宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、ガソリンや食品など生活必需品の価格上昇、すなわちインフレから資産をどう守るかを考えます。

  • コロナ禍や世界情勢の変化で物価が上昇しているが、景況感は決して良くない
  • 米国は利上げ、日銀は金融緩和を維持。ここからインフレが進む可能性
  • インフレに強い資産や外貨を持つ、借金返済を急がないなどの方法で対抗

日銀の異次元緩和で「これからがインフレ」

【質問】
ガソリン、食費と値上がりが続いて、小遣いが減っていくのが早くなっています。妻に値上げを相談したら「何言ってるの? そんな余裕あるわけないでしょ」と一蹴されました。これも戦争の影響なんでしょうか? 我慢しとけば、いずれ安くなってくるのでしょうか?

今回は、資産運用に関心がない方たちからの相談も多くなっている、インフレーション(略称=インフレ)の話です。
そもそも論として、インフレとは「物価が上昇し、お金の価値が減る」と定義されています。

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日本で物の値段が上がり始めたのは2、3年前からで、特にコロナ禍からじわじわと上がり始めていました。米国を見てみると、長い間の好景気が物価上昇を招き、この40年来で最大インフレとなっています。米国と同じように日本もインフレなら、景気もいいのでは? と思ってしまいたくなるところですが、日本で「景気が良くなったね」という言葉は、今は誰に聞いても出てこないのが現状だと思っています。

2012年末に始まったアベノミクス相場で株価上昇の恩恵を受けた投資家なら若干、インフレになっている感覚があるかもしれませんが、投資していない方にとって、日本のインフレに実感がわかないのは当然のことです。私の感覚では、日本はまだまだデフレ脱却の途中であると思っています。

経済にとって健全な、程よいインフレとは「物価が上がってもそれ以上に給与も上がり、企業の設備投資も順調で、価格転嫁もできている」ことです。政府は日銀が主導する金融緩和の継続で、いまだにインフレの実現を目標に掲げていますが、給与が上がらないために消費は増えず、このような状況で企業が物の値段を上げるとますます売れないので、価格を上げられないというジレンマがあります。物価上昇と賃金に開きがあればあるほど消費減となります。まさにデフレじゃん、と言いたくなりますね。

また、日銀は異次元緩和政策により、多額の長期国債を銀行や証券会社から爆買いしています。国債を購入したお金の支払いは、金融機関の日銀当座預金を膨らませる結果になります。この当座預金は当然日銀の負債となり、金融機関にとっては流動資産となります。

問題は、長期国債の平均利回りが0.226%もあるという現実。金利の上昇は国の負債の増加にもなります。米国はインフレ抑制のため金利を段階的に上げていきますが、同時に債券価格は下がり、すでに発行された債券は利率の魅力が薄れることとなります。金利上昇が見込まれるときは、長期の債券は慎重に扱わなければなりません。

このように、金利の上昇は長期国債の評価損にも直結します。このことからも、日本は今の金融緩和を維持する選択しかないのでしょう。しかし、これからいよいよ物価上昇は続くことになります。コロナ禍で景気を冷やさないようにした金融緩和政策に、残念ながらウクライナ紛争によるエネルギーや食料の供給不足が重なってしまいました……。

日本銀行
日本銀行は国債の買い入れなど金融緩和政策を継続

インフレに対抗する資産運用

さて、相談者の「生活必需品などの値上げは、我慢すれば何とかなるのでしょうか?」という質問ですが、結論から申し上げますと、

物価上昇はまだ始まっていません。正確に言うと、これからまだまだ上がっていきます。我慢が必要ならば長期間になるのではないでしょうか。お小遣いこそ我慢が必要ですので、奥様と細かいところまで話し合いをしてください。くれぐれも喧嘩はしないように」

とお答えさせていただきました。

とは言っても、我慢する以外にどうしていけばいいのかが重要です。
値上げに対抗する、代表的な方法をお伝えします。

①インフレに強い資産を持つ

インフレに比較的強いと言われる資産を持ってください。「株式、投資信託、外貨、不動産、金」になります。

逆に、インフレに弱いのが現預金、定期預金、年金保険(積立)などです。中でも注意したいのが、多くの日本人が持っている積立ものの保険商品です。低金利時代に契約した、年金型など長期契約の商品は、利率が低くほとんど元金しか残らないものもあるので、解約などして別資産に振り分ける工夫をした方が良いです。

②借金の返済を急がない

借金返済は慎重に検討しましょう。できれば、インフレの最中は繰り上げ返済などしないでくださいね。インフレが進めば現金の価値が低くなり、借金をしている方が有利になります。インフレは借金なきに等しくなります。

わかりやすく言うと、銀行からの借金が5,000,000円ある個人タクシーの運転手が、ハイパーインフレになって、タクシー代初乗り500,000円になるような物価の上昇が起きたら、借金の返済は楽になります。1日10人のお客様を乗せれば、1日の売り上げは5,000,000円です。運転手さんは1日で借金を銀行に返せます。

ロシア経済がウクライナ紛争の影響で通貨ルーブルが急落し、消費者物価がわずか1週間で2%跳ね上がり、輸入品のテレビは約15%の値上がり、そして現在も物価が上がり続けていることを考えると、ハイパーインフレはともかく、日本でも今以上のインフレはあり得る話です。

不動産取得もそうです。インフレになれば地価が上がります。日本の少子高齢化が進んで、これから住宅が余ってくるといっても、坪10万円の土地が坪5万円にはなりませんよね。米国内では30年固定で借りる住宅ローンの平均金利が4%を超えて、年内には5%に達する可能性があるとのことです。投資家が不動産を借金してでも購入しているのは理由があるわけです。

③米ドルなどの外貨を持つ

政府と日銀は円安をある程度容認しているようです。これからは米国がインフレ抑制のために、政策金利を段階的に3%前後まで上げていきますから、強いドルに資金が流れていくのは当然のことになります。ますます日米の金利差が広がっていき、日本円が弱くなるので、円安進行は続いていきそうです。

日本円が弱くなるのであれば、強い国の外貨を持つことも有効です。為替リスクはありますが、インフレや円安による目減り分をカバーするために、給与、年金などの一部を円から外貨にしておくのは得策です。今なら外貨の中でもドル預金、米ドルMMF、そしてドル建て生命保険などの米ドル運用が一番安全だと思います。

我慢ではなくて、変換です。

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