最初から楽しむのは難しいから仲間の力を借りる
失敗したことを反省することは必要ですが、悔やむというよりは、次に成功するために必要なステップとして、失敗を役立てていこうという姿勢でのぞむとよさそうですね。
松下さん そう思います。自分を信頼できる気持ちを持っていた方が投資もうまくいくのかなと思うので、マインドは大事だと思います。投資は自己責任の世界で、私も自分の選択が、本当に自分の考えで決めたという意識を持てるようになってから、少しずつ成功できるようになったと思います。
それと、決して無理をせず、投資を自分のライフスタイルに合わせていくことも大事ですね。投資を長く続けるには、自分に合うやり方を見つけることだと思います。
コミュニティを運営されていて、やはり一緒に投資する仲間の存在は大きいと思いますか?
松下さん 自分もそうだったのですが、会社員は基本的に忙しいというのと、銘柄を選ぶにしても自分が理解できる分野はどうしても限られます。そんな中で、自分と全然違う業界の人の話を聞くと投資対象が広がりますし、同じ会社を見るときも違う着眼点を持っていて、よりその会社への理解が深まることもあります。
そもそも、投資という今まで経験がないことを始めて、習慣化させるのはたいへんな作業です。私も最初から、「株式投資は推し活と同じで楽しい!」と思えたわけではありませんでした。でもたまたまいっしょに投資する友達ができて、その人といろいろ話しながらやっていたら、いつの間にか力がついてきて、楽しくなってきたという感じでしたね。
どんな習い事も、最初から超楽しいということは少なくて、練習して上達してからその楽しさに気付くものです。その最初のところで環境の力、仲間の力を借りるのは、すごくいい方法だと思っています。
「この会社では働けないな」という銘柄に注目
松下さんにとって、推したくなるのはどういう会社ですか?
松下さん 私の推しポイントは「社長の考えがすごい!」というのと、もう1つは「この会社で私は働けないな」という感覚です。私も会社員だったり、自分で事業を起こしたり、それなりの経験をしてきたのですが、それでも「ここの社員にはかなわないだろうな」と思うような会社もあります。投資のおもしろいところは、自分では働けないような会社でも、資本を投じることで、株を買うことでそのオーナーになれることです。
社長もすごい、社員もすごい会社は、大きな成果を出してくれる会社も多いので、そういう会社を投資する候補にしています。「人」を見て判断している部分は大きいと思います。
社長や社員がどんな人なのか、どうやって調べていますか?
松下さん 会社のホームページやIR情報だけでなく、会社の人が出演するYouTubeやインタビュー記事を見たりしています。「社長にこんなこと言われたら、絶対に社員の人はうれしいだろうな」「こういうことを言える社長は少ないだろうな」といった、IRなどの資料だけでは読み取れない社長の人柄的なところも注目しています。
株価や企業に関する指標は見ますか?
松下さん もちろん時価総額や売上、利益は確認しますが、その中でも特に、どれだけ売上が伸びているかに注目しています。売上が伸びるということは、その会社が価値を提供している範囲が広がっていること、価値が世の中に求められているということなので、そこは嘘をつかないと思います。そして、売上が利益という形できちんと残っているかも重要です。
でも私としては売上などの指標以上に、「この会社が3年後どうなっているか」を考えて判断しています。未来だから想像の域を出ないのですが、「お金を増やす」という着眼点に立てば、これから伸びていく会社を探すのがいちばん効率がいいと思いますし、推しがいもあると思います。
投資は始めてみれば意外とハードルは高くない
この1~2年で日本も物価が上がってきて、いよいよ預金だけで将来に備えるのは難しいのではないかという実感が高まってきました。来年には新しいNISAが始まるなど、投資をめぐる環境も変わりつつあります。これから投資を始めようとする方や、投資しようか迷っている方に対して、アドバイスをいただけますでしょうか。
松下さん 投資が、いろんな人にとってのライフワークになるといいのかなと思っています。投資は何も特別なことではなく、毎日の習慣のひとつになるといいですね。SNSを開くように、証券会社のアプリを開くような感覚です。
大事なことは、まず始めてみることです。投資を習慣化できるように、自分ひとりだと不安なら仲間を誘いながら、自分にとって心地いいやり方を見つけてみることが大事だと思います。やってみると意外にハードルが高くないので、軽い気持ちで始めていただきたいと思います。
個人投資家が個別銘柄を選ぶことは、とても尊いことだと思っています。
松下さん 「投資は未来をより良くすること」だと思います。企業は従業員の生活を支えながら、社会を前に進めてくれる存在だと思っていて、そこにお金を投じるという形で参画できるのは気持ちのいいことで、そこにはお金を増やすこと以外の喜びもあるのかなと思っています。
自分の仕事以外の方法で社会とつながれる手段といえるかもしれません。
松下さん 主婦の方からよく言われます。仕事をしていないと、どうしても社会と断絶していると思われたりするようで、決してそんなことはないのですが、投資を通じて社会に参加できる実感を得られるのは大きいのかもしれないですね。
松下りせさんの著書
恋と推し活とショッピングに学ぶ 知識ゼロからの女子株(ダイヤモンド社)
この本は、女性にとって身近な「恋」や「推し活」、「ショッピング」を例にしながら、楽しく投資を始めて、あなたが自分の可能性に気づき、夢と希望にあふれる人生を送れるようになるための一冊です。(抜粋)