12月も終盤に入り、駆け込みで今年分のふるさと納税を行おうとしている人も多いでしょう。そこで今回は、ふるさと納税の制度改正について解説します。

  • 返礼品の種類が少なくなっている……。それには制度改正が関係している可能性
  • 2023年10月から「地場産品」と「5割ルール」がより厳格になった
  • 寄付を通じた「自治体の応援」が本来の目的。健全な活用が肝心

ふるさと納税とは? 制度の概要を改めて確認

ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付を行う制度です。「ふるさと」という名前はついていますが、自分の出身地や居住していた地域しか選べない、といったことはなく、どの自治体を選ぶこともできます。

一定の上限額はありますが、原則ふるさと納税の2,000円を超えた部分全額が所得税と住民税から控除されます。控除を受けるには翌年に確定申告を行う必要がありますが、企業に勤めている人などでふるさと納税をした自治体が5団体以内であれば、各自治体に申請をする「ワンストップ特例制度」を利用することで、確定申告を不要にできます。

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控除額の計算は、確定申告をするかワンストップ特例制度を利用するかで、以下のように変わります。

    【控除額の計算例】

  • ①所得税の控除
    (ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率
    (控除の対象にできるのはふるさと納税額のうち、総所得金額等の40%まで)
  • ②住民税の控除(基本分)
    (ふるさと納税額-2,000円)×10%
    (控除の対象にできるのはふるさと納税額のうち、総所得金額等の30%まで)
  • ③住民税の控除(特例分)
    ・(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
    ・(住民税所得割額)×20%
  • ※住宅ローン控除や医療費控除など、他に控除を受けている場合は上限額が変わります。

出所:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」税金の控除についてを基に筆者作成

2023年10月の制度改正で「地場産品」などの基準が厳格化

ふるさと納税の醍醐味の一つが、自治体ごとの特徴を生かした返礼品の数々です。しかし、昨年と同じ自治体を応援しようと考えていたけれど、昨年は選べた返礼品が選べなくなっていたり、金額が変わっていたりするかもしれません。それには、2023年10月に起きた制度改正が影響している可能性があります。

ふるさと納税の返礼品には、自治体特有の「地場産品」を用意する決まりになっています。しかし、返礼品として人気のある肉や米については、その基準があやふやになっているケースもあったようです。例えば、海外産の輸入肉を自治体内で熟成することで「地場産品」としていた例などです。

トラリピインタビュー

こうしたことがあったこともあり、10月には基準が見直され、熟成肉と精米については同一の都道府県内産であるものに限定されるようになりました(地域独自の味付けや加工を行っている場合は、輸入肉でも返礼品とできるケースもあります)。

また、制度改正で「5割ルール」の厳格化も行われています。ふるさと納税では、募集に要する費用は寄付金額の5割までと定められています。しかし、ふるさと納税に関する情報が集まったポータルサイトの利用に伴い発生する手数料やワンストップ特例の申請に関する事務費用といった一部の経費は、その中に含まれず処理されることもありました。10月の制度改正ではこのルールがより厳格に実施されることとなり、これらの費用も5割までの範囲に含めなくてはいけなくなりました。

【図表】5割ルールの対応イメージ
ふるさと納税の5割ルール対応イメージ

こうした制度改正により、返礼品の種類が以前より少なくなっていたり、金額が変更されていたりといった影響が出ている可能性もあります。

ふるさと納税の趣旨を再確認して検討を

こうした変更を残念に感じるかもしれません。しかし、ふるさと納税が一般に広く利用されるようになったことで、寄付金を集めるための返礼品競争が激化していると指摘する自治体も出てきていたのも事実です。ふるさと納税という制度を長く続けていくためには、必要な見直しだったといえるでしょう。

返礼品も確かに魅力ではありますが、ふるさと納税の目的は寄付を通じた「自治体の応援」です。その点を改めて確認したうえで、健全に活用していきたいですね。

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