資産形成の近道は小型株にあり──。「小型株集中投資」を実践する気鋭の投資家・遠藤洋さんに、今からでも始められる小型株投資の極意を教えていただく連載。第8回は、投資初心者にとって最も難しい「損切り」について、人間の心理を踏まえた実践的な解決法を伝授します。
- 損切りが難しいのは「自分の過ちを認めたくない」という心理のため
- 「迷ったら一度損切りする」というある種の開き直りで、人間の心理に逆らう
- 「株価が10%下がったら損切り」は本質ではなく、会社の業績や将来性で判断
「自分の過ちを認めたくない」という心理
前回は、株の損切りを決断するタイミングについてお話ししました。投資した会社の成長が見込めなくなれば、その会社に見切りを付けて株を手放した方がいいと、理屈のうえではわかっていただけると思います。
しかし、なかなか理屈どおりに行かないのが株式投資の世界です。理屈どおりに動かないのは株価だけではありません。投資家の心理もそうです。
なぜ、損切りは難しいのか? それは、「自分の過ちを認めたくない」という心理がじゃまをするからです。
損切りするということは、自分の過ちを認めることでもあります。
「あんなに時間をかけて一生懸命調べて、考えに考えて、この会社は絶対に成長すると思って投資した自分の判断が、間違っていたなんて信じたくない」
そう思ってしまうのが人間の心理です。過ちを認めたくないから、買った株をなかなか手放せないのです。
あるいはサンクコストバイアス、つまり「銘柄を選ぶために手間暇かけた時間と労力がもったいない」という心理も、損切りを拒む方向に作用します。
迷ったら一度損切りして、含み損をゼロにする
「自分の過ちを認めたくない」「かけた労力がもったいない」という人間の心理に負けずに損切りするには、「迷ったら一度損切りしてみる」という、ある種の開き直りが大切だと思います。
損切りした株にまた投資したくなれば、あらためて買い直せばいいのです。手数料は、投資金額にもよりますが、ネット証券であれば数百円程度です。取引画面を開くたびに含み損の数字を見て気分が落ち込めば、本業や日常生活にも支障が出ます。含み損のマイナスの数字が数百円で消えるのですから、損切りや買い直すコストは決して無駄な出費ではないと思います。
余談ですが、季節は年末に差しかかっているので、もし含み損が出ている銘柄があれば、節税のために「損出し」をすることをおすすめします。含み損を確定させれば今年の確定利益が減ることになるので、支払う税金の額を抑えられます。
「10%下がったら損切り」は本質的ではない
最後に、損切りの基準としてよく言われる、「株価が10%下がったら損切りする」というように株価の下げ幅で損切りを決めることについて、僕の考えを伝えたいと思います。
損切りしたくないという心理を排するために、逆指値注文を入れて機械的に損切りをすることは、損切りに慣れるためには意味があると思います。損切りできずに損失を増やしてしまうよりは、早めに損切りした方がいい場合もあるでしょう。
株価が何%下がったから売るというのは基準としてわかりやすいのは確かですが、小型株集中投資の本質はそこにはありません。株価が一時的に10%下がって、そこから2倍、3倍に成長する会社はいくらでもあります。あのアマゾンも、上場直後と比べて株価が2000倍くらいに増えていますが、その間に株価が半額になる局面は何度もありました。
前回もお話ししたように、大切なのは株価そのものではなく、会社の業績と将来性です。一時的な要因で業績が悪化したことで株価が下がっていたら、その要因が消えれば業績は回復し、株価も伸びることが期待できます。一方で、業績の悪化がクリティカルな要因で当面は回復が見込めないとしたら、その会社を見切って損切りするという判断になります。
株価の動きにとらわれてしまうと、最も大切な「この会社はこの先成長するのか、しないのか」という投資の本質を見落としてしまいます。
ただ、僕も株価のチャートをまったく見ないわけではありません。移動平均線はある程度参考になると思います。具体的には、短期・中期・長期の3本の移動平均線がごちゃごちゃに入り組んだときに、損切りや利益確定を検討することがあります。僕の経験では、3本の移動平均線を株価が下回る状態が長引く場合には、別の銘柄に乗り換えた方が、資金効率が上がる可能性は高くなります。