「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、企業の安全性を示すといわれる財務情報のひとつ、「自己資本比率」に注目してみます。

  • 一般論として、企業は「自己資本比率が高いほど安全性が高い」と言われる
  • 自己資本比率が高い企業は「借りて返した実績」がなく、融資の利用が難しい可能性
  • 日銀がマイナス金利を発表したとき、自己資本比率の低い企業の株価が上がった例も

皆さん、こんにちは。6月21日に緊急事態宣言が解除となった東京。新宿駅では人が増えました。中にはマスクをしていない人も。ワクチン接種を済ませたのでしょうか?

緊急事態宣言が解除になり、ワクチン接種が進む今日でも、やはり先行きへの不安は、何気に拭えません。先行きへの不安に、企業はどのように備えるのでしょうか?

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さて、投資先を選ぶに当たり、前々稿ではPBRという尺度について書かせていただきました。PBRを投資判断の目安にしておられる方は投資に慣れた方だと思われますが、「PBRという言葉は聞いたことがある」という方なら多くいらっしゃるでしょう。

PBRという投資尺度を活かした株式投資こそ王道?

しかし、投資先を選ぶに当たり、企業の「自己資本比率」をお気になさる方は、あまりいらっしゃらないと思います。

「自己資本」と「他人資本」

自己資本比率という言葉を聞いて、「簿記の教科書を思い出した!」と膝を打つ方は、学生さんか、経理をご担当されていらっしゃる方でしょうね。そうです、貸借対照表に載っている情報ですよね。

筆者は若かりし頃に勤めていた企業の親会社が自己資本比率にこだわっていたので。そのこだわりが、いまだに筆者に染み付いているようです。

さて、そもそも自己資本とは、読んで字のごとく「自分の資本」、つまり「返さなくてよい資本」ということになります。

この「返さなくてもよい資本」は、大きく分けて2つあります。1つは「株主資本」、つまり株式を発行して得た資本です。そしてもう1つが会社が事業で稼ぎ、積み上げてきた利益です。

逆に、社債や融資などで調達した資金は返済が必要ですから、他人資本とも言いますね。返す必要があるか否かで、自己資本と他人資本を分類します。ずいぶんと分かりやすい表現ですよね。

自己資本比率が高ければ高い方が良い?

簿記や経営学の教科書などではよく、「自己資本比率が50%を超えていれば、安全性が高い」と書かれているのではないでしょうか?

この「安全性」という言葉で思い起こされるのは、今ではもう10年を超える昔になってしまいましたが、リーマン・ショックです。

リーマン・ショックは、当時は「100年に1度の金融危機」とも言われていました。先述の他人資本の割合、特に融資の割合や額の多かった企業は、返済の繰上げを迫られたり、追加の融資を受けることが難しかったりしたようです。

自己資本比率が高ければ、文字通り、返す必要のない自己資本で会社を経営していくことができるでしょうから、資金調達などの財務面では、自己資本比率が高い企業の方がリーマン・ショックの影響が少なかったかも知れません。

それでは、例えば自己資本比率が100%の、いわば無借金経営なら、「無敵の貸借対照表」なのでしょうか?

バランスシート
貸借対照表(バランスシート)の右側の「自己資本」は、多ければ多いほどいいのか?

実は自己資本比率100%はリスクが高い?

人生の3つの坂の1つに「まさか」があるように、企業にも「まさか」がないとは言えません。その企業の「まさか」の時には、自己資本比率100%を誇る企業と言えども、一時的には融資が必要になることもあるかもしれません。

その「まさか」の時に、自己資本比率100%の企業は融資を利用することができるでしょうか? 融資を利用した経験のない企業は、金融機関との付き合いが浅く、また「借りて返した実績」がないため、「まさか」の時に、融資の利用が難しいともいわれています。

実際、リーマン・ショックの後には、自己資本比率100%を誇っていた中小企業が融資を利用することができず、破たんに追い込まれた企業もあった、という話を聞いたことがあります。

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