在庫状況に注目して「回復期」「好況期」「後退期」「不況期」を繰り返す景気サイクルは「キチンサイクル」と呼ばれます。それ以外に、設備投資や建設需要、技術革新に注目した景気サイクルもあります。今回は景気サイクルと投資タイミングの関係について見ていきます。
- 商品在庫に注目するキチンサイクルは、3~4年が1サイクル
- 5年前後の中期投資では、キチンサイクルのどの期間にあるかに注目
- NISAなどの超長期投資では、長期景気サイクルから換金のタイミングを考える
4つの景気サイクル
今回は景気サイクルと投資タイミングの関係について見ていきます。
一般的に景気サイクルと言われるのは在庫状況に注目して「回復期」「好況期」「後退期」「不況期」を繰り返す「キチンサイクル」になります。それ以外に設備投資や建設需要、技術革新に注目した景気サイクルもあります。ここでは、在庫状況に注目した景気サイクルを中心に見ていきます。
サイクル名 | サイクル期間 | 注目点 |
---|---|---|
キチンサイクル | 3~4年 | 在庫状況 |
ジュグラーサイクル | 10年前後 | 設備投資 |
クズネッツサイクル | 20年前後 | 建設需要 |
コンドラチェフサイクル | 40~50年 | 技術革新 |
在庫状況に注目したキチンサイクル
キチンサイクルは、企業が生産する商品の在庫に注目して「回復期」「好況期」「後退期」「不況期」を繰り返す景気サイクルです。1サイクルの期間が3~4年と言われています。
回復期 | 好況期 | 後退期 | 不況期 | |
---|---|---|---|---|
需給関係 | 需≧給 | 需>給 | 需≦給 | 需<給 |
景気状況 | 上向き | 上向き | 下向き | 下向き |
回復期は、消費者の購買(需要)と企業の生産(供給)のバランスが調整されて、需要が供給を上回り始め企業も徐々に生産を増やしていき、景気も上向きつつある段階です。回復期の段階では、徐々に投資資金が株式に向かい始め、株価指数も上昇していきます。
好況期は、消費者の旺盛な需要を対応するために企業がさらに生産を増やしていきます。需要が供給を上回って推移しますので、需給の関係で商品の値段も上昇していきます。売上が増えることで企業の業績も良くなり、消費者でもある従業員の給料も増えます。ネットや新聞などで企業の業績が良いことが確認できるようになり、投資資金はさらに株に向かい株価指数も上昇を続けます。
また、商品の価格の上昇(インフレ)が大きい場合は、インフレや景気の過熱を抑えるために中央銀行が政策金利を引き上げ(利上げ)を行います。
後退期は、消費者の購買(需要)が減少している段階でも企業が好況期の生産量を継続することにより受給バランスが崩れることから起こります。企業に商品の在庫が増えてくると、在庫調整のため生産を抑え、それにより企業の業績も徐々に悪化し、消費者でもある従業員の給料の上昇も頭打ちになったり、下がったりすることでさらに需要が落ち込みます。
景気後退の傾向がでてきた段階で中央銀行は、景気を下支えするために利下げを始めます。
不況期は、購買力の落ちた消費者に合わせるため企業は後退期以上に在庫調整を行います。工場での生産を停止や従業員のリストラなども行われます。それにより、需給のバランスの調整が終わり回復期に入っていきます。
以上が在庫状況に注目したキチンサイクルになります。
その他の3つの景気サイクル
その他の景気サイクルとして期間が短い順に見ていきます。
設備投資に注目した「ジュグラーサイクル」があります。このサイクルは、約10年前後で設備投資の更新が行われ、それに伴い、企業業績が上向き設備の老朽化により企業業績が減速するために起こる景気サイクルになります。
住宅や商業施設の建設需要に注目した景気サイクルとして「クズネッツサイクル」があります。こちらは20年前後が1サイクルと言われています。
技術革新に注目した超長期の景気サイクルとしては「コンドラチェフサイクル」があります。1サイクル40~50年と言われています。現在進行しているAI(人工知能)やEV(電気自動車)の技術はこのサイクルで語られます。
投資の際に景気サイクルのどの位置にあるかを見ておく
以上、在庫状況に注目したキチンサイクルを中心にその他の景気サイクルについても見てきました。
5年前後の中期投資では、景気サイクルのどの期間で投資し、どの期間に換金するかより投資収益が左右されます。
また、NISAなどの超長期投資でも、いつかは投資している資金を換金して老後資金などに活用します。換金のタイミングを考える上で景気サイクルのどの位置にあるかを見ておくことは必要です。