2014年1月にスタートしたNISA(少額投資非課税制度)が3年後の2024年からリニューアルします。2階建ての構造になり、1階部分でつみたて投資を行い、個別株投資などを行う場合は2階部分を活用することになります。この仕組みが、とにかくわかりにくい……。そんな中、NISAの基礎知識から実践、新NISAの仕組みなどをわかりやすく解説した『こんなときどうする?どうなる?Q&A 3つのNISA徹底活用術』が出版されました。著者であるファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんに執筆の理由や資産形成を継続するためのヒントなどについてお伺いしました。(聞き手・文=しらこしらお 取材日:2020年9月14日)

NISAの理解でつまずいて、先へ進めないのはもったいない

竹川美奈子さん
竹川美奈子さん
LIFE MAP合同会社 代表
ファイナンシャル・ジャーナリスト
出版社や新聞社勤務などを経て独立。2000年にFP資格を取得。取材執筆活動を行うほか、投資信託やiDeCo(個人型確定拠出年金)、マネープランセミナー講師などを務める。2016年7月~金融庁 金融審議会「市場ワーキング・グループ」委員。

新著『こんなときどうする?どうなる? Q&A 3つのNISA徹底活用術』を読みました。2024年からスタートする新NISAの仕組みはだいたい理解しましたが、なぜこんな複雑な制度に変更するのかという謎は一層深まりました……。改めてこの本を執筆しようと思った理由について教えてください。

竹川さん コロナ禍の影響もあって昨年からオンラインセミナーで話す機会が増えています。その際にNISAについて質問されることがとても多いんですよね。時間の限られたセミナーだと、皆さんの質問に応えきれないことも多くて、きちんと書籍にまとめる必要があると思ったのが執筆した理由です。

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投資信託を利用して積立投資でこれから資産形成しようというのであれば、つみたてNISAを利用すればいいと思います。ただ、すでに一般NISAやジュニアNISAを使っている人も大勢います。一般NISAは2024年から新NISAとして2階建ての仕組みになり、より複雑でわかりにくくなりますし、ジュニアNISAは2023年で新規の投資が終了します。現状の制度が今後どうなるか、このまま保有し続けていていいのかなど、不安に思っている人が少なくありません。

NISA徹底活用術の表紙画像
こんなときどうする?どうなる? Q&A 3つのNISA徹底活用術』(日本経済新聞出版刊)
実際に竹川さんのもとに寄せられた質問をベースにしているので、実践的でわかりやすい!

また、投資初心者の中には、そもそも制度自体を誤解している人もいます。ですから第1部では、改めて3つのNISAの仕組みについて解説し、第2部ではよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめる構成としました。

第2部のQ&Aは、「キホン」「活用」「出口」に分かれていて、実用的でわかりやすいです。

竹川さん NISAはせっかくの非課税制度ですから活用した方がいいと思います。とはいえ、仕組みを完璧に理解することや、非課税枠を目いっぱい使いこなすことが資産形成の目的ではありません。制度の理解につまずいてしまい、先に進めないという人がいますが、それは非常にもったいない。だから、この本を読んでNISAに関してひと通り理解したら、あとは「資産形成を実践する目的」や「どんな資産に投資するか」、「毎月いくらぐらいなら投資を継続できるか」「自分のリスク許容度」など、本来の資産形成のあるべき姿に向けて一歩踏み出してほしいと思います。

自分に適したNISAを見極める際の判断材料として読んでほしい

仕組みが複雑だと、むしろ「攻略したい」みたいな気持ちが強まって、本来の資産形成の意味を忘れちゃうのかもしれません。

竹川さん 確かに「いかに効率的に使うか」「最大限、得する使い方は?」といった質問は多いです。複雑であることは事実ですから、無理に一般NISAや新NISAを使う必要はありません。この本を読んで、「自分はつみたてNISAを使えばいい」と思ってくれればそれはそれでいいですし、いま一般NISAを利用している人でも、新NISAではなく、つみたてNISAに切り替えるという選択肢もあります。もちろん、使いこなせれば一般NISAを使い続け、2024年から新NISAに移行してもいいでしょう。

【図表1】新NISAの仕組み
新NISAの仕組み
『こんなときどうする?どうなる? Q&A 3つのNISA徹底活用術』より編集部作成

反対に年40万円しか非課税枠がないつみたてNISAに比べ、新NISA のほうが122万円も非課税枠があるのでお得――といった理由で始めてしまうと、後々後悔することになるかもしれません。資産形成は長期で取り組むものなので、無理なく続けられることがとても重要です。自分の資産形成の目的や金額、期間などを考え、それに合致する非課税制度はどれか。それを見極めるうえでの判断材料として、この本を活用してくれればうれしいです。

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