株式アナリストの鈴木一之さんが奥深い株式投資の世界を語る本連載。今回のキーワードは「BCP(事業継続計画)」です。新型コロナウイルスの脅威が続く中で、企業の事業継続を支える銘柄に注目します。

  • 新型コロナウイルスの非常事態で企業はすでにBCPを発動
  • 再調達が利かない経営上のデータは最大の注意を払う経営資源
  • 企業向けクラウドサービスを提供し、BCPを支援する企業群に注目

BCPは存続を維持するために発動される緊急プラン

世界中で新型コロナウイルスの脅威が強まっています。WHO(世界保健機構)は3月11日に「パンデミック」を宣言しましたが、ワクチンも治療薬も存在しない状況でウイルスの勢力は収まらず、世界の死亡者数は20万人に迫りつつあります。

主要国も続々と非常事態宣言を発令しています。イタリアが1月31日に宣言を出したのをはじめ、米国は3月13日、スペインは3月14日に非常事態宣言を出しました。

日本は遅れて4月7日に7都府県に対して緊急事態宣言を発令しました。諸外国とは違ってそこには強い強制力はなく、国民に外出自粛の要請と飲食店・大手百貨店などに営業自粛を呼びかけるのみです。

オフィスワーカーには自宅にとどまって仕事をするようテレワーク(在宅勤務)が奨励されています。あるいは部品の調達が止まった製造現場では、工場がすぐにストップされて生産調整が始まっています。その様子を見ていると、それぞれの企業ですでにBCPが発動されて、有事モードにシフトしている様子がうかがえます。まさに非常事態です。

BCP(Business Continuity Plan)は、「事業継続計画」を指します。企業が自然災害や予期せぬ大事故、テロ、不祥事、取引先の倒産など、災害や事件に巻き込まれた時に、自社の事業活動が継続して行えるように前もって準備した緊急の対応策です。

BCPが発動される状況では、企業の存続が危ぶまれるほどの緊急事態が発生しています。東日本大震災がそうでした。地震だけでなく、地政学的リスクが顕在化して原油の輸入が途絶した場合、あるいは電力が平時の数分の1しか供給されない場合、オフィス、工場、店舗が破壊される恐れがある場合、などがそれに当てはまります。

パンデミックが発生して、社員の大半が出社できないケースもまさに非常事態です。BCPは平時の延長線ではどうにもならないような事態に遭遇した時に、企業が自らの存続を維持するために発動される緊急プランです。

BCPでは「人の再調達」が最も重要

BCPの内容は多岐にわたりますが、核となるポイントは災害リスクの想定と、企業として守るべき経営資源を特定することです。その上で、実際に事業を継続してゆく際に欠かせない個々の対応策が吟味されてゆくことになります。

企業として守るべき経営資源を特定するのは、意外とむずかしいものです。事業規模が大きくなるほど守るべきものが増え、最初の時点でいくつも経営資源をリストアップしてしまうと、その後のBCPの活動範囲が広がり過ぎることになってしまい本末転倒です。

BCPの最終的な目標は、経営資源を災害リスクから守ることではありません。非常事態が発生した場合に、あらかじめ設定されていた復旧時間内に事業活動の再開にこぎつけ、そのために必要なリソースを再び手に入れること(再調達)にあります。

中でも「人の再調達」が最も重要です。基本的に事業の根幹は人であって、従業員さえそろえば何かしらの事業再開に向けた道筋をつけることができます。反対に人がそろわなければ、設備や機材がすべてそろっても業務の再開はできません。非常時に従業員の命を守ることが、企業が果たすべき最も基本的な責任と言えるでしょう。

事業会社のBCPを支援する企業群に注目

「人の再調達」の次に重要なことが、経営指標をはじめとする経営上のデータ、顧客や取引先の情報、製造データ、システムなど、事業活動を成り立たせている様々な経営情報です。こればかりは再調達が利きません。経営上のデータを失ってしまうと事業を再開するのに大きな支障をきたすことになります。

設備や機材、オフィス、工場、倉庫、OA機器、オフィス家具などの固定資産は代替が効きます。あとで他から手に入れることは可能です。しかし経営上のデータは社外からは入手できません。したがって経営上のデータは最大の注意を払う経営資源として、普段から最も高い優先順位を付しておく必要があります。

これらの経営情報は、災害のような外部要因だけではなく、内部の作業ミスや情報漏洩によって失われることも起こり得ます。そうなるとたちまち経営が立ちいかなくなる恐れがあります。バックアップは必ずとっておき、そのための作業手順や仕組みも定期的に見直さなくてはなりません。

日常業務で使用する情報やファイルは、自社だけでなく外部のクラウドサーバーなどを用いる必要があります。数日、数か月単位でさかのぼって復元できるようにしておき(差分保存)、HDDだけでなくCD―Rなどのメディアにも多重保存しておいた方がよいでしょう。

社外のサーバーを併用し、クラウドサーバーを利用するなどの対策も必要となってきます。このような点を念頭に置いて、緊急事態が発生した場合に初動対応のマニュアルや復旧マニュアルなどを策定しておくべきなのです。

備えあれば憂いなし。BCPを策定することによって企業の根幹が支えられます。緊急事態宣言が発動されている今がまさにその時です。クラウドを使った企業向けサービスを提供して、事業会社のBCPを支援する企業群、アセンテック(3565)、テラスカイ(3915)、エイトレッド(3969)、マネーフォワード(3994)、フリー(4478)、インターネットイニシアティブ(3774)、GMOクラウド(3788)に注目しています。

【図表1】インターネットイニシアティブ(3774)月足、2006年~
インターネットイニシアティブチャート

【図表2】GMOクラウド(3788)月足、2006年~
GMOクラウドチャート

【特集】アクティブファンドの挑戦─今こそ、投資の“原点”に立ち返る

メルマガ会員募集中