人生で最大の「断捨離」といえるのが自宅の売却。家族がいないおひとりさまが、将来のサービス付き高齢者向け住宅などへの入居を見越して、両親から相続した自宅を手放す例も増えているようです。今回のテーマは、自宅を売却したときにかかる税金です。
- 不動産の売却による所得を「譲渡所得」という
- 取得費がわからない場合は、不動産を売った金額の5%相当額を取得費とする
- 居住用財産を譲渡した場合には特別控除が適用される
自宅を売却するおひとりさまが増えている
令和3年もあと少し、大掃除や断捨離が気になる年の瀬となりました。
前回の記事では、身の回りの整理をして出てきた衣服や雑貨を売却して収入を得た場合の税金について説明をいたしましたが、今回は雑貨などの小物ではなく不動産の売却、おひとりさまが今まで住んでいた家や土地を処分した場合の税金のお話をしたいと思います。
老後一人で暮らしていくことが不安になってしまった場合、生活支援などのサービスが付いた高齢者向けの居住施設への転居や、要介護の状況になり介護付き老人ホームに入居するなど自宅の売却を考える方も多いことでしょう。
また自分の死後、持ち主のいなくなった空き家のことを考え、生前に生活をコンパクトにして不動産など現金化に手間暇のかかる財産を自分で処分するなど、若いころは終の棲家と思っていた自宅を売却するおひとりさまが最近増えています。
そこで心配になるのが、不動産を売却する際に生じる税金のことですが、譲渡所得の計算は様々なパターンがあり複雑なので、ここでは両親から相続した自宅を売却した場合について考えていきましょう。
譲渡所得の税金の計算
不動産の売却による所得を税法の言葉では「譲渡所得」といいます。譲渡所得の計算は、具体的には下記の計算式で算出されます。
譲渡所得 = 収入金額 – 取得費 – 譲渡費用
上記のうち収入金額とは、譲渡した際の価格をいいます。
取得費とは購入代金、建築代金・購入時の税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税など)。
譲渡費用とは、仲介手数料・印紙税・建物解体費・借地権の名義書換料のことです。
そして譲渡所得の税金の計算は、その譲渡した資産を保有していた期間により、①短期譲渡所得と②長期譲渡所得のふたつに分けられます。
① 短期譲渡所得
土地建物等の譲渡で譲渡のあった年の1月1日における所有期間が5年以下のものを譲渡した場合の所得
② 長期譲渡所得
①以外の所得
ここでいう所有期間の計算方法ですが、相続により不動産を取得した場合には、その所有期間は被相続人が取得した日から通算されます。つまりお父様から相続した財産ならばお父様が取得した日から、祖父母の時代からずっと所有している財産ならば所有期間は3代で通算されることになります。
つまりほとんどの場合、相続により取得した不動産の譲渡は、所有期間が5年を超える長期譲渡所得に分類されることになります。
相続した自宅の取得費がわからない場合は……
しかし、相続により取得した不動産はその取得費がわからないことが多いですよね。
もちろん、取得当時の売買契約書や家の建築価格のわかる契約書、領収書がきちんと保管してある場合は、そこにある価額で計算をします。しかし、購入してから相当の年月が経っている場合には、その不動産を一体いくらで買ったのか、金庫やタンスを探しても当時の資料が見つからない場合もあります。
そんなときの取得費には特例があり、不動産を売った金額の5%相当額を取得費とすることができます。実際の取得費が売却価額の5%より少ない時も5%とみなして計算をすることができるのです。
そしてさらに、居住用財産を譲渡した場合の特別控除という特例もあります。計算された譲渡所得から3000万円を控除した金額が、課税される譲渡所得となります。
居住用財産の譲渡所得 = 収入金額 – 取得費 – 譲渡費用 – 3000万円
こうして計算された譲渡所得が1000円以上2000万円以下の場合所得税の税率は10.21%、住民税4%となり、2000万円を超える額は所得税15.315%、住民税5%の税率となります。
(例)長期譲渡所得で売却金額が1億円、取得費不明、譲渡費用500万円の場合
■譲渡所得
1億円 – 1億円 × 5%(500万円)- 500万円 – 3000万円 = 6000万円
■譲渡所得2000万円以下の部分の税額
2000万円 × 10.21% = 204万2000円(所得税)
2000万円 × 4% = 80万円(住民税)
■譲渡所得2000万円を超える部分の税額
(6000万円 – 2000万円) × 15.315% = 612万6000円(所得税)
(6000万円 – 2000万円) × 5% = 200万円(住民税)
所得税合計 816万8000円
住民税合計 280万円
実際の税金の計算は難しい判定も多いので、お近くの税務署、税理士などの専門家にお尋ねください。