テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第117回は、ラジオドラマの脚本などを手掛ける、脚本家の足立聡さん。

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37歳のランニングの誓い

足立聡さんの写真足立聡
脚本家
日本放送作家協会会員

39歳で作家でやっていくために仕事を辞めたんです。それと同時に年齢をサバよみすることにしたんです。色々考えて37歳でいこうと思ってます。これからは書く仕事1本でやらなければいけない。となるとどんな仕事もしなければいけない。僕、新人なんでどんな仕事もやります! このテンションでいかないといけないんです。となると年齢がどうしても邪魔になってくる。そんなの偏見だよ? そんな事はわかってるんです。でも若いに越した事はないと思うんです。

冒頭に39歳と書きましたが、実はもうちょっといってます。本当は32歳とか33歳あたりにしたいのですが、鏡に映る自分の顔をみて、37歳が限界かなと。これ以上サバをよむことは嘘になってしまう。なんか日本語がおかしいですが……。嘘は最小限度にとどめておきたい。
今のところ私が50歳になるまでは、37歳でいこうと思ってます。もし万が一、私を見かけて、37歳は無理があるなって思ったら、こそっと私に「無理あるよ」って言って下さい。その時は考えます。

仕事を辞めて、狂ったようにランニングをしています。私の住んでいる町はお金持ちが多いんですね。だからランニングをする格好もみんなおしゃれでお金がかかっている。そんな中、私は上はTシャツ、下はヒートテックにステテコを重ねてという訳のわからない恰好で走ってます。朝晩2回走るんです。家にいるのが怖いんです。でも走っている間は忘れられる。だから狂ったように走るんです。まあ暇だからというのもあるんですが。

走っている時、気づいた事があります。ぽっちゃりボディーが売りな私なので、走るスピードは遅いんです。凄く遅い。成人男性が早足で歩くと抜かれるくらい遅いです。でも女性が前にいる時は、スピードを上げて颯爽と追い抜くんです。私、ずっとこのスピードで走ってますみたいな感じで。そうなんです……無意識に、恰好つけちゃってる。仕事辞めたくせに。サバ読んでるくせに。無意識って怖いですね。

ランニングしているイメージみんなオシャレな格好でランニングしてますが、私は訳のわからない格好で走っています

作家になる決意

一般社会ではこの年で仕事を辞めて作家になるって考えられない事かもしれません。でもなんとなく……とてつもなくなんとなくですが、この世界は私を歓迎してくれているような気がしています。

この間、創作ラジオドラマ大賞の受賞式にお邪魔しまして。それが凄く楽しかった。みなさん色々、日常で辛い事や大変な事がいっぱいあるのに(私の勝手な想像ですが)、最終選考作品や受賞作品について、色々語っている。あーしたほうが良かった、あのシーンは良かった……。みなさん、楽しそうに話されている。ここにいる全員、表現が好きで、ドラマが好きで、シナリオが好きでとか考えていると、とても楽しくなりまして。だから授賞式が終わるのが寂しくて「みんなで2次会に行こうや!」って言いそうになってました。1つ心残りだったのは、先輩方に御挨拶できなかった事です。足がすくんでしまって。挨拶したかった……足立聡、37歳、仕事辞めて作家1本でやろうと思ってますって。

最後に私は長年、豊洲市場の調味料の専門店で店長をやっていたのですが、辞める日、八千代という揚げ物屋さんに最後の挨拶に行ったんです。そしたらご飯食べていけ!って言われて、とんかつとエビフライとアジフライを食べさせてもらって。帰りにチャーシューのお土産にもらって。その後、大和寿司という店に挨拶に行ったら、寿司食っていけ!って言われて。高級ネタいっぱい食べさせてもらって。最後はアワビを何回も食べさせてもらって。みんな何にも言わないんです。ただ食っていけ!って。その優しさがカッコいいなって。なんかドラマだなって。今度はお金払って行きたいと思います。今はお金が厳しいですが……もちろん、挨拶もします。足立聡、37歳、作家1本でなんとかやっていけてますって。

次回は伊藤正浩さんへ、バトンタッチ!

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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