レポート提供:イーストスプリング・インベストメンツ(2019年10月10日)

  • アジアで最も渋滞が深刻なマニラで、バイタクシーが人気。
  • ベンチャー事業「アンカス」は、創業3年で300万ダウンロード突破。
  • バイタクシーの合法化に向けて14万人超の署名が集まる。

マニラがアジアで最も渋滞がひどい都市に

アジア開発銀行が今年9月26日に発表したアジア主要都市における渋滞の程度に関する報告書によると、人口500万人以上のアジア278都市のうち、マニラが最も交通渋滞が深刻な都市に選定されました。電車などの公共交通機関の不足により、多くの人が通勤にマイカーやバイクを利用することが原因、と言われています。

フィリピンでは配車サービスが公共交通機関の代わりに利用されており、多くの人がウーバーやグラブなどのライドシェア・配車サービスをアプリで気軽に利用していました。しかし、昨年3月にウーバーが東南アジア事業から撤退し、グラブが同社の東南アジア事業を買収した結果、グラブがフィリピン市場の約9割のシェアを占めることとなったため価格競争がなくなり、利用料金が高止まりする状況が生じていると言われています。また、ウーバー撤退によりタクシーの数が減ってしまい、今まで以上に混雑時にタクシーを利用しづらくなっています。

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こうした状況を改善するサービスとして期待されているのが、地場ベンチャー事業の「アンカス」バイクタクシーです。「アンカス」はフィリピン語で「ヒッチハイク」を意味する、フィリピンで人気の二輪車配車アプリです。グラブなどの乗用車の配車サービスと同じように、利用者はアンカスでバイクタクシーを呼んで利用します。渋滞でもすぐに来てもらえることや、運賃がタクシーの半分ほどであることなどの利点から、バイクタクシーは東南アジアでは市民の足として定着しています。アンカスの創業は2016年ですが、すでにダウンロード数は300万に達し、登録している運転手は2万7千人に及びます。

【図表】東南アジア配車2強(バイクタクシーも提供)
東南アジア配車2強(バイクタクシーも提供)
出所:各種報道に基づきイーストスプリング・インベストメンツ作成

14万人超の署名で実現したバイクタクシー

フィリピンでは、現在、公共交通機関として二輪車を利用することを禁止する法律があり、アンカスは創業以来2度のサービス停止の措置を受けました。しかし、ネット上で「アンカスを救い、フィリピンでバイクタクシーを利用できるようにしよう」という署名運動が立ち上がり、14万人を超える署名が集まりました。

安価なバイクタクシーを求める市民の声により、今年6月からアンカスがマニラ首都圏とセブ都市圏で試験運行を行うことが承認されました。安全性と収益性が認められれば、フィリピンでバイクタクシーが初めて合法化されることが期待されています。もし合法化されれば、インドネシアの大手配車サービス「ゴジェック」などもフィリピン市場に参入する可能性もあります。

フィリピンではドゥテルテ政権の下、インフラ整備計画「ビルド、ビルド、ビルド」でインフラ整備を促進し、2022年までに渋滞問題を解決する、としています。バイクタクシーが新たな市民の足となり渋滞解消に役立ち、さらには物流の円滑化の担い手となることも期待されています。

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