現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第46回は、精密研磨材のトップメーカーであるフジミインコーポレーテッド(5384)を取り上げます。
- フジミインコーポレーテッドは、精密研磨材のトップメーカー
- スマートフォンなどに搭載される半導体デバイスの製造に不可欠な技術を持つ
- 株価は上場来高値更新。半導体業界のグローバルニッチ企業として一段高に期待
フジミインコーポレーテッド(5384)はどんな会社?
フジミインコーポレーテッド(5384)は、電子部品や光学レンズ、自動車のボディなどの表面加工に使用される精密研磨材のトップメーカーです。
パソコン、液晶テレビ、カーナビ、ブルーレイレコーダーなどの家電、 スマートフォン、自動車やデータセンターで使われる半導体の成長とともに、同社は業績を伸ばし続けてきました。
半導体の製造は、材料であるウエハー表面を平坦化するために研磨剤が使われます。半導体のチップは、何度も多数の薄い膜を積層したり、不要な部分を取り除いたり回路を作り上げていきます。精度を高めるためには、膜が形成されるたびに研磨剤とパッドを利用して、粗い面を平坦化する工程を行う必要があるためです。
同社は、1950年に不二見研磨材工業所として名古屋市昭和区で創業され、精密人造研磨材メーカーのパイオニアとして独自の歩みを続けてきました。1957年には、かつてのソニーグループ(6758)の前身の東京通信工業のゲルマニウム半導体向けの研磨剤を提供しました。その後は、光学レンズ用研磨剤などにも事業基盤を広げていきました。
1984年には、米国での事業展開を充実させるため、米国イリノイ州に販売拠点を設立し、その頃から「日本一から世界一の研磨材メーカーになる」という大きな目標を掲げ、海外の有力メーカーとの競争に打ち勝つための競争力を磨いていきました。
フジミインコーポレーテッド(5384)の強みは?
同社の精密研磨材は、長年の技術開発により、分子レベルでの表面加工をも実現できるまでに至り、スマートフォンなどに搭載される半導体デバイスの製造に不可欠な技術となっています。
研磨剤の製造には、多くのコア技術が使われていますが、例えば研磨剤は砥粒という細かな粒から成り立っています。研磨が行われる接地面では、砥粒によって半導体などの表面が磨かれます。砥粒は、原材料を粉砕機で細かく粉砕することで作られますが、分粒後の砥粒の大きさはバラバラなので、そのままで使用すると、研磨の精度が低下します。こうした粒子の大きさをフジミの独自技術でそろえることにより、高精度の研磨剤を提供することができます。
また、別の独自技術では、粒の形自体も四角い形状や板状、連なった形状などさまざまな形状にそろえることができます。粒の形をそろえることにより、バランス良い研磨が可能となり、品質向上につながっているのです。
フジミインコーポレーテッド(5384)の業績や株価は?
フジミインコーポレーテッドの今期2024年3月の業績予想は、売上高が前期比0.2%増の585億円、営業利益が6%減の125億円を見込んでいます。
半導体の市況はパソコンやスマートフォンの在庫調整が続いており、2023年の世界の半導体市場はマイナス成長が予想されていることから今期は減益を予想しています。
しかし、年後半にかけては需要の回復が見込まれることや、生成AIなどの普及で半導体は高性能化、需要拡大が想定され、同社の研磨剤事業も成長が期待されています。
7月7日の終値は3485円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約35万円です。
株価は、日本株や半導体株への期待で右肩上がりの上昇相場が続いています。6月中旬以降、日経平均株価は利益確定売りムードとなっていますが、フジミインコーポレーテッドの株価は、強い展開が続き、7月4日に上場来高値の3785円を付けています。
今後成長が予想される半導体業界のグローバルニッチ企業として、さらなる株価上昇に期待したいところです。