日本人は保険が大好き、といわれます。公益財団法人生命保険文化センターが公表する『生命保険に関する全国実態調査(2021年12月発行)』によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は89.8%、医療保険は93.6%で、年間の払込保険料は平均37.1万円だそうです。大半の人が何らかの保険に加入し、少なくない金額を毎年払っていることがわかります。一方で日本には手厚い公的保険制度が完備されています。それをきちんと理解せずに、必要以上に民間の保険に加入している人もいるのではないでしょうか。
そんな中、金融庁は2022年3月11日に公的保険制度を解説したウェブサイト『公的保険ポータル』を立ち上げました。日本の公的保険制度をわかりやすく紹介したサイトとのこと。サイト開設の趣旨や背景などについて、金融庁監督局保険課の西沖悠さんにお話を伺いました。


西沖 悠さん
金融庁
監督局 保険課 課長補佐(総括)

金融庁の公的保険ポータルはこちらから

リスク・公的保険・民間保険の関係性をわかりやすく解説する

本年3月11日に開設した公的保険ポータルについて教えてください。

西沖さん 公的保険ポータルは、人生で起こり得るケガや病気、老齢、死亡などのリスクに対し、日本にはどのような公的保険制度が整備されており、さらに民間の保険にはどのような選択肢があるかについてわかりやすく解説したウェブサイトです。

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民間の保険を検討する場合には、ご自身が抱えるリスクをきちんとご理解いただいた上で加入するのが望ましい姿です。ただし、同時に公的保険制度についてもきちんと理解しないことには、過不足なく民間の保険に加入することは難しいと思います。もしかすると、公的保険でかなりの部分をカバーでき、民間保険をあまり必要としないケースもあるかもしれません。個人の皆さまに対し、公的保険制度への理解を促し、過不足のない保険加入を後押しすることが本サイト開設の目的です。

確かに、公的保険制度をよく理解せずに、いきなり民間保険に加入している人は少なくないと思います。保険会社の人が公的保険について詳しく教えてくれるわけでもありません。

西沖さん 実は2021年の12月に保険会社向けの監督指針というものを改定しました。その中で個人のお客さまに民間の保険を提案する際には、それに対応する公的保険制度についても各社創意工夫の上で説明してほしい、ということを金融庁として明確化しました。

「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表について

日本の公的保険制度は非常に手厚く、民間保険に加入する際は公的保険についてきちんと理解することが重要です。しかし公的保険の内容が必ずしも国民に広く周知されているわけではないという問題意識は、私たちも以前から持っていました。

そこで監督指針に定めて保険会社や保険代理店にお任せするだけでなく、金融庁自身が率先して公的保険の周知に取り組むことが重要であると考えたことが、本サイト開設の背景にありました。

なるほど、保険会社の人も公的保険を説明したうえで、民間の保険を勧誘するようになるわけですね。でも公的保険をしっかり説明すると、民間の保険が売れなくなるかもしれないから、保険会社にとっては嫌かもしれません……。

西沖さん 確かにそういう意見もあるかもしれません。でも顧客が備えるべきリスクや必要な保障を正しくコンサルティングし、ニーズに合致した商品を提案するのは、民間企業として当然だと思います。むしろより良い提案につながるのではないでしょうか。

例えば、年金の場合は詳細なシミュレーションが有益と思われますが、一日だけの掛け捨てスポーツ保険で、シミュレーションを望む人はいませんよね。顧客の事情やニーズによって、提案の仕方は変わってくるので、保険を勧誘する人がきちんと顧客に向き合うことが求められます。保険会社や保険代理店の方々は、公的年金の説明も含めたより良い提案を後押しするツールの一つとして、この公的保険ポータルの活用を検討していただけるとありがたいですね。

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