「元本保証の預金にはリスクがない」と言われることがあります。たしかに預金は元本保証です。100万円を預ければ、100万円以下になることはありません。しかし、預金は必ずしも安全ではありません。当記事では、預金にどのようなリスクがあるのか、分かりやすく解説します。

  • 金利で得られる利益以上に物価が上昇した場合、預金の「価値」は目減りする
  • 日銀は2%の物価上昇目標を掲げる。米国などではインフレが進んでいる
  • 預金にもリスクがあることを認識し、投資に資金を振り向けることも検討

金利が物価上昇に負ければ「価値」の元本割れ

預金がノーリスクとは言えない理由のひとつは、金利水準よりも物価上昇が勝ることで「価値」の元本割れが起こる可能性があるからです。金利で得られる利益以上に物価が上昇した場合、実質的な価値が目減りしていることになります。

例えば、定期預金の利率が年0.01%で物価が1%上昇した場合、0.99%分の資産価値が目減りしたと考えられます。定期預金100万円は1年後に100万100円(税金を考慮していません)になりますが、預金の開始当初100万円であった商品は物価上昇により101万円になっており、定期預金のお金(100万100円)では買えなくなってしまうわけです。これが「価値」の元本割れです。

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米国で進むインフレ、日本も物価上昇目指す

日本では長らく物価が下落するデフレの時代が続きました。そのため、物価の上昇は高度経済成長期のような急速に経済が成長する時代にしか起こらないのでは?と感じている人も多いでしょう。

しかし、経済が成熟した先進国でもインフレは起こります。実際に、現在のアメリカの物価は上昇傾向にあります。日本でも、物価を上昇させることを目的として日本銀行が施策を行っています。それが「2%の物価上昇目標」です。日銀は、物価の安定と経済の持続的な成長を目指すために、2013年に2%の物価上昇目標を導入しました。

2021年現在、目標達成には至っていませんが、日銀は大規模な金融緩和政策を継続しています。市場に大量に資金を投入するというやり方は、急激なインフレが起こった戦後の日本と同じです。戦後に比べ現在の日本経済は成熟しているため、かつてのようなハイパーインフレが発生することは考えにくいでしょう。しかし、時間をかけて少しずつ物価が上昇していく可能性はあります

金利水準以上に物価が上昇していけば、預金の価値の目減り幅はより大きくなります。預金にもリスクがあることを認識し、預金だけでなく、投資にも資金を振り向けていくことが重要になるでしょう。

預貯金には金融機関の破たんリスクも

なお、預金には物価上昇リスクに加えて、金融機関の破たんリスクもあります。金融機関が破綻した場合、預金保険機構が元本1000万円までとその利息の払い戻しを保証する「ペイオフ」という仕組みがありますが、1000万円を超える部分については取り戻せなくなる可能性があります。


すべての資産を預金に集中させるのは、実はハイリスクかもしれない

複数の金融機関へ預け入れ資産を分散しておくことでリスクヘッジは可能ですが、物価上昇以外のリスクもあることを知っておきましょう。

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