「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回も「50歳以上の方のためのNISA」をテーマに、投資と社会貢献の両立を目指す「ESG投資」について考えていきます。

  • ESGは環境・社会・ガバナンスの頭文字を合わせた言葉
  • 投資にESGの視点を取り入れて、経済発展と社会の持続可能性の両立を目指す
  • ESGの指数に連動する投資信託や、指数に採用された個別銘柄に投資する
3月10日(日)にセミナーを開催しました。ご参加いただき、ありがとうございました。
セミナー実施報告

皆さん、こんにちは。前回にも申し上げましたが、若年層とは異なり、50歳以上の大人世代は「投資を通じて、社会貢献ができないか」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか? しかし、前回は日本とアメリカ、それぞれのSDGs(持続可能な開発目標)企業の株価を例に挙げ、「SDGs企業に投資をしてパフォーマンスを得るのは難しい」と述べました。

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やはり、投資と社会貢献の両立は難しいのでしょうか?

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老舗の大企業の取り組み

小田急ロマンスカーのチラシ

写真は筆者が撮ったものです。
小田急電鉄の「ロマンスカー」に乗った時に、ドア付近に貼られていました。東京都や神奈川県にお住いの方なら、ご存知だと思いますが、小田急電鉄は東京・新宿を起点に、鉄道やバスなどの運輸事業や百貨店、観光業も展開する企業グループです。

ですので、前回、ご紹介させていただいた「ミドリムシジェット」を飛ばすユーグレナや、代替肉の製造を行うビヨンド・ミートなどとは異なり、小田急電鉄は「SDGsそのものを事業にしている」企業ではありません。
むしろSDGsという言葉が世に出るよりも、ずっと前からロマンスカーは走っています。写真のように「CO2実質ゼロ」とSDGsに貢献しながら、今日も爽やかに走っています。

企業に求められるESG

さて、ここでESGという言葉が出てきました。ESGとは環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。

これまで投資先(例えば株式)を検討する、あるいは投資対象を評価するといえば、株式の場合、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)のほか、筆者がこだわる自己資本比率など、財務に関する数字(定量的な情報)が重んじられてきました。
これまでの定量的な数字も重んじつつ、今後は、さらに非定量的な、つまり数字では表すことができない評価も加えて、投資先を検討したり、投資対象を評価していこう、というのがESG投資です。

ESGも、SDGsと同じく2006年に国際連合が提唱した言葉です。
企業の成長に伴い、経済は発展しています。その一方でCO2などの温室効果ガスによる気候変動問題や環境問題、サプライチェーンにおける労働問題(海外では特に児童労働)などの社会問題、企業の不祥事など企業統治(ガバナンス)の課題が浮上しました。

これらの問題は社会の持続可能性を困難なものにします。そこで、投資にESGの視点を取り入れることにより、経済の発展と社会の持続可能性を両立していこうというのが、ESG投資なのです。

SDGsとESGの違い

SDGsが政府や国際機関に課せられた目標なのに対し、ESGは企業に対する評価の物差しです。では、ESGへの取り組みが高く評価されている企業を探し出すには、どのような方法が考えられるでしょうか?

ESGと分散投資

ESGの取り組みが高く評価されている企業を集め、「指数(インデックス)」としたものがあります。
ところでインデックス(Index)とは、市場全体の動きを数字で示したものです。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といえば、日本株式の代表的なインデックスですね。例えば、「今日の日本株の動きは?」などという問いに対しては、日経平均株価やTOPIXなどの数字を挙げて答えることが多いと思います。

【図表】ESGに関連するインデックス(指数)の例
インデックス ESGとの関係
FTSE Blossom Japan Index 総合型(ESGの3つを網羅)
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 総合型(ESGの3つを網羅)
S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数 ESGのうちE(環境)に特化
MSCI日本株女性活躍指数(WIN) ESGのうちS(社会)に特化

例えば「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」は、企業のESGの取り組みをどのように評価しているのでしょうか? 評価の物差しは以下のとおりです。

MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数 メソドロジーPDF

そしてMSCIが評価の物差しに基づいて指数の対象として採用した企業の一例は以下のとおりです(2024年3月13日時点)。

  • トヨタ自動車
  • ソニーグループ
  • 東京エレクトロン
  • 日立製作所
  • 三井住友フィナンシャルグループ
  • リクルートホールディングス
  • 第一三共
  • 任天堂
  • 伊藤忠商事
  • KDDI

ESGの指数に連動したパフォーマンスを目指すファンドに投資をすれば、分散投資が実現しますね。またESGの指数に採用された個別銘柄に投資をするのも良いでしょう。

ESG投資……まとめに代えて

ところで、ESGですが、割と見慣れた企業名が多いことにお気付きでしょうか? 前回はSDGsそのものをビジネスにしたベンチャー企業を例に挙げました。本稿で挙げたESGへの取り組みが評価されているのは著名な日本企業ばかりです。

ESGという国際的な評価に晒され、国際的な評価をクリアした企業です。投資と社会貢献の両立は、意外と身近なところで結論を得ることができそうです……とはいえ、国連の掲げるESGは、著名な日本企業でないとクリアするのが難しいともいえます。

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