生命保険や医療保険は、人生の中でマイホームの次に高い買い物と言われることもあるほど、決して安いものではありません。一方で、生命保険や医療保険は不要と言う人もいますが、本当にそうなのでしょうか。今回は、生命保険や医療保険に加入する目的や、保険がどのような人に必要なのか解説したいと思います。
- 日本は公的保険制度が充実しているが、9割の世帯が生命保険に加入
- 手厚い死亡保障がいらないのは、独身など経済的に支えるべき相手がいない人
- 医療保険に加入する必要がないのは、医療費がかかっても生活できる蓄えがある人
約9割の世帯が生命保険に加入している
「生命保険は不必要」と考える方は多いかもしれません。年齢や保障内容にもよりますが、毎月支払う保険料は安くはなく、大きな病気にかからなければ、保険料を払ったぶんだけ損をする結果になってしまいます。
生命保険が不要と考えている方が多い背景には、公的保険制度の充実があります。公的保険が充実している日本では、例えば医療費の場合、現役世代なら3割負担です。また、高額療養費制度もあるため、長期間入院した場合でも、多くの場合では自身が負担する医療費は一定程度まで抑えられます。死亡保障に関しても、会社員や公務員であれば、遺族厚生年金など亡くなった家族に対する保障も一定程度あります。
公的保険については、2022年3月にオープンした金融庁の「公的保険ポータル」でわかりやすく解説しています。
このように公的保険制度が整備されているのにも関わらず、多くの方が生命保険に加入しているのが現状です。
公益財団法人生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、実際に生命保険に加入している世帯は、9割近くになっています。特に子育て世帯が多い40~69歳の世代では、約93%という高水準です。実に多くの方が、保険の必要性を感じていることがわかります。
死亡保険や医療保険に加入する目的は、死亡や入院など、さまざまなリスクに備えるためです。40歳以上の方であれば、家族を養っている場合も多いでしょう。そのため、病気などで収入が得られなくなったときに、困るのは自分だけではありません。
国民皆保険の日本で生命保険を利用する意義
医療保険がいらないという方の理由で、もっとも多いのは「日本は公的医療保険制度が充実しているため必要ない」という意見です。先述のように、日本は国民皆保険制度となっており、医療費は3割負担。さらに、高額療養費制度もあるので、自己負担額をかなり抑えられます。
しかし、がんなどで高額な医療費がかかった場合は、公的医療保険があっても負担は重くなるでしょう。場合によっては、公的医療保険の対象となっていない医療を受けるケースも考えられます。また、通常の病室より環境のいい、個室になっている病室などを選んだ際に発生する「差額ベッド代」も、公的医療保険の対象外となります。
家計を支える家族の大黒柱が死亡した場合、家族は精神的なダメージだけでなく、経済的にも苦しい生活を強いられる可能性が高くなります。病気にかかった場合でも、入院や治療が長引けば、公的医療保険だけでは足りなくなることもありえます。生命保険に加入しておくことで、家族の経済的な不安をある程度は抑えられるでしょう。
生命保険や医療保険は、掛け捨てのものだけではありません。貯蓄型の保険に加入することで、資産形成もしながら万が一の保障も備えられるため、たとえ病気にかからなくても、掛けたお金が無駄になることはありません。現在と将来の生活を考えながら、目的に合った保険を選ぶことが大切です。
生命保険がいらないのはどんな人?
とはいえ、すべての人にとって生命保険の加入が必須かといえば、そうとは言い切れません。今すぐ生命保険に加入する必要がないのは、どのような人なのでしょうか。死亡保障が手厚いタイプの保険と、病気やけがに対して保障する医療保険に分けて解説します。
手厚い死亡保険に加入する必要がない人
死亡保障が手厚い生命保険に今すぐ加入する必要がないのは、独身の人など、経済的に支えるべき相手がいない人です。
配偶者や子ども、あるいは親などの家族がいて、なおかつ自分の収入で家族を養っている人は、万が一自分が亡くなった場合、家族は収入を失って露頭に迷いかねないことになります。独身の人はそうした心配がないため、死亡保障のある生命保険に加入する必要はないでしょう。子どもが独立した人は、支えるべき相手が配偶者だけになるので、生命保険に加入している場合は死亡保障を見直したいところです。
将来、家族ができたときのために生命保険に加入するのであれば、掛け捨て型ではなく貯蓄性の高いタイプの保険を選択するといいかもしれません。
医療保険に加入する必要がない人
医療保険に加入する必要がない人は、ある程度蓄えがあり、病気やけがで多額の医療費が発生した場合や、入院のため一時的に無収入になった場合でも、生活資金を賄える人です。
ただしいくら蓄えがあっても、病気の度合いによっては医療費が予想以上にかさむこともあるため、ある程度の備えはあってもよいでしょう。公的保険が効かない高度先進医療を受けたい場合には、先進医療特約がある医療保険が頼りになります。医療保険は所得控除の対象となるので、所得控除の上限金額での加入を検討してみることもひとつの方法です。