投資信託などの金融商品を活用すれば、たとえ海外の資産であっても日本にいながら気軽に投資することが可能です。実際に海外資産への投資を検討している方や、すでに行っている方も多いでしょう。特にウクライナ情勢が緊迫化してから円安の進行が加速しています。円安が進む今だからこそ、円以外の資産も保有する「通貨分散」について考えてみませんか。
- 通貨分散の意義のひとつは、日本円だけに偏るリスクを避けるため
- 海外通貨を持つことで、高金利や為替差益が期待できる可能性も
- 基軸通貨である米ドル・米ドル建て資産から検討してみる
通貨の分散とは?
通貨の分散とはどのような意味があるのでしょうか。
通貨分散とは、複数の通貨に分散して金融資産を保有することです。複数の通貨に分散することで、自国通貨である日本円が下落したときに、外貨建て資産は相対的に価値が高まっていると考えられるため、資産全体の価値の目減りを回避できるわけです。
一般的に投資をする際には、株式や債券など、値動きの異なる複数の資産に分散することで、安定的な運用が可能になると考えられています。同様に、日本円以外の海外の通貨や外貨建ての資産を持つことで、さらなる資産分散効果を期待できます。
最近の事例としては、ウクライナへの侵攻によって、ロシアルーブルの価値は一時大幅に下落しました。その一方で日本円の下落も急激で、悪い円安が進行しています。日本円の購買力が下落していることは、多くの人が実感していることでしょう。複数の通貨に分散しながら資産を保有することの重要性を再認識するタイミングが到来しているといえるかもしれません。
通貨分散の意義その1:資産が日本円だけに偏るリスクを減らす
通貨を分散する1つめの意義は、日本円だけに偏るリスクを減らせることです。
日本円は、2022年5月に「1ドル=131円台」という20年ぶりの円安水準になりました。円安になるということは、円で輸入品を購入する際の購買力が落ちるということです。
特に日本は原油などのエネルギーや食糧などの資源の多くを輸入に頼っている国です。経済産業省の発表によると、日本のエネルギー自給率は2012年以降10%を切っています。海外から輸入しなければ、経済活動に必要なエネルギーを自国で賄えないといっても過言ではありません。
海外から輸入している製品は基本的に為替の影響を受けるため、円安になるということは、調達価格が高くなり、それが国内での小売価格の値上げにつながる可能性が高いということです。
海外から多くの資源を輸入する日本では、日本円だけを資産として保有していると、円安時に生活費が高騰する可能性があります。外貨建て資産を保有しておけば、円安時には資産全体のリスクヘッジにつながるわけです。
通貨分散の意義その2:リターン(金利・為替差益)を追求する
通貨分散の意義の2つめは、外貨に投資をすることで+αのリターンを狙えることです。
最近は世界的にゼロ金利やマイナス金利政策を行っていましたが、米国を中心に世界的に利上げ局面に入ってきました。その一方で、日本の利上げはまだ先になりそうです。当面は他国との金利差が開いていく可能性が高いでしょう。
金利が高いということは、お金を預けているだけで高い利子が適用され、元金が増えていきます。日本円に預けるよりも、金利が復活した米ドルに預けるほうがお金は増えるため、日本円を売って、米ドルを買う投資家が増えていることが、昨今の急激な円安の原因の一つにもなっています。
もう1つの収入源は為替差益です。円安ドル高に為替が動けば、円ベースでの資産が増えていることになります。金利に加えて為替で利益を上げられれば、金利収入と為替差益の両方でリターンを得ることが可能です。
通貨分散の方法
通貨分散の具体的な方法は外貨預金、外貨建ての投資信託や債券、保険などを保有することが挙げられます。
外貨預金とは、銀行などで行える外貨建ての預金のことです。株式や債券に投資をするわけではないため、為替の変動のみがリスクとなります。
一方、外貨建ての投資信託や債券などは、外貨の株式や債券、不動産などに投資をします。投資した資金が株式や債券、不動産などの値動きに影響されるため、為替の動きだけでなく、投資対象資産そのものの値動きのリスクをきちんと把握する必要があります。
海外資産に投資をする投資信託には、為替ヘッジを選択できるものもあります。為替ヘッジをすれば、為替の変動を抑えられますが、為替差益を期待できなくなる点は知っておきましょう。
FX(外国為替証拠金取引)も外貨投資の手法の1つです。証拠金を預ける、レバレッジをかけることで証拠金以上の取引ができる点がメリットですが、その分相応のリスクが伴う点には注意が必要です。
どの通貨を選べばいいか
外貨建て資産を持つのであれば、やはり基軸通貨となる米ドルが基本となるでしょう。米ドルは、あらゆる経済活動の中心となる通貨といえます。
他にもユーロやポンド、オーストラリアドルのような先進資源国、ブラジルレアルやトルコリラなどの新興国通貨などがあります。とはいえ、新興国にはさまざまなリスクがあるので、投資初心者の方は、まずは米ドルを中心に考えた方がよいでしょう。急激な円安傾向が続く今だからこそ、外貨建て資産を持つことの意義を考えてみてはいかがでしょうか。