前回は米国のテーパリングと利上げについて取り上げましたが、米国以外の先進国なども新型コロナ終息後の出口戦略について検討を始めています。また、米中対立の長期化やアフガニスタンの米軍撤退に伴うタリバンの政権掌握、中国の「先富論」から「共同富裕」による急激な経済政策の変更など国際情勢も変化しています。金融市場が比較的落ち着いている今、投資リスクについて再点検を行う良い時期かもしれません。今回は投資における5つのリスクについてみていきます。

「テーパリング」と「利上げ」を分かりやすく解説

  • 5つの投資リスク(価格変動・信用・金利変動・為替変動・カントリー)
  • 価格変動と為替変動リスクは、比較的関心が高い
  • 国際情勢の変化でカントリーリスクへの関心も高まっている

投資における5つのリスクを考える

投資における主なリスクとして、次の5つがあります。

  1. 価格変動リスク
  2. 信用リスク
  3. 金利変動リスク
  4. 為替変動リスク
  5. カントリーリスク

国内投資の場合は、1.価格変動リスク、2.信用リスク、3.金利変動リスクが主なリスクです。海外投資の場合は、上記3つのリスクに加えて、4.為替変動リスク、5.カントリーリスクが主なリスクとなります。ただし、為替変動リスクは国内企業の業績を左右する要因にもなるため国内投資にも影響を与えます。

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それぞれのリスクの内容は以下の通りです。

価格変動リスク

景気や市場環境、企業業績などにより価格が変動するリスクです。

信用リスク

企業業績の悪化や国の財政悪化などによりデフォルトになるかもしれないリスクで、価格変動リスクに比べ発生頻度が低いリスクです。ただし、発生した場合は影響が大きくなる傾向があります。

金利変動リスク

金利が上下することにより債券価額や株価に影響を与えるリスクです。

為替変動リスク

円高円安により投資収益が変動するリスクで、海外の株式や債券に投資をしている場合に大きな影響があります。

カントリーリスク

投資先の国や地域が政治的・経済的に不安定になった時に発生するリスクです。革命などによる政権交代や内戦、テロなどによる政治的要因と、ハイパーインフレや急激な国際収支の悪化などによる経済的要因があります。

上記のリスクの中で、価格変動リスクと為替変動リスクの2つは一般のニュースの経済コーナーでも日経平均株価や円ドルレートが伝えられるので、比較的馴染みがあるリスクかと思います。金利変動リスクは、海外の金利動向についての関心は高いですが、日本の金利については日銀のゼロ金利政策が継続している影響か関心が薄いようです。信用リスクとカントリーリスクは、上記3つのリスクに比べ発生頻度が少ないこともあり、日常的にはあまり関心を持たれないリスクかと思います。

リスクの発生頻度イメージ

国際情勢の変化で、カントリーリスクの関心を高めるべき?

リード文でも触れましたが、米中対立の長期化やアフガニスタンの米軍撤退に伴うタリバンの政権掌握、中国の「先富論」から「共同富裕」による急激な経済政策の変更など、カントリーリスクに影響を与えるような国際情勢の変化が起こっています。また、気候変動問題や各国の脱炭素化への動きなども産油国などの財政や経済に影響を与え、カントリーリスクの発生要因になることが考えられます。

具体的なカントリーリスクの影響としては、

  1. 国債の場合は、利払いや償還が出来なくなるデフォルトリスク
  2. その国の通貨で発行した債券の場合は、発行体が高格付けであっても急激な通貨安により損失ないし含み損が発生するリスク
  3. ハイパーインフレなどによる経済の悪化による株価の下落リスク

などがあります。

カントリーリスクは先進国に比べると新興国の方が高い傾向にあります。新興国債券や新興国通貨建ての債券および新興国地域に投資対象を限定したファンドに投資をしている方は、通常よりカントリーリスクへの関心度を上げるほうがいいでしょう。

また、新型コロナ終息後の出口戦略などの影響を考えますと、先進国などを対象としたファンドや債券に投資している方も、5つのリスクについて再点検しておく時期に来ているかと思います。

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