テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第27回は、映画や大衆演劇のプロデューサーなど多彩な顔を持つ脚本家の亀和夫さん。

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就職が嫌でフリーライターに。社会の裏表を知った

亀和夫亀和夫
脚本家
日本放送作家協会会員

放送作家のリレーエッセイとのことだが、作家とは名ばかりの自己紹介みたいなものになりそうだ。

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今年で63になった。どんな作品にたずさわってきたかと言えば、多種多様で、たいした作品は作っていない。
ディレクター、シナリオライター、脚本、作詞、小説、プロデューサー、別ネームもいくつかあり、いやはやである。

小学校も中学校も廃校になってしまったが、橋幸夫さんは中学の先輩で、神田伯山師匠は後輩になる。
巣鴨高校に通っていたが、猥雑な通り道が好きで、授業をさぼって文芸座地下で見た「けんかえれじい」がこの業界への憧れになったのは間違いない。

親元から離れたいばかりに大学は京都産業大学へ。映画研究部その他のかけもちだったが、産学協同路線のモデル校でもあったので、なぜか自治会は珍しく三島由紀夫研究会だの国防研究会だの、新右翼の連中が握っていた。
彼らとは表現の自由を巡って色々ドンパチもやったが、銭湯で顔をあわせたり、楽しい4年間だった。

ただ、人間的には、新右翼は嫌いじゃない。左翼、新左翼の連中の嫌らしさをたっぷり経験したからだ。
「祭りの準備」で竹下景子を誘惑する、うたごえ運動の指導者の輩のような手合が多く、革命の大義なんてものを男女のまぐあいがあっさり越えていくのを何度も見てきたからね。

トラリピインタビュー

映画制作のイメージ画像
大学時代は、京都産業大で映画制作に没頭した

さて、就職が嫌でフリーライターにいきなりなり、経済政治誌に月に3本ほどの記事を書けばよいみたいな契約だった。
ところが、そこのオーナーが大物総会屋だったというわけで、社会の裏表を知った。小生意気な学生気分の私をよく可愛がってくれ、たいていの遊びはこの時に覚えた。
この時の酔いどれ編集長とは今でも付き合いがある。
信じられないが某市の議長までやったのだから、政治の世界は、いや、人生はわからない。

年収も当時の大企業の新入社員の1.5倍はもらっていた。総会屋とはいえ、この大物はさすがに頭はキレキレで、4大銀行、4大証券の頭取や社長らとも丁々発止やっていたが、何故かこの頃のリーダー達はみな、石橋湛山の政権がもっと続けば、日本はもっと良くなっていただろうと高く評価していた。
確かに今の政治状況を見れば納得するが、人間、病には勝てないということだ。

映画・演劇求めて、横道それて

その後、数年して、フリーライターをやめ、学生時代にきわめられなかった映画・演劇を求めて師匠に弟子入りした。
芸能事務所の手伝いもさせられて、月に5万もらった。年収でいえば、5分の1ほどになった。

吉永小百合さんの歌謡映画を8本ほど書いていた師匠だが、弟子入りしたころは、映画作りの失敗で借金を抱えてライターはほとんどしていなかった。
系列で言えば、私、井手敏郎さんの孫弟子に当たるわけだが、あの軽妙洒脱さも技術もとうてい及ぶわけもなく、今に至っている。

5年ほどして師匠の事務所からも独立。そこからディレクター、放送作家として、めちゃくちゃ忙しい時期を過ごして、バブルもあり、稼ぎに稼ぎまくった。
疲労困憊の毎日だったが、弟子のころの軽く30倍近くか。あのときのお金はどこへいっちまったのか?

そのころかなあ、作家仲間のさらださん、井川さん、藤森さん、東さん、畠山さん、輿水さんらに遊んでもらったのは。そういえば、四万やまぐち館へ大衆演劇ショーを見に皆で大宴会旅行に行ったこともあったなあ。

大衆演劇のイメージ画像
バブルの時代、大衆演劇ショーを観るため、仲間たちと大宴会旅行をしたことも

飽きっぽいのか、その後も旅役者の興行や演劇祭を主催したり、日本舞踊や映画のプロデューサー、海外からミュージカルを招聘etc、様々なものに手を出し、今の生業がある。
来年秋には、新たにもう1本、映画を作る予定ですが、どうなることやら。コロナでそろそろ金欠病だ。
夢の印税生活のはずの人生設計がいやはや、いったいいつまで働けばいいのやら。

だから、書斎にこもってコツコツ書ける放送作家をリスペクトしている、本当に、マジに。
新人の皆さん、僕のように横道それずにPCに毎日向かってください。

以上、ワクチン1回打って、長崎は銅座の飲み屋からの戯れ言でした。

次回は、放送作家の野呂エイシロウさんへ、バトンタッチ!

宣伝と今後の予定などを、いくつかご案内

祈り ポスター

①映画「祈り」(原作:マリアの首)
長崎に原爆が投下されてから10年余のお話し。コロナで1年伸びましたが、8月13日より公開です。
これに付随して、焼き場に立つ少年を長崎の象徴にするべく、モニュメントが作れないかと動いています。10月には、シアターΧカイ(東京都墨田区)で舞台「マリアの首」を上演します。

②相変わらず、断る力が弱い。というわけで、新宿伊勢丹会館6階(東京都新宿区)で、現在はコロナでスペインからチームを呼べなくなり閉館中のフラメンコレストラン「ガルロチ」を引き継いで、秋からショーレストランに生まれ変わらせます。

『第1回ASAKUSA大衆芸能Festival』を来年1月、浅草おかみさん会と協力してやります。歌と踊りが大好きな放送作家のさらだたまこ氏が「日本レビュー協会」を立ち上げるので、結託して浅草レビューを復活!

④コロナでゲネプロ最中に中止になった音楽劇とコンサート「嵐を呼ぶ男~石原裕次郎物語」は2月に中野サンプラザ(東京都中野区)で。

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