現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第32回は、産業に欠かせないインフラ機器を扱うダイヘン(6622)を取り上げます。
- ダイヘンは電気の変圧器など産業に欠かせないインフラ機器を扱うメーカー
- 総合電源機器メーカーとして技術を培い、脱炭素など時流に即した分野で需要高まる
- 今期の業績見通しは売上高、利益どちらも過去最高。安値があれば仕込みたい銘柄
ダイヘン(6622)はどんな会社?
ダイヘンは電気の変圧器やロボット、EV(電気自動車)向け充電器など産業に欠かせないインフラ機器を扱うメーカーです。
歴史は古く1919年(大正8年)、当時の大阪府中津に大阪変圧器株式会社として、設立されました。主力製品は電柱の上に設置される柱上変圧器です。大正時代は軍需景気などに加え、工場のほか家庭用の電灯の普及が進む時代背景もあり、需要が急速に伸びる時代でした。創業者の小林愛三氏は自動車のフォード生産方式を変圧器の生産に取り入れ、大量生産・低価格によって事業を拡大し、1930年(昭和5年)には、国内シェアの過半数を超えるまでの規模となりました。
その後は自動車や造船など溶接に用いられるアーク溶接用ロボットや半導体の製造装置向けの高周波電源装置など時代のニーズにあった製品を投入しています。アーク溶接とは1万度以上の高温で鉄を溶かしてつなげる作業工程です。
変圧器以外の事業ポートフォリオが広がったこともあり、1985年(昭和60年)に社名を現在のダイヘンに変更しました。
近年では、脱炭素に向けた再生可能エネルギーに不可欠なエネルギー・マネジメント・システム、EVの普及に欠かせない充電関連機器を手がけています。
ダイヘン(6622)の強みは?
ダイヘンの強みは総合電源機器メーカーとして培ってきた技術です。
自社での技術開発だけでなく、大学や民間の研究機関との共同研究を積極推進しています。
例えば、最近ではEVの普及が加速する中、課題とも言える充電時間の問題を解決するため、ケーブルを使わずにEVに給電するワイヤレス充電システムが脚光を浴びています。
ワイヤレス充電システムはすでに工場や物流センターで稼働するAGV(無人搬送車)で活用が広がっています。AGVを自動給電することによりバッテリー交換やケーブル接続などの手間が省け、生産効率化につながっています。
ダイヘンのワイヤレス充電システムは、高周波や大電力を生かし、従来より電力の伝送効率が大幅に向上したこともあり、採用が広がっています。
また、2025年の大阪関西万博に向けて関西電力などの協力企業とともに電気で推進する船舶のワイヤレス充電の実証実験も進めています。
ダイヘン(6622)の業績や株価は?
ダイヘンは、今期2023年3月期は売上高が前期比12%増の1800億円、営業利益が16%増の165億円を見込んでいます。
脱炭素の加速による電力機器や半導体の需要増による関連機器の伸びを見込んでおり、今期の業績見通しは売上高、利益どちらも過去最高となります。
2022年11月に発表した4~9月期の決算は、売上高が16%増の831億円、営業利益が15%増の73億円と大幅増収増益でした。中国の都市封鎖や素材価格の高騰によるコスト上昇の影響があったものの、半導体向けや生産自動化向けの製品の需要が強く好業績となりました。
12月9日の終値は4015円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約41万円です。
株価は、週足ベースでは2021年1月の5210円から下値を切り下げる展開が続いていました。しかし、2022年4月の安値3530円と同10月の安値3540円を付けたことにより、下げ基調もいったんは転換した可能性があります。
EVや再生エネルギーなどの脱炭素の広がり、工場の自動化などといった時流に即した分野で強みをもつ製品を多数取り扱っている点も評価したいところです。
PBR(株価純資産倍率)は会社の解散価値である1倍を下回っていることもあり、下値不安は少ないとみられ再度の上昇トレンド回帰を狙って安値があれば仕込みたい銘柄と考えています。