システム開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)サポートなどを手がけるトラントが、2023年11月に新たに立ち上げた女性向けITキャリア支援サービスが「女性のIT転職 DXクリエイターズ」(以下、「DXクリエイターズ」です。自らも女性として、IT業界の最前線で長く活躍してきたトラント代表取締役の小川直子さんに、「DXクリエイターズ」というサービスに込めた思いについてお話をうかがいました。

IT業界に女性が少ない現状を変えたい

トラントが「女性のIT転職 DXクリエイターズ」というサービスを立ち上げたきっかけについて教えてください。

小川さん トラントの主な業務はシステム開発で、創業して今年で20年になります。私自身はトラントが設立される前からシステムエンジニア(SE)として、30年ほどIT業界に携わっています。

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IT業界は、以前から人手不足の状況が続いています。最近は「働き方改革」や、コロナ禍でリモートワークが広まるなど環境の変化があり、IT人材のニーズはさらに高まっています。そうした社会の変化を受けても、IT業界には女性が極端に少ないという現状があります。

IT業界というと、「PCで個人作業」というようなイメージがあるかもしれません。しかし、実際はプロジェクトを進めていく中でさまざまな役割の方々と、多種多様な議論をする必要があります。コミュニケーション能力、ホスピタリティに優れている女性こそ、活躍の可能性が十分にあると考えています。

そこでトラントでは女性の採用に力を入れて、今では社員の約6割が女性となりました。この経験を生かして、会社の外でもITスキルを持つ女性が活躍できる場を増やしたいという思いで始めたのが、「女性のIT転職 DXクリエイターズ」という、女性を対象としたキャリアスクールと転職支援を行うサービスです。

DXクリエイターズ
「女性のIT転職」を支援する、トラントが運営するDXクリエイターズのホームページ

まずはノーコードでアプリを作る。実務重視のスクール

「DXクリエイターズ」は女性を対象に、未経験の方が最短3カ月でIT業界に必要なスキルを身に付けられるサービスということですが、一般のスクールと比べてどのような特徴があるのでしょうか?

トラリピインタビュー

小川さん 他社さんと違うところは、もともと教育やスクールから始まった会社ではなく、IT業界の実務を長年やってきた会社なので、どんなふうにキャリアを作っていくのが女性にとってメリットがあるか、理解しているところだと思います。キャリアコーチングと転職支援の専属チームがタッグを組んで、生きたコミュニケーションを提供し、IT業界への最短距離とキャリアパスを提示できます。

具体的にどんなことを教えているのでしょうか?

小川さん 最初は既存のツールの使い方から教えています。パソコンでもスマートフォンでも、自分がいかにアプリを使いこなせるか、どんなアプリがおもしろいと感じるか、ユーザーとしてのリテラシーを高めていくことから始めます。

エンジニアが学ぶアルゴリズム開発という敷居の高い内容からではなく、より実践的なアプリの作り方から入っていくのも特徴です。例えば「kintone(キントーン)」という、多くの企業が導入しているクラウドシステムがあるのですが、kintoneではプログラミング言語の知識がなくても、コードを書けなくても業務アプリが作れます。

最初からアルゴリズムを学ぶことは難しいですし、特に女性にとっては、興味を持つことができる内容かというと、難しいのかなと。まずはノーコードでアプリを作る手順をひととおり知ってから、そのあとでアルゴリズムなどの理論を教えた方が、理解しやすいと思います。

小川直子さん
DXクリエイターズではプログラミングなどの理論ではなく、アプリを使った実践から入るという小川さん

未経験でも短期間で即戦力として女性が活躍

「DXクリエイターズ」はキャリア支援サービスで、肝となるのは転職支援だと思います。どのような支援を行っているのでしょうか。

小川さん トラントでIT業界未経験の女性に短期間でITスキルを身に付けてもらい、自社内で重要な戦力として育ててきた経験をもとに、オンライン講座やコーチングなどを通じてITスキルの獲得を支援します。その後はご本人の希望や適性、能力に合わせて、就職先の提案をしていきます。

トラントではコロナ禍の影響もあって、旅行業やアパレル業、サービス業などで働いていたプログラミング未経験の女性を多く迎え入れましたが、今ではkintoneで業務アプリを設計していたり、リーダー職を任せたりと、さまざまな場面で活躍しています。

IT人材に求められる能力は大きく変わった

IT業界に女性が少ないのはなぜだと思われますか?

小川さん ひとつは教育制度だと思います。これまでのIT業界は、専門学校で特別な知識を得た人だけが行くような場所でした。それこそパティシエが料理学校でケーキの作り方を学ぶように、限られた特別な人のための職種でした。私も以前からIT業界を志していましたが、当時の一般的な大学では専門的なことを教えているところは少なく、ほぼ専門学校のような短大へ行ってプログラミングを学びました。女性でそのような道を選ぶ人は、当時はほとんどいませんでした。

時代は変わって、ITはすべての企業や組織にとって必要不可欠になりました。また、昔はIT業務といえば大規模プロジェクトがメインで、体力的にもライフイベントの面でも女性には合わないものでした。このこともIT業界に女性が少ない要因となっていました。

そうした環境は少しずつ変わってきて、会社ぐるみでお金と時間をかけて開発をしなくても、1からプログラムを書いたりしなくても、さまざまなツールを通じてITを活用できるようになりました。IT人材に求められる能力は大きく変わりました。

ライフイベントとキャリア形成を両立させる

ITをとりまく環境変化によって女性が活躍しやすい環境になっていると思いますし、慢性的な人手不足の解消という面でも、ITのスキルを持った女性が増えることは、社会的に大きな意義がありそうです。

小川さん 社会が変わるためには、まず個人が変わっていくことが必要です。意志とスキルを持った人が増えて、そうした人たちを企業が受け入れていくことで企業が変わり、そして社会が変わっていくと思います。一般企業が女性のIT人材を育成することは現実的に難しいと思うので、そこを「DXクリエイターズ」が担っていきたいと考えています。

女性は出産や育児などのライフイベントに伴って、フルタイムで働けなくなることがあります。ITの技術があれば、例えば週2日だけ、1日2時間だけの時短勤務や、業務委託で働くといった方法を選びやすくなります。そうして育児をしながら実務経験を積んでいくことで、将来的にはシステムエンジニアとしてフルタイムでの業務に復帰する、あるいはフリーランスで働くといったキャリアも開けると思います。

小川直子さん
「IT業界の女性比率を5割まで引き上げることを目指したい」と語る小川さん

IT人材への需要が大きい今が「転職のチャンス」

「DXクリエイターズ」のサービスを利用してみたいという方に、背中を押すメッセージがありましたらぜひお願いします。

小川さん IT人材の需要はさらに高まりを見せています。ノーコードツールの習得を通じ、未経験でもIT業界でも活躍できる今、転職を考えてみてほしいなと思います。あと5年ほどすれば、ITスキルを備えた若い人がいっせいに社会人になります。今がチャンスなんです。

この記事をお読みいただき、IT業界への転職にご興味をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひ「女性のIT転職 DXクリエイターズ」をご活用いただき、新しいキャリアを拓いてください。

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