現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第61回は、日立系の半導体製造装置部門が独立して、2023年10月に東証プライム市場に上場したばかりの半導体製造装置メーカー、KOKUSAI ELECTRIC(6525)をご紹介します。

  • コクサイエレクトリックは半導体の製造における「成膜装置」に強みを持つ
  • 今期は減収減益だが、足元では半導体製造装置の需要が回復に転じている
  • 株価は2月に上場来高値を付ける。業績回復とともに株価のさらなる上昇に期待

KOKUSAI ELECTRIC(6525)はどんな会社?

KOKUSAI ELECTRIC(コクサイエレクトリック)は、半導体を作る製造装置の専業メーカーです。

スマートフォンやパソコンなど電子機器に不可欠な半導体は、ウエハーと呼ばれる材料を複雑かつ精密な加工により、回路を作って製造されます。その中に、化学的に極めて薄い膜をウエハーにつける「成膜」という工程があります。回路の素材となる膜をつけ、不要な部分を薬液などで溶かして必要な部分を残すと、回路が作られます。同社はこの「成膜装置」に強みを持っています。

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同社は2023年10月に東証プライム市場に新規上場しました。コクサイエレクトリックとしては新規上場ですが、かつては日立系の「日立国際電気」という社名で、2018年まで東証1部(現在のプライム市場に相当)に上場していました。日立系の半導体製造装置メーカーでしたが、日立製作所本体の事業改革のために米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が出資し、成膜装置事業を中心に分離独立した経緯があります。その後市況や業績回復もあり、再上場しました。

生産性の高いバッチ式と高精細なALD式の成膜技術

半導体の成膜プロセスでは、一度に一枚のウエハーを成膜する「枚葉式」と、一度に多数のウエハーを成膜する「バッチ式」の2つがあります。同社はこのうち、生産性の高いバッチ式の成膜技術に強みをもっています。

また、成膜に際してはガス化した成膜材料を混合し、雪のようにウエハーに降り積もらせ、膜を形成します(化学的気相成長法の場合)。この際にガス膜が回路の微細な穴に詰まってしまうことがありました。同社はALD技術という複数のガスを交互に微細に成膜させる技術に長けています。さらに、バッチ式の成膜技術により高精細かつ一度に多く成膜することができる点が、ユーザーである半導体メーカーに評価されています。

ウエハー
半導体装置はウエハーと呼ばれる材料を加工して作られる。KOKUSAI ELECTRICは、その工程の中で「成膜」の技術に強みを持つ(写真はイメージです)

KOKUSAI ELECTRIC(6525)の業績や株価は?

コクサイエレクトリックの今期2024年3月期は、売上高が前期比27%減の1800億円、営業利益が48%減の291億円を見込んでいます。スマートフォンなど半導体の市況が低迷していたことから、今期は大幅減収減益の見通しです。

一方、市況の一部で改善が見られ、データを記憶するメモリーの値段も上昇に転じていることから、来期2025年3月期は業績の拡大を予想しています。

2月9日に発表された2023年4~12月期(第3四半期)は、売上高に相当する売上収益が前年同期比29%減の1316億円、営業利益が46%減の240億円と大幅減収減益でした。

しかし、足元の10~12月期に限ってみると、半導体の自給自足を目指す中国メーカーの活発な投資に加えて、各地域でメモリーや演算のためのロジック半導体向けの製造装置の需要が回復に転じています。

【図表】KOKUSAI ELECTRIC(6525)の株価(日足)
KOKUSAI ELECTRIC(6525)の株価(日足)

2月22日の終値は4840円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約49万円です。予想配当利回りは0.23%と低水準なので、キャピタルゲイン(値上がり益)を目的とした投資に向いています。

2023年10月期の新規上場時の公開価格は1840円で、当時は数千億円規模の大型案件でしたので、公募割れの可能性を危ぶむ声もありました。しかし機関投資家などの評価は高く、予想PER(株価収益率)などに割安感もあったことから、初値は2116円と公開価格を15%上回る好調な滑り出しとなりました。

その後は半導体株全体に市況回復の期待が高まり上昇基調を続け、今年2月16日には5230円の上場来高値を付けました。直近では利益確定売りもあり、再び5000円割れの水準ですが、会社側の見立ての通り、来期以降の業績回復への期待は高いと思われ、さらなる資金流入に期待が持てると見ています。

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