妊娠を希望している夫婦が不妊治療を考える時に、心配なのがその費用負担です。最近では不妊治療に備えられる保険をCMなどで見る機会もありますが、どのような保障を受けられるのでしょうか? 今回はその概要を見ていきましょう。

  • 2022年に不妊治療の保険適用範囲が拡大された
  • それを受けて民間の医療保険でも保障を受けられる可能性も
  • 自治体によっては、助成金制度が用意されていることもある

データで見る日本における不妊治療の実態

不妊とは、妊娠を望む男女が夫婦生活を持っていても、一定期間(日本産科婦人科学会の基準では1年)妊娠にいたらない状態をさすとされています。不妊の原因は男女どちらか、あるいは両方にある場合、またどちらにも明確な原因がないこともあるそうです。

国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」によると、不妊治療を経験している夫婦は、年々増加傾向にあるとされており、不妊の検査や治療の経験がある夫婦は22.7%、約4.4組に1組にのぼります。

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不妊治療に保険は利用できる?

不妊の検査や治療にはいくつかの種類があり、原因に合わせて行われる内容が変わるようです。主なものとしては、タイミング法、排卵誘発法、人工授精などが挙げられます。治療の内容によって、健康保険が適用されるものと、適用されずに全額自費負担となるものに分かれています。

2022年には不妊治療の保険適用範囲が拡大されており、人工授精やタイミング法といった「一般不妊治療」、体外受精や顕微授精などの「生殖補助医療」が対象に追加されました。なお、体外受精・顕微授精の保険適用には年齢と回数に制限があります。

【図表】体外受精・顕微授精の保険適用における年齢と回数の制限
年齢制限 回数制限
治療開始時において女性の
年齢が43歳未満であること
初めての治療開始時点の
女性の年齢
回数の上限
40歳未満 通算6回まで
(1子ごとに)
40歳以上43歳未満 通算3回まで
(1子ごとに)

出典:厚生労働省「令和4年4月から、不妊治療が保険適用されています。」

窓口での負担額は3割負担になり、治療費が一定以上の金額となった場合には高額療養費制度を利用することもできます。

さらに保険適用範囲の拡大を受けて、民間の医療保険でも保障を受けられる可能性があります。
不妊治療の保険適用が開始された2022年4月以降に受けた不妊治療のうち、「手術」として算定されるものについては、医療保険の「手術給付金」受け取りの対象となるのが一般的です。また、体外受精や顕微授精を行う場合に必要となる受精卵の管理料についても保障対象になるようです。

また、先進医療扱いとなっている不妊治療を受けた場合は、医療保険の「先進医療給付金」の対象となります(先進医療特約などを付帯している場合)。

給付金の請求には領収書や診療明細書、診断書など「不妊治療を受けた」ことを証明する保険会社所定の書類が必要となります。
金額によっては医療費控除の対象となることもあり、そうした場合にも領収書などが必要ですので、失くしたり捨ててしまったりしないように気を付けましょう。

不妊治療を受ける夫婦
不妊治療を受けた場合に、民間の医療保険で保障を受けられる可能性も

不妊治療の保障がある保険に申し込むときの注意点

妊娠を希望している人にとっては心強い保険ではありますが、一方で注意点もあります。

保険の申し込み時には、自身の健康状態について保険会社へ報告する「告知」が必要となります。保険申し込み時点で既に不妊症と診断されている場合や不妊治療を開始している場合、そのことについても告知が必要です。その場合、妊娠・出産に関する保障に制限が付く場合も考えられます。

また、不妊治療に関する保障については、一定期間は保障されないという、不担保期間が設定されていることが多いようです。保険に加入してすぐに不妊治療を開始した場合、保障の対象にならないケースがあることも留意しておきたいポイントです。

もしも保険の加入が難しい場合や、すぐに不妊治療を受けたいと考えている場合には、自治体の助成制度がないかを調べてみることをおすすめします。所定の条件を満たしていた場合、特定不妊治療の治療費用や検査費用について、決められた上限額まで助成金を受け取れる制度が用意されている自治体もあります。

不妊治療を行っている間だけでなく、妊娠期間や出産時にトラブルが起こる可能性もありますので、保険の検討は早めにしておき、安心して過ごせるようにしたいですね。

※ここでは不妊治療保障の概要をご紹介しています。詳細については各保険会社のパンフレットや約款などを必ずご確認ください。

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