資産形成の近道は小型株にあり──。「小型株集中投資」を実践する気鋭の投資家・遠藤洋さんに、今からでも始められる小型株投資の極意を教えていただく連載。第4回は、自分の身の回りから有望な小型株を見つけるポイントと、売買のタイミングについて考えていきます。

  • 自分の詳しい業界や、仕事で携わっている業界に絞って銘柄を探す
  • 株価が伸びるかどうかは、現時点の株価ではなく時価総額で判断する
  • 「店舗数」や「ダウンロード数」などの指標からも買い時、売り時を見極める

あちこち手を出さず、詳しい業界に絞る

遠藤洋
遠藤 洋
投資家
投資コミュニティixi主宰

前回は、僕が身の回りで見つけた小型株の例をいくつか紹介しましたが、ただ漫然と世の中を眺めているだけでは、有望な銘柄を見つけるのは難しいかもしれません。「この会社は伸びそうだ」と思っても、それが自分の思い込みにすぎず、ほとんど成長しないということもあります。

投資初心者は「身の回りから有望な銘柄を見つける」

会社が伸びるかどうかを見極めるために必要なことは、あちこち手を出しすぎないことです。3500社もある上場企業を全部見ていてはきりがありません。自分の詳しい業界や、仕事で携わっている業界に絞ってしまっていいと思います。

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僕自身も詳しくない業界は見ないことにしています。僕が得意なのはB to C(一般顧客向け)のサービスで、自分が顧客として商品やサービスを実際に使いたいかどうかを基本的な判断軸にしています。あとは、過去に自分が携わっていたアプリやIT業界ですね。

よくわからない業界や会社に投資しても、なかなかうまくいきません。自分が理解できる範囲で銘柄を探して、これという銘柄が見つかるまでは無理に投資しなくてもいいと思います。

株価ではなく、時価総額を見て「買い」「売り」を判断

これから成長しそうな会社を探して投資するときに、よくある心配ごととして、「すでに株価が上がり過ぎていて、今買ったら高値づかみになってしまうのではないか」というものがあります。この銘柄は良さそうだと思って株価チャートを見たところ、すでに株価が半年前から3倍に上がっていたら、買うのをためらってしまう人もいるかと思います。

僕は、極端に言うなら「株価は一切見なくていい」と考えています。

見るべき指標は株価ではなく、時価総額です。
時価総額とは、連載第2回でも説明したように「株を発行している会社をまるごと買ったときの価格」のことです。この時価総額が何百億円か、あるいは何千億円なのかによって、買うべきかどうかを判断するのです。

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たとえば飲食店では、僕は時価総額100億円くらいが「買い」のタイミングだと考えています。これは株価がいくらであろうと同じです。
逆に、時価総額が1000億円を超えるような会社には、僕は投資しません。もしその会社の株を持っていたら、売るタイミングだと考えます。

日本市場で飲食店が展開できる店舗数や売り上げには限界があって、過去の事例を調べると、どこも時価総額1000億円かそれより前で高止まりしています。「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービス(3053)は時価総額が一時1000億円を超えましたが、そこが天井となりました。同様に積極的な出店をしてきた串カツ田中ホールディングス(3547)も、「磯丸水産」のSFPホールディングス(3198)も、時価総額が1000億円に達する前に株価がピークを超えています。

串カツ
急成長を遂げる飲食チェーンも必ずどこかで売り上げや時価総額が「天井」に達する。その天井に対して、今どのあたりの位置にあるかを見極めるかが重要(写真はイメージです)

以上は飲食店の事例ですが、天井となる時価総額は業界によって全く違います。そこは業界ごとにしっかり見極める必要があります。その上限値に対して、今この会社がどの位置にいるのかを、投資するかどうかの基準にするのが良いと思います。

株価チャートの形だけを見ていたら「株価が2倍になったからもうだめだ」と思ってしまうかもしれませんが、時価総額にはまだまだ伸びしろがあって、実際にそこから株価がさらに上がっていったことは過去にたくさんありました。逆に、株価が右肩上がりであっても、時価総額が高くなっているのを見て、そろそろ限界かもと判断するケースもあるでしょう。
いずれにしても、その銘柄が伸びるかどうかは、時価総額を見なければわからないということです。

商品やサービスがどこまで浸透したかを測る

時価総額以外にも、会社が成長する上限を示唆する目安があります。飲食店なら店舗数がそれにあたります。

僕が「いきなり!ステーキ」の行列を初めて見たとき、まだ店舗数は10か20程度でした。そこから年間何十店舗という出店計画を出して、最盛期には1年で100店舗以上増やしたこともありました。10~20店舗から徐々に店舗を増やしていく時期は投資タイミングとなります。そして店舗数が100を超えてきたら警戒を始めて、200~300店舗になったら売ることを検討すべきでしょう。

アプリ業界では、ダウンロード数が指標になります。「買い」の目安としては100万ダウンロードで、これが1000万を超えたら警戒、1500万になれば「売り」だと考えています。僕の経験上、ダウンロード数が1500万を超えると、昔やっていた人が飽きてやめてしまい、売り上げが頭打ちになるような傾向が見られました。

前回の記事でも触れた「パズドラ」(パズル&ドラゴンズ)も、あるいは「モンスターストライク」もそうした動きがありました。ダウンロード数が増える一方でアクティブユーザー数や課金額の増加が止まり、その3カ月後くらいに出た決算で売り上げの鈍化が示されて、それと前後して株価も下がるという流れでした。

スマホゲーム
ゲームなどのスマホアプリは、ダウンロード数が1000万を超えてくると課金額が頭打ちになる傾向が見られるという(写真はイメージです)

RIZAPの場合は、テレビCMが始まってすぐのタイミングは「買い」だったと思います。その後しばらくして、たとえば電車に乗っていて乗客がRIZAPのことを話すなど、「ライザップ」という言葉が社会に定着した頃が、そろそろ売ってもいいのかなというタイミングでした。

このように、商品やサービスが世の中にどこまで浸透したか、自分なりの物差しを持って測ることが大切です。会社の商品やサービスがすべての見込み顧客に届いている状態を100としたら、今がどのくらいの位置にあるのかを見極めることです。それが10くらいであれば投資タイミングですし、50あたりで警戒、80を超えたら売るという発想でいいと思います。

次回も引き続き、有望な小型株の見極め方や注意点について考えていきます。

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