普通の人の資産形成はつみたてNISAがもっとも使いやすい

なぜ新NISAはどうしてこんな難しい仕組みになったのでしょうか? シンプルに一般NISAの非課税期間を延長するとか、つみたてNISAに一本化するとかじゃダメだったのでしょうか?

竹川さん 個人的には、一般NISAの非課税期間を延ばせばよかったんじゃないかなと思います。ただ現状では一般NISAとつみたてNISAの2つが併存していて、いきなりつみたてNISAに一本化してしまうと、一般NISAを使って個別株とか海外ETFなどに投資している人は困るでしょう。金融庁は「新NISAは、一般NISAが担っている成長資金の供給拡大を促しつつ、あわせて少額からの長期・積み立て・分散投資を行える制度に改組するもの」と説明しています。

まず長期・積み立て・分散投資を行うきっかけになるよう、つみたてNISAと同様の制度を1階部分に設け、さらに成長資金の供給拡大を担う制度として、幅広い商品に投資できる2階部分を合体させたことで、この構造になったのでしょう。

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竹川さんは、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」のメンバーでもあります。今回のNISA制度の変更に関して、金融庁と意見交換などを行うタイミングはあったのでしょうか。

竹川さん 「市場ワーキング・グループ」では、新NISAについては議論していません。ですから2階建てというのは、公表されるまで知りませんでした。もう少しシンプルな制度にしてほしかったという気持ちはあります。普通の人が投信でコツコツ資産形成するであれば、つみたてNISAを利用するのが一番使いやすいのではないでしょうか。

【図表2】現行の3つのNISAの違い
3つのNISAの違い
『こんなときどうする?どうなる? Q&A3つのNISA徹底活用術』より編集部作成

資産形成は自分が納得した商品で淡々と続けるもの

一般NISAがスタートして8年、つみたてNISAは4年経ちます。すそ野拡大には一定の成果を上げたと思いますが、資産形成は継続することが大切です。せっかく始めた資産形成をちゃんと継続するためには、何が必要だと思いますか。

竹川さん お金の行き先に興味を持つことでしょうか。海外の株価指数に連動するインデックスファンドでも、組入上位に名を連ねている銘柄は、割と身近な企業だったりします。それを知るためにも、月次のレポートを読んでみたり、運用会社によっては、定期的にオンラインでファンドの説明会や運用報告会を開催しているので、そういうものに参加してみるのもいいかもしれません。

投資する商品の中身や運用方針などに、積極的に関心を持つことが継続の秘訣というわけですね。

竹川さん 積極的にというか……。まずは少し関心を持ってみる、からでいいと思います(笑)。月次レポートを毎回熟読するような熱心な投資家さんもいらっしゃいますが、いきなりそれはむずかしいかもしれません。だから、ちょっと関心を持って、できるところから一歩ずつ始めてみればよいと思います。

家計を「見える化」しておくことも効果的です。家計簿アプリを使えばバランスシートも見られます。だんだん運用資産が積み上がっていくことが確認できる一方で、住宅ローン残高が減っていく様子などもわかります。もちろん運用は短期的には上下しますが、長期で見て少しずつ純資産が増えていることが確認できれば、楽しくなります。

ですから、日々の値動きではなく「お金の行き先」に関心を持つこと、そして一つの金融商品の値動きだけに注目するのではなく、もう少し俯瞰して、資産と負債を全体で捉えることが資産形成を継続させるうえでは重要な気がします。

家計の可視化
「家計を『見える化』しておくことも資産形成を継続させるコツ」と竹川さんは話す

確かにローンの残高が減って、金融資産が増えていることがわかれば継続のモチベーションになります。

竹川さん あとは、早めに始めて早めに失敗を経験することが結構重要なんじゃないかな。例えば、リーマン・ショックの時に焦ってしまい、それまで続けていた積み立てを止めてしまったり、解約した人がすごく多くいました。

でも、いま振り返ってみると、あの時止めずに積立投資を継続していれば、いま頃、資産は大きく成長していました。「あの時、止めなきゃよかった」と後悔した人は、そのあとに起きた急落局面でも、積立投資を止めずに継続したと思います。

MonJaの読者の中にも、去年からつみたてNISAで投資を始めた人がたくさんいます。その人たちは大きな調整局面をまだ経験していません。この先、そういう経験するとびっくりして積み立てを止めてしまうかもしれません。それで後になって「あの時止めなきゃよかった」と後悔するかもしれませんが、それも長い人生を考えたらいい経験なのかもしれませんね。

竹川さん そうですね。資産形成は、長期で取り組むものですから。すぐに正解を求めようとしたり、完璧な状態で始めたがる人がよくいますが、始めて1~2年ぐらいは迷ったり、失敗したりしながらでもいいじゃないですか。そのほうが結果的に自分なりに納得して、心地よく続けられる資産形成のスタイルが見つかると思います。

人に勧められて買ったものは、途中で不安になると手放してしまうでしょうし、少し値上がりしてもやっぱり解約してしまうと思います。資産形成は、自分が納得した商品で淡々と続けるべきものです。そしてせっかくなら非課税制度を使った方がいいですよね。NISAもそのくらいのスタンスで付き合うのが丁度いいと思います。

NISAに振り回されることなく、自分なりの資産形成をコツコツ続けることが大切ですね。今日はどうもありがとうございました。

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