本連載では、税理士に寄せられた相談者からの質問をもとに、主に「おひとりさま」の相続に関するさまざまな疑問に答えていきます。第12回は、離婚したおひとりさまが、生命保険の死亡保険金をどのように扱えばいいかを考えます。

マイナンバーの普及で離婚が増える?

厚生労働省が発表している「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況 PDF」によると、令和2年の人口千人当たりの婚姻数4.3に対して、離婚数は1.57となっています。これを離婚率がピークであった平成14年(2003)と比べると、この年の婚姻数は6.0、離婚数は2.3ですから、婚姻数は△1.7、離婚数△0.73となります。
そもそも結婚する人が減っているのだから、離婚する人も減って当たり前の感じがしますね。

しかし、今後「マイナンバー制度」の普及により離婚数は増加すると予測されています。
「マイナンバー制度」と「離婚」、一見あまり関係がなさそうに見えますが、さてなぜマイナンバー制度が普及すると離婚数が増えてしまうのでしょう?

実は、政府は婚姻や離婚といった公的な書類の提出も、マイナンバー制度を普及させてネット上のみで完結できる仕組みを目論んでいます。今まで離婚のハードルの一つであった「夫婦ともに一つの離婚届に記入をして、役所に届け出る」という作業がなくなってしまうのです。
「事実婚」ならぬ「事実離婚」、つまりもう何年も別居状態にあるけれど、相手と話をして書類を書き役所に届け出るのが面倒でそのまま籍を入れている仮面夫婦も、スマホで離婚が成立するならば、両者はすんなり「ポチッ」としてしまうのかもしれません。

いずれにせよ、離婚は公的な手続きだけでなく、個人のライフスタイル、未来設計が大きく変わる転機ですから、離婚を機にやらなければならない諸手続きはたくさん出てきます。

今回はそんな問題の一つ、「生命保険」についてのお話です。

死亡保険金の受取人は変更可能

Q.
元妻と離婚をして10年になりますが、先日引っ越しの準備のため古い書類の整理をしていたら、元妻と結婚時に加入した生命保険証書が出てきました。そこで、自分の死亡保険の受取人が元妻のままになっていることがわかりました。
このままでいると、私の死亡保険金は元妻が取得することになるのでしょうか?
また私には子供がいないため、慕ってくれる兄の息子に死亡保険金の受取人を変えようと思います。可能でしょうか?

MonJa読者アンケート

A.
死亡保険の受取人は、契約者と被保険者の両方が自分なら、自由に変更できます。
ただし、受取人に選べるのは通常は2親等まで。甥を受取人にする場合は保険会社の承認が必要となります。

離婚した妻でも、死亡保険金の受取は可能です。
たとえ離婚した妻であっても保険受取人としての変更がなければ、元妻がその保険金を受け取る請求をすれば、保険会社はそのまま元妻に死亡保険金を支払うことになります。

元妻が先に亡くなっていた場合、死亡保険金は国に没収されてしまうのでは?と心配される方もおられるかもしれませんが、保険会社は保険支払の請求に応じて初めて支払の手続きに入ります。国が保険金の受取請求をすることはないため、国に没収されることはありません。

ご質問の方が、生命保険の契約者、被保険者の両方ともご自分であれば、受取人の変更は契約時の受取人(今回の場合は元妻)に了承を取る必要がなく、自由に何度でも行えます。ちなみに遺言書で変更することも可能です。

甥は3親等なので受取人に指定できない可能性

問題は、死亡保険金の受取人を「兄の息子(甥っ子)」に変更できるかどうかです。

通常は、生命保険の受取人の範囲には制限があり、「配偶者または2親等以内の血族」とされています。2親等以内の血族とは、具体的には祖父母、父母、子供、孫、兄弟姉妹となり、兄弟の息子である甥っ子は含まれません。
ただし、2親等以内の血族がすでにいない場合は、3親等に当たる「甥」や「姪」が保険金を受け取ることも可能ですが、他に親族がいないなどの理由を保険会社に説明し、承認されなければ保険金を支払ってもらうことはできません。

それでは、どうすれば確実に兄の息子に保険金の受取人にすることができるでしょうか?

一番確実なのは、甥を養子とすることです。養子縁組をした養子は「法定血族=法的な親子関係にある」とみなされるためです。

死亡保険は本当に必要? 保険料も考えて生命保険を見直す

しかし、その前に考える必要があります。
通常の死亡保険には、「定期保険」と「終身保険」の2種類があります。定期保険は、契約者=被保険者が一定の年齢を過ぎると受取額がガクンと減額、またはゼロとなります。一方、終身保険はその方が亡くなるまでずっと同額の保証が続きます。終身保険は定期保険に比べ保険料がかなり割高となっていますし、保険料の支払期間も長く設定されており、年金生活者になってからも保険料の支払いが続く場合があります。

「人生100年時代」を考えた時、ご自分が亡くなってしまった後、そもそも本当にその保険金が必要なのか、また保険料の支払いをこの先ずっと継続できるのかをよく考えたうえで保険の見直しを検討することも、おひとりさまにとっては大切な選択肢となります。

例えば死亡保険を少なくして通院・入院などに手厚く保証があるタイプのものに変更したり、介護保険に重きを置く保険に切り替えたりと、この機会に生命保険について整理をしてみてはいかがでしょうか?