「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、コロナ禍が徐々に正常化に向かう中で期待が高まる、外国人観光客による「インバウンド」と企業への投資について考えます。
- 日本人の生活を苦しめる円安は、インバウンドにとっては追い風となる
- 前回の「爆買い」のピークは2015年頃。円安が進み、再び期待が高まる
- インバウンド企業に投資すると、日本円のまま円安の恩恵を得られる
皆さん、こんにちは。新しい年度が始まり、5月の大型連休も明けました。皆さん、3年振りの「行動制限のない」大型連休は、いかがお過ごしでしたか?
外国人観光客の緩和と航空会社の社長のメッセージが同じ日に
さて、連休中日の5月6日に「外国人観光客、団体旅行で6月解禁を検討」というニュースが飛び込んできました。「おお!ようやく!」という驚きとともに期待も膨らみましたが、その一方で「不安がない」と言えば、もちろん、それは嘘になってしまいます。
そんなニュースもあってか、日本航空(JAL)の株価は同じ5月6日だけで2.99%上昇しました。その日は日経平均株価が0.69%の上昇、同じくTOPIXが0.93%の上昇でした。先行きに対する不安よりも期待が勝った株式市場だったと思います。
では、どのような期待なのでしょうか?
5月6日には、さらに、こんなニュースも重なりました。
「日本航空の2021年度の決算は、1775億円の最終赤字。最終赤字となるのは2年連続」
発表したのは日本航空の社長です。しかし、あわせて「不退転の決意で(2022年度は)黒字化達成を」とも明言しました。
ただし、5月6日のメッセージで社長は日本航空が2022年度に黒字化を達成する前提として、「上半期に入国者数の上限が3万人まで緩和されることが必要だ」という認識も、あわせて示していました。
インバウンド復活なるか?
「外国人観光客の入国制限の緩和」と「日本航空の社長のメッセージ」が同じ日に発表されるというのも、なかなかのタイミングだと思いますが、いよいよ「インバウンド需要」への期待が高まりそうです!
コロナ禍で、久しく聞くことのなかった「インバウンド」という言葉に、「懐かしい!」と思わず声を上げた読者もいらっしゃるのでは(笑)。
ところで、インバウンドという言葉をごく簡単に説明しますと、正しくは「外から中に入り込む」という意味ですが、最近では「訪日外国人観光客」という意味が一般的になりつつあります。
人口減少による少子高齢社会の中で国内需要、つまり内需の縮小を少しでも食い止めようと、「内需そのものを輸入」しているようなイメージですね。
コロナ禍に加えて円安
話は変わりますが、今、コロナ禍に加えて、私たちを戸惑わせているのが円安ですね。過去にも申し上げましたが、日本の食料自給率はカロリーベースで37%。ということは、日本人は食事の63%を海外に依存しているとも言えます。そして、円安は食材の輸入価格の高騰につながります。給料や事業所得などの収入、それも手取り額が増えない限り、円安によって生活は苦しくなります。また国民年金や厚生年金をお受け取りの方は、4月から年金額が0.4%引き下げられています。
人が生きていくためには食事は欠かせません。現役世代も、年金生活者も、ともに「生きる」ために、円安という「暮らしの不利益」を、むしろチャンスに換えることができるような資産運用が必要です。
むしろ円安が追い風に?
生活を苦しめる円安も、インバウンドにとっては追い風です。と申しますのも、海外から日本に来訪する人は、日本国内では円で買い物をしたりサービスを利用するのは、言うまでもありません。外国人観光客が日本でお金を使うためには、母国の通貨(米ドルなど)を円に換える必要がありますが、その円が安くなるのが「円安」だからです。
インバウンド企業が狙い目?
「外国人観光客の入国制限の緩和」と「日本航空の社長のメッセージ」が同じ日に発表されたのに加えて、最近の円安です。「インバウンド企業」に追い風が吹き始めたと言えなくもなさそうです。
さてインバウンド企業、すなわち訪日外国人観光客をターゲットにした企業の中では、どのようなジャンルが伸びるのでしょうか?
「爆買い」の再来はあるのか?
インバウンドという言葉とともに、「爆買い」という言葉をご記憶の読者もいらっしゃると思います。2015年にはユーキャンの新語・流行語大賞にも輝いた言葉です。当時、ドラッグストアで何十万円も買い物している中国人の姿が撮影されていました。当のドラッグストアは「1か月分の売り上げが1日でできた」と驚きを隠せない様子。また中国人も「荷物の制限がない」からと、何と船で来日したとか。
しかし、中国で関税の大幅引き上げがあったため、2015年が爆買いのピークだったとされているようです。
しかも2015年から2016年にかけて、為替が円高になっていることから、関税の引き上げの有無に関わらず、爆買いをするメリットがなくなったのかもしれません。なお、2015年から2016年にかけて訪日外国人の数は減っていません。
2016年のインバウンドは爆買いから「コト消費」に移ったとも言われています。つまり、自身のための消費や体験ということですね。そういえば、東京の浅草には貸衣装ならぬ「レンタル浴衣」屋が複数ありました。
■ドル/円の終値
2015年11月27日……122円82銭
2016年4月29日……106円35銭
■年間の訪日客
2015年……19,737,409人(うち中国人……4,993,689人)
2016年……24,039,700人(うち中国人……6,373,564人)
※ドル/円の終値はYahoo! ファイナンスより。訪日客はJETRO『ビジットジャパン事業開始以降の訪日客数の推移』より引用
さて、最近では稀に見る円安が進んでいます。少なくともここ10年間にはなかった、1ドル=130円です。訪日外国人観光客にとっては、「安く買い物ができる」チャンスです。爆買いの再来となるでしょうか?
円建てのまま為替の恩恵という隠れたメリット
ところで、国内のインバウンド企業を狙う理由として、隠れたメリットがあります。それは投資する通貨が円のまま、事実上、為替(円安)による恩恵を受けることができる点です(円安が追い風なのですが、通貨が円のままなので、為替差益というと語弊があり「為替(円安)による恩恵」と申し上げました)。
通貨が円のままであれば、円を外貨に換える手間とコストを省力化できます。
利益確定時にも同じく外貨を円に換える手間とコストが生じますが、これも省けます。国内のインバウンド企業に投資する隠れたメリットといえるでしょう。
これから狙いたいインバウンド企業の基準として、筆者は以下のようなキーワードやイベントに注目しています。
インバウンドの テーマ・言葉 |
テーマや言葉に関連する業界 |
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爆買い | 化粧品メーカー・家電メーカー・家電量販店・ドラッグストア |
宿泊 | ホテル・鉄道(グループにホテルを保有している)・ホテルREIT |
移動 | 航空(国内外)・鉄道(国内) |
言葉 (同時通訳) |
情報通信 |
システム (旅行、宿泊手配) |
情報通信・旅行業 |
観光 | ホテル・レジャー施設 |
越境EC | 情報通信・化粧品メーカー・家電メーカー |
2019年 | ラグビーワールドカップ |
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2021年 | 東京オリンピック |
2025年 | 大阪万博 |
2027年(?) | リニア中央新幹線 |
2027年 | 東京駅前にトウキョウトーチ開業 |
2029年 | 東京・新宿駅西口に巨大ビルが開業 |
ちなみに、筆者は2月7日にもお伝えしましたが、インバウンド需要への期待として、早々と『福岡リート』を買い増ししました。以来、福岡リートの株価(投資口価格)は微妙な動きですが、今後に大いに期待をしております。
末筆になりましたが、本稿では具体的な企業名や業界名を述べていますが、ご自身の判断で投資を検討なさって下さいませ。