投資の収益には、キャピタルゲイン(値上がり益)とインカムゲイン(利子や配当金など)があります。株式投資では値上がり益の方に関心がいきがちですが、長期投資の場合、配当金なども資産を増やすための大切な要素になります。今回は配当金についての基本的な知識とその効果についてみていきます。
- 配当性向は当期純利益に対する配当金割合、配当利回りは株価に対する配当金割合
- 配当金は一般的に企業の業績により増減するが、悪くても0円(無配)まで
- 買った時より株価が下落しても、長期で配当金を受け取れば損失を抑えられる
利益配当請求権は株主の権利のひとつ
最初に株主の権利について説明します。
株主の権利は、株主総会に参加して議決権を行使する権利(議決権)、配当金など利益を受け取れる(利益配当請求権)、会社が解散した時に残った資産の分配を受ける権利(残余財産分配請求権)の3つになります。
3つの権利の中で投資家の方が最も関心を持たれるのは利益配当請求権ではないでしょうか。
一般的に、配当金は前年度の当期純利益や過去の利益にあたる利益剰余金の中から支払いが行われます。配当金の支払いには株主総会での決議と承認が必要になりますので、定期株主総会を開く前に「定期株主総会招集通知」の案内がその会社の株主に送付されます。
通常、その通知の中に「第1号議案 剰余金配当の件」という議案があり、当社普通株式1株あたり○○円、総額○○○○億円といった記載がされています。この議案が承認されると株主に配当金が支払われます。
次に配当金で銘柄を選ぶ際に利用する指標、配当性向と配当利回りについてみていきます。
配当性向=当期純利益の中でどれだけ配当に充てているか
配当性向は、当期純利益の中でどれだけ配当に充てているかを示す指標です。
計算式は「1株あたり年間配当金÷1株あたり当期純利益×100(%)」です。例えば、1株あたり当期純利益100円、1株あたり年間配当金20円の場合で計算すると「20円÷100円×100(%)=20%」になります。
一般的に、成長する企業は内部留保の比率を高め、その資金を使い設備投資や研究開発など行います。そのため配当性向は低くなります。逆に成熟した企業は既にある程度設備投資が行われた企業が多いので配当金に充てられる比率が上がり配当性向も高くなります。
ただし、経営方針などの違いにより個々の企業の配当性向は異なってきます。
配当利回り=配当金が株価の何%にあたるか
配当利回りは、配当金が株価の何%にあたるかを示す指数です。
計算式は「1株あたり配当金÷株価×100(%)」になります。例えば、株価1000円、1株あたり配当金30円の場合で計算すると「30円÷1000円×100(%)=3%」になります。
ちなみに日経平均株価(2022年9月12日)の配当利回りは2.43%でした。その時点のトヨタ自動車の配当利回りは2.71%、三菱UFJフィナンシャルグループは4.41%、ファーストリテイリング(ユニクロ)は0.73%と企業により配当利回りは大きく異なります。
リスクはありますが、預貯金や国債などの債券に比べ高い利回りになっています。
これから投資先企業を選ばれる方は「予想年間配当金÷現在の株価×100(%)」で配当利回りを計算し銘柄選択に利用します。この時に注意するのは、計算する時の株価が以前の平均的な株価に対して割高、割安になっていないかという点です。もし株価が割安になっている場合は、その企業の平均的な配当利回りよりも高くなります。
また、既にその銘柄に投資している方は上記の計算式ではなく「実際の年間配当金÷購入時の株価×100(%)」で計算し、ご自身の配当利回りを確認しましょう。
では最後に配当金の効果についてみていきます。
配当金は悪くても0円(無配)まで
投資の成果は、値上がり益(キャピタルゲイン)と配当(インカムゲイン)を合計したトータルのリターンで計算し成果をみます。
「トータルリターン=キャピタルゲイン+インカムゲイン」
キャピタルゲインは、株価の変動により値上がり(プラス)になる場合もあれば値下がり(マイナス)になる場合もあります。
これに対して、インカムゲインにあたる配当金は企業の業績により増減はありますが悪くても0円(無配)までです。下のグラフは年間配当金30,000円を10年間積み上げたグラフです。
長期になるほど配当金は積みあがっていきます。仮に買った時より株価が下落したとしてもトータルのリターンでは損失を抑える効果があります。
新型コロナ対策に伴う金融緩和の時期からインフレ対策に伴う金融引き締めへ市場環境が急激に変化しています。値上がり益に比べ安定的な収益が期待できる配当金に注目した投資を考えてみてはいかがでしょうか。
以上 配当金について基本的な知識とその効果についてみてきました。