「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は「人口ボーナス」と呼ばれる、人口増加が著しく平均年齢が若い国への投資について考えます。

  • 人口ボーナスは、昭和の高度経済成長のような「高齢社会を想定しない」社会
  • 人口ボーナスの国は内需が旺盛で、実際にGDPの伸び率も高い傾向がある
  • 平均年齢が若い国に投資するなら、その国の代表的な株価指数に連動する商品を買う

待望(?)の定額減税もスタートした夏。政府の思惑と世の中の期待通りに、事は進むのでしょうか?……と答えの分かりきった質問に対する答えはさておき。夏のボーナスよりも、より恩恵を得られる可能性が高いのは、「人口ボーナス」ではないでしょうか?

そもそも日本の経済衰退の理由の一つとして「人口減少」が挙げられます。もっとも、キチンと対策を打てば、人口の増減にかかわらず経済は成長すると思います。しかし、経済衰退の都合の良い言い訳が人口減少なわけです。

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さて、人口減少によって経済が衰退の一途なら、その逆、人口が増加することで経済が成長する国への投資を検討してみては、というご提案です。

高度経済成長の象徴?

私が講師を務めている地方都市の高校では「都心のマンション」というと、即、「タワマンでしょ!」という答えが返ってきます。筆者にとって平成の象徴はタワーマンションであり、昭和の高度経済成長の象徴といえば「団地」です。では、団地の何が「昭和の高度経済成長」の象徴なのでしょうか?

団地では、同じ建物が林立しています。多くが5階建てですが、その多くの建物に「エレベータが付いていません」。これこそが、まさに昭和の高度経済成長の象徴なのです。皆さん、機会があれば、ぜひ、山手線の駅を一つふたつ、訪れてみてください。至るところに「エスカレーターやエレベータが装備されて」います。この違いです。

そうです。昭和の高度経済成長は「高齢社会」を全く想像することすらできなかった時代なのです。だから、昭和の高度経済成長の時代には「老後に備えて社会保障を充実させてほしい」という声も無ければ、「老後に備えて、個人年金保険を検討しなきゃ」という考えすら及ばなかったのです。

ところが、21世紀の日本では中学生や高校生ですら「私たち、どうせ年金はもらえないんでしょ」と言っています。

この「昭和の高度経済成長」こそが、まさに人口ボーナスの社会なのです。

支えるべき相手もいなければ、そもそも老後なんて考えられない

人口ボーナスの国とは、支えるべき相手(=高齢者)もいなければ、そもそも老後(=例えば、自身の年金)なんて考えられない国です。こういう国では「内需が旺盛」と考えても良いのでしょうか?

支えるべき相手がいないということは、公的な年金などの社会保険の仕組みがあったとしても、その保険料は低廉な額ですむと思われます。ということは、収入と可処分所得(=手取り額)の差は小さいと考えられます。また、そもそも老後なんて考えられないということですと、いわゆる老後の蓄えもありません。その結果、「内需が旺盛」ということになりそうです。

インドの鉄道
人口が世界一で現在も増え続けており、人口構成も若いインドは「人口ボーナス」の筆頭といえる
Deep Rajendran Nair / Shutterstock.com

内需で代表的なのは個人消費

内需の中で代表的なのは、やはり個人消費でしょう。日本の場合、GDPの6割を個人消費が占めると言われています。また、メキシコ・インド・インドネシアなどの新興国の場合、GDPのおよそ5割を個人消費が占めると言われています。

表をご覧ください。平均年齢が若い国ほど、名目GDPの伸びが著しいことが分かります。老後とは無縁な人口ボーナスの国ほど、内需が旺盛で、内需が国の成長を支えています。

【図表1】各国の平均年齢と名目GDP
平均年齢 名目GDP 名目GDP成長率
メキシコ 32.5歳(2022年) 2.02兆ドル 12.8%
インド 31.1歳(2021年) 3.93兆ドル 10.2%
インドネシア 32.6歳(2022年) 1.48兆ドル 7.6%
中国 38.8歳(2021年) 18.5兆ドル 4.9%
日本 48.2歳(2022年) 4.11兆ドル -2.4%

※名目GDPは米ドル建て、2024年の予測値
出所:国立社会保障・人口問題研究所、World Economic Outlook database April 2024ほか各種データより作成

国に投資をするという考え方

平均年齢が若い国に投資をするには、どうしたら良いでしょうか?

GDPの教科書的な意味はともかく、GDPは、その国の企業全体の企業価値の合計という考え方も成り立ちます。では、国の企業全体に投資をするには、どうしたら良いでしょうか? それは、各国の代表的な株価指数に投資をするという方法です。つまり、その国のインデックスファンドなどに投資をするのです。

【図表2】各国の代表的な株価指数
代表的な株価指数
メキシコ ボルサ指数
インド SENSEX指数
インドネシア ジャカルタ総合指数
中国 上海総合指数
日本 東証株価指数(TOPIX)

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