現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第47回は、ICチップなどの半導体を作る際に用いられる洗浄装置の世界大手、SCREENホールディングス(7735)を取り上げます。
- SCREENホールディングスは、半導体を作る際に用いられる洗浄装置の世界大手
- 強みは表面処理のコア技術。3種類の洗浄装置の分野で、世界トップシェアを獲得
- 2024年3月期の売上高・営業利益は過去最高の見通し。株価は7月に上場来高値
SCREENホールディングス(7735)はどんな会社?
SCREENホールディングス(7735)は、ICチップなどの半導体を作る際に用いられる洗浄装置の世界大手です。
半導体は、私たちの日常生活に欠かせないスマートフォンやパソコン、家電など電子機器の中で使われています。半導体はとても小さな部品で、その表面には微細な模様や回路があります。半導体の洗浄装置では、半導体を入れたかごの中に水や特別な洗浄液を使って、汚れや不純物を洗い流します。汚れを落とすだけでなく、細かな部分までしっかり洗浄することができます。
SCREENホールディングスは、 明治元年の1868年に石田旭山印刷所として創業しました。社名は、著名な銅版画家であった石田才次郎氏の雅号に由来しています。事業の立ち上がりは、1934年です。写真の印刷に必要なガラススクリーンの国産化に成功し、その後の大日本スクリーン(現SCREENホールディングス)誕生の礎となりました。
この後は、現在の収益の柱である半導体の洗浄装置には、1975年からの長きにわたり取り組んでいる実績があります。また、カラーテレビのシャドウマスク、フラットパネルディスプレーの製造装置など新しい応用分野にも進出し、事業を拡大しています。
SCREENホールディングス(7735)の強みは?
SCREENホールディングスの強みは、 半導体などの表面処理のコア技術です。材料を半導体に塗ったり、洗浄などによって、表面を非常にきめ細かく改質する技術に長けています。
ウエハーの不純物や薬品を取り除く「洗浄」は、全工程の30%近くを占めると言われている重要な工程です。同社はより少ない水で、より速く、確実に洗浄できる装置を開発したことにより、3種類の洗浄装置の分野で、世界トップシェアを獲得しています。
また、洗浄装置では、薬液を上手に乾燥する技術も得意としています。乾燥時に回路の電気性能や微細なパターン構造にダメージを与えず乾燥させる技術も有しています。
このほかにもインクジェットなどを使って直接基材(紙やフィルム)に印刷する技術も強みとしています。
SCREENホールディングス(7735)の業績や株価は?
SCREENホールディングスが5月に発表した前期2023年3月の連結決算は、売上高が前期比12%増の4608億円、営業利益が25%増の764億円となり、ともに過去最高となりました。
半導体向け製造装置部門は、中国のローカルメーカーや韓国のサムスン電子、日本メーカー向けの装置の出荷が伸びました。また、大口顧客の半導体の受託製造最大手の台湾TSMC向けも販売が堅調でした。
今期2024年3月期の業績予想は、売上高が前期比7%増の4950億円、営業利益が11%増の850億円を見込んでおり、ともに過去最高を更新する見通しです。
今期は、データを記憶する半導体のメモリーの価格が下落しており、顧客の半導体メーカーの回復の時期を見極める展開を予想しています。SCREENホールディングスは、2023年の世界の半導体製造装置の市場を前年比で20%減と厳しい見通しを示しています。しかし、年後半にかけては需要の回復が見込まれることや、生成AIの普及などで半導体は高性能化、需要拡大が想定されます。こうした中で半導体の回路をさらに細かく作り込む微細化により、洗浄装置などの同社の高い技術による製造装置のニーズが高まると期待されます。
7月21日の終値は14840円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約149万円です。9月30日に1株を2株に分割する株式分割を予定しており、最低投資金額も半額に引き下がることとなり、より投資家層の拡大が期待されます。
株価は、昨年の秋以降、半導体株への期待の広がりで上昇トレンドが続いており、7月4日に16865円の上場来高値を付けました。
7月28日には、4~6月期(第1四半期)の決算発表が予定されています。最近の半導体メーカーなどの株は、足元の半導体市況が冴えないこともあり、決算後に売られるケースも散見されます。同社株に関しても決算後に売りが先行する可能性もありそうです。しかし、半導体業界は来年以降もAIやデータセンター、自動車などあらゆる場面で需要が拡大するとみられており、中長期の上昇トレンドは続くとみて、決算に注目しています。