どきは、家事も育児も夫婦分担で、女性だけがワンオペ家事&育児でストレスを抱えることからは解放される……いい傾向です。現に、筆者の周りでも、家事&育児をしっかり分担している若いパパさんは何人もいます!
村田さんは「コロナ禍で女性の意識も変わった」といいます。「婚活において多くの女性が相手に求める条件に、年収の高さが第一にあったのですが、年収の高さが保障されない現実を踏まえて、年収にこだわると婚活に失敗することがわかってきたのです」と。
確かに、いくら稼ぐかよりも、そもそも働くことへの意欲や、物事への取り組む姿勢、フレキシブルに時代に対応できる柔軟さなどが問われるなあとつくづく思います。
「以前は、男性の婚活がうまくいかないのは、女性が望むような高収入ではないことがネックになっていたのですが、コロナ禍を経験したことで、収入がネックで結婚のチャンスがなかった男性にも望みが出てきました」と村田さん。
たとえば、バリバリ仕事をするキャリア指向の女性は、自分自身で頑張って高収入を得られるようになれば相手の収入の高い低いは、さほど気にならないものです。
そりゃあ、多いに越したことはないですが、高めたいのは収入ではなく、結婚によって芽生える新たな意識の高さが重要かなと思います。
互いに切磋琢磨して、心地よい家庭をどう営むか? 結婚によって、より豊かな人生のビジョンを明確に描けることが大切かと思うのです。
豊かさはお金だけではないです。やりたい仕事を続けたり、新たなビジネスを展開したり、そして子育てもスクスク、のびのびと!
結婚を決意するまでのデートにおいて、この人となら人生のビジョンを明確に描け、実現できる相手かどうかを、しっかり見極めることが求められます。
マッチングアプリで理想の相手を探す精度もかなり上がっている昨今ですが、焦って見落としがないように……。そこは、村田さんのようなハイパー仲人さんの経験と知見に、頼ってみるのも良いのではないでしょうか?