「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、株式を選ぶための重要な指標のひとつ、「配当利回り」について考えます。
- 株式の配当利回りは預金金利に近いイメージ。配当利回りが5%を超える企業も多い
- 預金金利と違って配当金には保証がなく、株価によって配当利回りも変動する
- 配当利回りがゼロ%の企業は、成長力を秘めている可能性もある
東京都に緊急事態宣言が発令されてしまいましたね、4度目でしょうか。ワクチン接種も、ここにきてペースダウン。そして、オリンピックも無観客で開催することが決まったようです。本稿がUPされる頃には梅雨が明けていることを祈りつつ、書いていきますね。
超低金利時代の貯金は無意味?
若い方とお話をしていると「貯金なんて、考えたことがない!」という方がいらっしゃいます。
「貯金がないのは、不安では?」などと思いながらも、今ドキ、金融機関にお金を預けたとしても、その金利は0.002%というところもあります。この金利では、5万円以上を最低でも1年間、預金に入れなければ利息は付きません。ネットバンクでしたら、もっと金利が高いかも知れませんが、それでも昔のような金利は夢のまた夢。
この超低金利では金融機関にお金を預けるよりも、使ってしまった方が有意義かもしれません。が、さりとて、貯金ゼロというのも、不安ではないでしょうかね?
こんなご時勢ですと、個人向け国債の金利0.05%が魅力的に見えてしまいますね。先ほどの0.002%の金利に比べ、25倍もの金利を誇ります。いずれにせよ、何にせよ、遠くなってしまった昭和の定額貯金や養老保険をご存知の方には、何とも寂しいお話ですよね。
預金金利のイメージに近い、株式の「配当利回り」
ところで、「配当利回り」という言葉をご存知でしょうか?
株式を保有している人、つまり株主には、企業から配当金が支払われます。配当金を支払う企業の株式を「権利確定日」に保有していれば、株主は配当金支払い日に配当金を受け取ることができます。
配当利回り(%)は、「1株当たりの配当金÷株価×100」で計算することができます。
株式投資の配当金は、預金の利子と同じ、「インカムゲイン」と呼ばれる収益に当たります。そして、株価は株式を入手するための元本です。
つまり配当利回りとは、株式を入手した元本に対し、配当金がその何パーセントか、ということです。
預金の金利も「預金元本に対して、何パーセントの利息を付けてもらえるのか」という意味ですから、配当利回りは、預金の金利に近いイメージと言えるかもしれません。どちらも、同じインカムゲインですからね。ですので、配当利回りの高い株式を選んで投資するというのもありだと思います。
「配当利回りが高い」と評価される株式の中には、配当利回りが5%を超える株式も多数あります。
日本の株式の場合、配当金の支払いは1年間に2回という場合が多いようです。ですので、配当金の支払い月が異なる株式を6社買えば、毎月、配当金を受け取ることも可能かも知れません。
配当利回り | 数 |
---|---|
8%以上 | 1社 |
8%未満~7%以上 | 0社 |
7%未満~6%以上 | 2社 |
6%未満~5%以上 | 36社 |
5%未満~4%以上 | 247社 |
・・・ | |
0.2%未満~0.1%以上 | 11社 |
0.1%未満 | 4社 |
2020年7月9日現在、配当利回りは会社予想。
Yahoo!ファイナンスの配当利回りランキングを基に筆者作成
インカムゲイン、配当金と預金の違い
さて、同じインカムゲインといっても、預金の金利と配当金では、その性格が異なります。預金の金利は金融機関の店頭やホームページなどに表示されていて、預金者に約束されたものです。万が一、金融機関が破たんしたとしても、預金元本1,000万円までしたら、元本とともに、その利息も預金保険機構で保証されています。
しかし、配当金は一切の保証がありません。もともと配当金は企業が事業活動を通じて得た利益です。ですから、企業の利益がなければ、配当金がゼロになってしまうこともあり得ます。ゼロは極端だとしても、企業が挙げる利益というのは、約束もできなければ、毎年度、同じということもありません。ですので、配当金の金額が常に一定ということもないのが原則です。
だいぶ遠い記憶になってしまったかも知れませんが。かつて、「預金や国債の代わりに」配当利回りが比較的安定していた電力会社の株式に投資、保有していた高齢者が、東日本大震災で大きな影響を受けたことがありました。
株価と配当利回りの関係
ところで、毎年の配当金の金額に変化がなかったとしても、株価が下がってしまうと、逆に配当利回りは上がってしまいます。もちろん、株価が下落した理由にもよりますが、これから、その株式を買おうとしていた人にとっては望ましいことかもしれません。が、その株式を保有していた人にとっては「配当利回りが上がった」と素直に喜ぶことができるでしょうか?
また、逆に配当金の金額が上がったとしても、それ以上に株価が上がれば、配当利回りは下がってしまいます……。配当金の金額も株価も、ともに上がったのですから、以前から株式を保有していた株主としては喜ばしいことなのですが。
「配当利回りゼロ」は投資する価値もゼロ?
実は、そもそも配当金ゼロという株式も珍しくはありません。通信販売でおなじみの、海の向こうの大企業「アマゾン・ドット・コム」は、配当金はずっとゼロです。
日本でも配当金ゼロという株式があります。配当金ゼロということは、当然、配当利回りはゼロ%です。
では、配当利回りがゼロ%の株式は買う価値、投資する意味がないのでしょうか?
ある2020年12月決算の日本企業の財務を見ると、当期利益4,448百万円を挙げながら、配当金はゼロです。しかし、自己資本比率は80.5%と、(筆者目線では)極めて優秀な企業です。(前稿でも申し上げましたが、筆者は自己資本比率にも注目しています)
株主への配当に宛てられなかった当期利益は企業内部に積み立てられ、いわゆる自己資本になります。自己資本比率の高さは金融危機への抵抗力の高さでもありますし、設備投資や事業拡大のために外部からの資金調達に依存することもなく、内部の資金を活かしたスピーディーな展開も可能です。
配当金ゼロの企業は、成長する力を秘めているとも言うことができそうです。アマゾン・ドット・コムはほかの企業を買収するなどして、新しいサービスを増やしていますよね。このように、企業によっては配当金ゼロ、配当利回りゼロ%の代わりに、企業が成長力を秘めている、つまり株価UPの可能性を持っているかもしれない、という理解ができそうです。
配当利回りの高さで投資先を選ぶ時の留意点
企業が配当金の金額を決めるには、株主総会の決議が必要です。株主優待とは異なり、配当金には明確な根拠があるのです。
配当金には根拠があるという点も踏まえると、配当利回りの高さで投資先を選ぶのも一つの方法だと思います。しかし、配当利回りは預金の金利とは異なり、配当金には一切の保証がない点、株価の変動によって配当利回りが上がったり下がったりする点も、あわせて理解しておいた方が良いでしょう。
「超低金利の預金の代わりに」配当利回りの高い株式に投資をする場合は、配当金や株価に影響を与える社会情勢や決算の状況に目配りをする必要があると思います。